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中国、内需の停滞深刻「輸入減少」「百貨店閉店」の難問

勝又壽良 2014-04-24 03:45:48

未だに虚勢を張る 相次ぐ百貨店閉店

中国経済は、深刻の度合いを深めている。今年の成長率目標は、「7.5%前後」に設定した。中国政府は、最初から成長率の目標達成に自信はなかったのだ。それは、7.5%「前後」という言葉に表れている。現に、1~3月期の実質GDPは前年比7.4%増に止まった。中国経済が、ここまで追い込まれてきたのは、「固定資産投資依存」経済であったからだ。促成栽培型の中国経済にとって、固定資産投資に依存した経済運営ほど楽なものはなかった。いわゆる「箱もの投資」さえやっていれば、簡単に目標成長率を達成できた。

こうした安易な経済運営のツケが、重度の大気汚染・土壌汚染・水質汚染を生み出した。地方政府役人の賄賂収入増加とも絡んで、「固定資産投資依存」経済は止まるところを知らぬ勢いで進んできた。日本の平成バブルの規模を1.7倍も上回る空前の規模に達している。この点も、私のブログで指摘してきた。中国経済の今後について、楽観的に見られる要因が何一つ存在しないのだ。

「固定資産投資依存」経済は、中国の経済成長率の前倒しでもあった。過去の高い成長率は、将来の成長率を先食いしたにも等しいのだ。非効率な固定資産投資を続けてきた結果、過剰債務に陥っている。これまでの投資効率が高ければ、投資収益も高まるのが普通だ。負債の返済が円滑に進んできたに違いない。それが、非効率投資であるから債務は累積した。ついに、過剰債務の山を築いて対GDP比で200%を優に上回るところまで追い込まれた。これからは、過剰債務の返済を迫られる。「固定資産投資依存」経済は、破綻するのが当然である。

今後、その反作用が出てくる。「7.5%前後」という意味合いには、こうした不安定性が込められている。もっとも、「大言壮語」(ほら吹き)の国だから、簡単に弱音を吐かず「面子」をたてながら、その場を繕っていく。それが透けて見えるだけに、哀れさを感じるのだ。

未だに虚勢を張る
『ブルームバーグ』(4月11日付け)には、中国政府の強気姿勢が現れており興味深い。

① 「中国の朱光耀財政次官は、中国経済が今後10年間、年間最大8%の成長が可能であり、政府は一時的な成長鈍化に対応して『大規模な』刺激策に乗り出すことはないとの見解を示した。ワシントンでの国際通貨基金(IMF)会合に参加している朱次官は、記者団に対し、『われわれには向こう10年間、7~8%成長を続ける潜在的可能性があり、それは完全に手の届く範囲にある』と発言。『われわれは中期と長期のトレンドに重点を置いており、短期のボラティリティ(変動性)は重視していない』と説明した」。

ここでは、負け惜しみを言っているに過ぎない。中国経済は、今後10年間にわたり最大8%成長が可能だけに、目先の成長率低下に一喜一憂することなく、中長期的な政策を遂行する。こう胸を張っているが、腹の内は違っている。今後の成長率低下を事前に言いつくろっているだけである。こうしたあたりが、中国政府の宣伝のうまさである。しかし、私はこんなまやかしの宣伝に乗るわけにいかない。中国経済の実態が、恒常的に悪化していく。それを一貫して捉えているからである。

中国の3月の輸出入はいずれも減少した。輸出は事前予想とは逆に前年同月比6.6%もの減少になった。昨年前半期は、不正輸出が多数含まれていたからだ。少なくも今年6月ごろまでは、輸出が前年比マイナスに落ち込むと見られている。中国は輸出数字の水増しを認めながらも、GDP修正には消極的である。不正な輸出データに基づくGDP水増しが行われていたわけで、中国の信用は丸つぶれになった。

3月の輸入は前年同月比11.3%の減少である。これは、中国製造業の失速で原材料・部品の輸入が減少したためという見方が強く出ている。確かにそれは否定できない。製造業不振が内需全般を冷やしているからだ。企業間取引の活発度合いを見るのに適しているのが、「生産者物価指数」(PPI)である。2012年2月から前年同月比マイナス状態が続くほど不振である。3月は前年比2.3%のマイナスだ。1~3月では前年比2.0%のマイナス。生産者段階の取引状況がいかに不活発であるかを証明している。

中国経済は、過剰投資=過剰生産=過剰輸出という連環で繋がっている。過剰生産の部分は過剰輸出を逃げ場にしてきた。それも人件費と元相場の上昇によって、一転して苦境に立っている。低付加価値製品の輸出では、競争力を失って当然である。

『ブルームバーグ』(4月9日付け)は、世界最大規模の卸売市場である浙江省義烏市の中小企業の現状を紹介し、中国の輸出低迷がいかに酷いかをルポしている。

② 「義烏市のある会社では、以前は約160万ドル(約1億6000万円)ほどあった懐中電灯の売り上げも、今年はゼロに近い。現在、同市にある多くの中小企業が同じような苦境に立たされている。サッカー場650個分の敷地面積を有する巨大な卸売市場『義烏国際商貿城』は、中国東部最大の物流基地とも言われ、さまざまな廉価製品が売られている。しかし、店をのぞくと、ゲームをしたり、新聞を読んだり、机に伏せて寝たりしている店主たちが目立つ。この光景は、コストの上昇により競争力を失った現在、買い手の減少が深刻化している現状を反映している」。

かつて、日本の「100円ショップ」の雑貨品仕入れの多くは、この「義烏国際商貿城」で調達してきた。中国輸出の前進基地として大いに賑わった場所である。それがなんと、店主が「ゲームをしたり、新聞を読んだり、机に伏せて寝たりしている姿が目立つ」という退廃的なムードを醸し出しているのだ。中国経済の凋落をこれほど鮮明に写しだしているシーンもないであろう。改めて、「奢れる者久しからず」とつぶやきたい光景である。

③ 「中国経済の減速が今年の7.5%前後という成長目標をおびやかしている。2月の輸出は前年同月比18.1%減で、世界金融危機以来の下げ幅となった。要因としては、賃金レベルが10年で2倍に上昇したこと。2005年7月以降、人民元が米ドルに対し33%上昇したこと。労働人口が202年から減少し始めたことなどが挙げられる」。

火が消えた「義烏国際商貿城」と言ってもよい。こうした姿は、事前に十分予測できたはずである。私は、中国が「大言壮語」する姿を心底、苦々しく眺めてきた一人である。かりそめにも、欧米経済史をひもといた経験があればお分かりの通り、中国はまったくの異質な構造である。高度の付加価値製品を生産できる社会体制とほど遠いのだ。それが、身の程知らずにも法螺(ほら)を吹き続けてきた。違和感を覚えざるを得なかった理由である。

中国の社会構造は、失礼ながら低付加価値製品しか生産できない限界を背負っている。その認識が欠如しているから、世界覇権などという途方もない野望を持つのだ。これが、中国をつまずかせ、国民を不幸に陥れる原因になる。自分の国の裸の力に気づくべきである。先ずは、中国の民度向上に力を注ぐときである。外延的な発展は自殺行為である。

低付加価値製品しか作れない社会構造の中国が、10年で2倍に上昇の賃金レベルになれば、国際競争力を失って当然である。しかも、人民元相場は2005年7月以降、33%の上昇である。ASEAN(東南アジア諸国連合)に太刀打ちできるわけがない。これまでの膨大な貿易黒字を生み出した原動力は、外資系企業の力に負っている。その認識が足りず、あたかも中国企業が担っていると錯覚してきた。元高相場が、中国の地場企業を苦況に追い込んでいるのは事実である。

従来の中国は、ASEANをきわめて甘く見てきた。私はそれを逐一否定してきた。中国だって最初はよちよち歩きである。それを日本企業が手を取り、足を取るようにして教えてきたのだ。日本企業には、そうしたノウハウが豊富にある。日本企業がASEANへ行っても、中国と同じ過程を踏めば熟達させられる。私はこう言い切ってきた。現実は、ASEANが強力な生産相手国として登場している。中国の慢心が招いた事態である。中国とは、こういうふうにすぐに有頂天になって天狗になる。その天狗の鼻をへし折るように、北京市内の百貨店が相次いで閉店している

相次ぐ百貨店閉店
『レコ-ドチャイナ』(4月13日付け)は、次のように報じた。

④ 「太平洋百貨、三利百貨、貴友方庄店の閉店に続き、北京でもう一つのデパートが閉店となる。イトーヨーカドー望京店が4月28日に営業を停止することになった。イトーヨーカドーの関係者は4月10日、『その他の店舗と比べ、望京店の経営は振るわなかった。経営不振の原因には、ECの影響、テナント料、人件費高騰の他に、望京店の位置するビジネス圏の熾烈な競争もある』と語った。北京昭邑小売業管理コンサルティング有限公司のチーフコンサルタントの劉暉(リウ・フイ)氏は、『望京店の閉店の根本的な原因は、北京で商業プロジェクトが余剰になっていることだ。景気が良かった頃は経営が順調だと思われたが、大環境に変化が生じると問題が表面化した』と分析した」。

日本最大の流通グループを率いるイトーヨーカー堂が、北京望京店を閉店するという。すでに北京市内では有力3店が閉店。個人消費の低迷が原因である。中国経済の底冷えを如実に示しているのだ。中国経済は、「内需主導型」へ移行する。そういうアドバルーンとは裏腹に、中国経済の底割れを示唆するような不気味さを感じる。何と言っても、北京市内でこういう事態が発生している点が気がかりである。ここでも、「テナント料、人件費高騰」がコスト高を招いている。

製造業も流通業も不振の理由が人件費高騰である。中国国内の所得格差を縮小するべく、中国政府は強引な人件費引き上げを図った。私は生産性向上を伴わない賃上げが、中国経済の命取りになると警告してきた。結局、コストアップを招いただけで、個人消費の起爆剤にはならなかったのだ。こういうことを書き連ねると、私が自慢話をしたがっていると誤解されるがそうではない。経済は、セオリー通りにしか動かないのである。

私は、強引な賃上げのもたらす弊害を事前に指摘して、そうした結果になっただけである。中国政府は、富裕層の反対で所得再分配政策が行えなかった。そこで、賃上げへ逃げたことが、中国経済を疲弊させたに過ぎない。経済の原則を曲げてまでの「人気取り政策」は、こうした結末を迎える好例がここにあるのだ

中国は、ひとたび経済停滞に落ち込めば、そこからの脱出はかなり困難になる。これは、私の見る中国経済の一貫した論理である。中国が「イノヴェーション能力」に著しくかけているからだ。先に、「中国の社会構造は、低付加価値製品しか生産できない限界を背負っている」と指摘した背景はこれである。

中国4000年の歴史を持ちながら、農業社会から脱出できずに現在にいたっている。それが、何よりの証拠である。専制政治体制から脱出できずに人権弾圧を許しているのも、有力な証拠に違いない。何ごとによらず、「大言壮語」する。世界を知らない独善主義の表れである。どう見ても先進国からは「周回遅れ」の社会である。社会改革なしに、中国が安定的な発展コースを歩めるはずがないのだ。これが社会学の結論である。米国社会学者タルコット・パーソンズの社会発展図式に従えば、中国は最も遅れた社会構造模式に該当する。これも私のブログでは過去、何回か取り上げてきた。ブログ左下の検索欄で見ていただきたい。
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