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中国ー時代遅れの「三戦」とは

「大紀元』(3月27日付け)は、次のように伝えている。

④ 「米国防総省内のシンクタンク『総合評価局』(Office of Net Assessment)がこのほど、報告書の一部を明らかにした。それによると、中国が米国に対し『政治戦争』を仕掛けていることを指摘。米軍をアジア地域から追い出し、沿岸海域を中国の支配下におさめようとする中国の戦略の一部だとしている。566頁におよぶこの報告書は、英ケンブリッジ大教授など中国問題専門家8人がまとめたもの。報告書は中国が展開する『政治戦争』3つの形態、心理戦・世論戦・法律戦という『三戦』の内容を詳しく説明した」。

この「三戦」については、私のブログの2月3日で詳細に紹介している。次のような内容である。

中国は、「三戦」と言われる宣伝戦を周到に準備している。2003年、中国人民解放軍政治工作条例に初めて登場した言葉だ。「輿論戦」、「心理戦」、「法律戦」である。このすべての宣伝戦が初めて大がかりに日本へ向けられている。総力を挙げて、「日本侵略」に立ち上がったことを認識する必要がある。「日中平和論」などは、とうの昔に消し飛んだ状態になった。

「輿論戦」とは、中国の軍事行動に対する大衆および国際社会の支持を築くとともに、敵が中国の利益に反すると見られる政策を追求しないよう、国内と国際世論に影響を及ぼす。

「心理戦」とは、敵の軍人およびそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理作戦を通じて、敵が戦闘・作戦を遂行する意思を低下させる。

「法律戦」とは、国際法および国内法を利用して、国際的支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する予想される反発に対処する。

「輿論戦」では、「日本軍国主義復活」で大々的なキャンペーンが行われている。世界40カ国以上の在外公館に「日本批判」論文を各国メディアに投稿させている。「心理戦」では、在日中国人学者が中国へ帰国の際、「スパイ」嫌疑で拘留された。すでに解放されたが、日本政府への接近予防措置だ。「法律戦」では、尖閣諸島の自国領宣言と、今回の「防空識別圏」設定である。これら三つの動きを見ると、中国は明らかに「準戦時体制」に入っている。

以上が、私のブログからの抄録である。世界中に「日本悪者論」を吹聴して、来るべき尖閣諸島への「奇襲攻撃」の正当化を狙った戦略の一環と見るべきである。

「輿論戦」の最新版では3月28日、ドイツでの習近平主席による次の演説がある。「中国はアジア太平洋地域において『権利拡大』を求めることは決してないと述べ、同国の軍備増強を擁護した。同主席は各国に対し中国との『相互理解』を呼び掛け、中国政府は和平の外交政策を追求していると語り、同国が南シナ海の侵略者になることはないと指摘した」(『ブルームバーグ』3月29日付け)。誰も、こんな話を額面通りに受け取るはずがない。それほど、偽善に満ちた内容である。言行の不一致が明らかであるからだ。

習近平氏は、口当たりの良い話をしている。中国の本心は、ロシアのクリミア半島編入を尖閣諸島奪取のモデルと見ていたであろう。私は3月28日のブログで、ロシアが経済制裁で大きな打撃を受けている事実を指摘した。偶然ながらこの日、ロシアのプーチン大統領は米国のオバマ大統領に電話する羽目に陥っている。西側諸国は、ロシアの暴挙を黙認せず、経済制裁という形でロシア経済を締め上げている効果が出てきたのだ。

前記のブログ(3月28日)で、私は中国が尖閣諸島奪取を謀れば、中国はロシア同様の経済制裁を受けて、より大きい打撃を被るはずだと指摘した。中国は、食糧・資源の過半を外国に依存している。経済制裁されたら国民の政治的不満に火をつけて、共産党政権は一挙に危機に立つはずだとも指摘してある。中国は、これだけのリスクを抱えて尖閣諸島へ奇襲攻撃をかけるとしたら、世界の「笑い者」にされるに違いない。領土は、武力で強奪できる時代ではなくなっている。国際司法裁判所の存在意義を冷静に考えるべきであろう。国連常任理事国の中国が、それを理解していないとしたら「噴飯」ものである。

⑤ 「中国が『三戦』を唱えるのは、情報が発達した現代では核兵器は有効ではない上、政治目標の達成に従来の戦争では多くのトラブルを引き起こすという思索に基づくと報告書は分析。中国の政治目標は、資源・影響力・領土を確保し、国家威信を高めることにあるという。中国が『三戦』を展開するのは、アジアにおける米国の軍事的存在をけん制し、駐留米軍の合法性に疑問の目を向けさせるためである。同時に、中国は『三戦』を通して、軍拡の実現やその影響力の向上、中東からの原油輸送航路の確保などを目論んでいるという」。

中国の政治目標は、「資源・影響力・領土を確保し、国家威信を高めることにある」と指摘している。要するに、軍事力を背景にした交渉力の強化である。これは、「武断外交」と呼ばれるものだ。これを側面から補強する役割として、「三戦」を位置づけている。具体的には、「輿論戦」、「心理戦」、「法律戦」である。はっきり言えば、「孫子の兵法」の現代版である。この「手練手管」が、国家威信を高める手段になる。そう真面目に考えているところが、私には理解不能である。

現代の国家威信とは、国民生活が充実し良好な治安が維持され、ソフトパワーを持っていることでないのか。中国は、秦の始皇帝と同じレベルでの国家を想定しているはずだ。支配階級だけが特権を享受する。そのような恣意的に振る舞える社会が、理想的な国家像として描いているに違いない。だから、言論弾圧を平気で行う。政府に異議申し立てする国民はすべて、国家反逆罪に問われて獄窓につないで恥じることもない。こうした国家が威信を持てると考えているならば、錯覚と言うほかない。中国に未来がない理由は、ここにすべてあるのだ。

中国の本質的な矛盾は現在、採用している政治制度にある。とうてい、普遍的な価値観に立脚したものとは言い難い。この中国独特の専制政治体系は、中国の国家行動を規定しているから周辺国はもとより国際的にも摩擦をもたらしている。武力に基づく外交である「武断外交」を国家存立の基礎に据えている。それ故に、「三戦」という始皇帝が採用してもおかしくない外交戦術を編み出して得意なのだろう。時代遅れと言って間違いない。紀元前200年ころに登場した「合従連衡」や「孫子の兵法」が、現在も引き続き中国政治の基本に据えられている。「進化」していないのだ。中国政治は、現代の化石と称せられる「シーラカンス」そのもの。現代に生き残こっている希有の例であろう。

勝又壽良(2014年4月9日)
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