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中国、全土の19%が重金属汚染「食糧危機」も視野に

勝又壽良 2014-04-30 04:00:08

繰り返す環境崩壊の愚 本格的な食糧輸入国へ

中国で、2006年から始めていた土壌汚染調査が発表された。これまで政府の「機密扱い」であったもの。1978年12月からの「改革・解放政策」は、ひたすら高い経済成長率のみを追求する歪んだものだった。公務員の業績評価基準が、経済成長率だけを反映した結果である。およそ、国家運営として信じがたい話である。その結末が、中国全土の重度汚染を生んだ。中国政府の責任は免れない。

ここまで深刻な環境崩壊をもたらした最大の要因は、過去の中国がきわめて貧しい生活を送ってきたことだ。「カネ」に対する異常に強い執着は、環境を破壊してでも高い経済成長を追求する「亡者」を生んできた。これが、国家レベルで進行したのが中国である。よく、17~18世紀頃の中国は世界最大の富を蓄えていた、とされる。もし、それが真実とすれば、これほどまでに金銭に執着し、賄賂が日常的に行われる社会を構成するわけがない。中国が物的に豊かな時代を経験していたならば、市民社会を形成して民主主義政治に移行していたに違いない。貧しいが故に、富が一部の特権階級の手に握られ、大衆は貧しい生活を送っていたはずだ。

大気や水に含まれる重金属粒子は最終的に土地に浸透する。その後に、農産物に取り込まれて食品に混入し誰もが影響を受ける。こうして中国の土壌汚染は、最終局面に到達している。人命を脅かす存在になっており、今後の潜在成長率低下のなかで厄介な荷物になってきた。この解決には、ぜひとも日本技術が欠かせない。最近、中国政府が非公式ルートを使って、「ニーハオ」と微笑を浮かべて対日接近してきた。その背景には、のっぴきならぬ環境崩壊が存在する。

ようやく、中国政府が環境崩壊の実態を認めて、種々の対策を打ち始めたが、「ツー・レート」である。莫大な環境保全費を投入しても、「実勢悪」に押されてしまっている。元通りの環境への復帰は不可能なのだ。取り返しのつかないことをやってしまった。中国は、歴史的に環境問題に対して鈍感である。黄河中流部の黄土高原は、荒涼とした風景であり植生とは無縁な地域になっている。だが、環境考古学の手法を用いて調査すると、この地域一帯は、うっそうとした緑したたる地域であった。それが乱開発によって現在の姿に変わったのだ。

繰り返す環境崩壊の愚
中国は歴史に学ばない国である。私はこれを繰り返し指摘してきた。日本に対して、「歴史を鑑にせよ」と訓辞を垂れている。日本は敗戦によって「平和主義」に転換している。中国は権力掌握のために手段を選ばない「武断外交」である。高速成長は、軍事力強化の目的であって、国民を幸せにする目的でなかった。だから、環境崩壊させてまで経済成長を追い求めるという愚行を演じたのだ。黄土高原破壊と同じことが、現代でも繰り返えされている。歴史を鑑にしない国。それが、まさに中国である。

米国経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月19日付け)は、次のように伝えている。

① 「中国の土壌汚染の範囲は長らく国家秘密として守られてきた。最近明らかになった政府報告書は、同国の農地の汚染や食糧供給の実現性をめぐる根深い警戒感を裏付けるものとなった。報告書は国土の面積240万平方マイル(約720万平方キロ)を対象に7年にわたる調査に基づき作成された。同報告書では国の土壌の約16%、耕地の19%が何らかの形で汚染されていることが明らかになった。公害の圧倒的大半は重金属など無機物によるものだったという。中国の総土地面積は370万平方マイル。中国の土壌で最も多く発見された公害物質は重金属のカドミウム、ニッケル、ヒ素だったと報告書は述べた。慢性的健康問題の原因として知られるカドミウム、ヒ素は鉱業の副産物である。公害は特に東部の揚江デルタ、南部の珠江デルタ、東北部の旧工業地帯で特に深刻だと報告書は述べた」。

土壌汚染調査をしながら、国家機密として発表しなかった理由は何か。それは、不動産会社への土地売却で「キズ物」であることを隠すためであったに違いない。不動産を高値で売却するには、汚染されていないことが条件である。重金属汚染は、深刻な後遺症をもたらす。それだけに、隠しておくのがベストの選択であったのだ。ところが、現在はこのタブーを押しのけて公表した理由は、もはや土地を高値で売る機会が減ってきたこと。民衆が強く公表を迫ってきたからであろう。中国政府は、漢族の要求には酷い弾圧を加えず、温和な態度で接するパターンが増えている。一方、少数民族には苛烈な弾圧を加えているのだ。国民への巧妙な「分断政策」が行われているのは、強硬一本槍政策の限界を示している。

「国土の約16%、耕地の19%が何らかの形で汚染されている」という。中国は、口を開けば「偉大な民族」と言っている。その条件の一つは広大な国土である。だが、自慢の国土も16%は汚染されている。黄土高原のように「丸裸」にされている土地もあるほどだ。自然の恵みに感謝する。そういうデリケートな民族ではないとお見受けする。いたって「粗野」な振る舞いであり、母なる大地を傷つけている。いずれその咎めを受けて、自然のしっぺ返しを被るのはやむを得ない。中国は、自然を保全する意識がほとんどゼロに近い民族である。自然条件の制約が今後、中国経済の発展を追い込む局面になった。

② 「汚染は農地が極めて限られる中国では特に懸念される問題だ。最新の国土調査によると、中国の2012年末時点の耕地は3億3400万エーカーで、これは政府が国内に食糧を供給するために必要な農地の量を定めた「レッドライン」を約3700万エーカー上回っているだけだ。耕地の824万エーカー前後が農業に適していない、と中国の国土資源省は昨年12月にすでに明らかにしている。環境専門家は、残りの大半の土地も地質は数十年に及ぶ大量の肥料、殺虫剤の使用によって劣化し、低品質になっていると述べた」。

中国の食糧供給に必要最低限の耕地は、3億7100万エーカーである。2012年末の耕地は、この最低限レベルを3700万エーカー上回っている。だが、上回っているとは言え、824万エーカー前後は農業不適地となっているほか、残りの大半も劣化しているという。このように子細に見ると、現在の中国の耕地面積は必要最低限ギリギリの水準にあることが分かる。もはや、中国政府がゆとりを持って国民を養えない。そこまで追い込まれているのだ。事態は深刻である。

③ 「土壌汚染の広がりを受けて、中国は食糧輸入を増やし始める公算が大きい。米農務省経済調査サービス(ERS)のエコノミスト、フレッド・ゲール氏は、『中国は長期的にはその天然資源への圧力を和らげ、より多くの食糧を輸入する必要がある』とし、『農業は産業公害による影響を受けるほか、それ自体も多くの公害を生み出している』と述べ、中国の食肉需要の増加による廃棄物や生態上の打撃を挙げた」。

本格的な食糧輸入国へ
中国は、すでに食糧の輸入なしではやって行けない状態である。そこへ土壌汚染の進行が重なって、本格的な食糧輸入国へ「転落」する。転落と言う言葉を括弧で囲んだのは、中国が尖閣諸島へ軍事戦略を発動し「奇襲攻撃」をかけた場合、先進国から経済制裁を受けること必至であるからだ。とりわけ、米国は小麦、大豆、トウモロコシなどの輸出規制をかける。仮に、中国が前もって前記穀物の輸入急増に踏み切れば、国際穀物市況が暴騰する。すぐに、中国の「侵略意図」が把握されて、奇襲攻撃は不発に終わって警戒観だけが残る。中国は世界経済の孤児になるのだ。土壌汚染は、意外なところで中国の「武断外交」にブレーキをかける役割をするに違いない。周辺国には、「天佑」とでも呼ぶべき現象かも知れない。

④ 「土壌浄化は、土地の純化、再活性化の方法の一つだが、数十年を要する可能性もあり、技術力も要求される。重金属は条件によって異なる反応を示すため、公害の原因を突き止めることは難しく、これらを土壌から吸い出す取り組みには数年もの土地の休閑を要する可能性もある。中国は最新の5カ年計画で土壌汚染の浄化、防止に300億元(約4900億円)の予算を充てたが、コストはこれをはるかに上回る公算が大きいと専門家は述べている」。

土地の浄化は、数十年単位で取り組まなければならない事業である。私はこれまで、環境破壊は短期で回復できない旨を再三再四、言い続けてきた。中国では、環境破壊を通り越して、環境崩壊になっている。だから、「数十年」という超長期の時間が必要である。環境修復費用は、決して安価なものではない。中国経済がこれから下り坂になる局面で、膨大な環境修復費用がかさむのである。「泣き面に蜂」なのだ。今さら繰り言になるが、「バランストグロス」(均衡成長)概念を持っていたならば、ここまで追い込まれずにすんだであろう。「経済成長と環境保全」。この二つの均衡を重視する「文明」は、そもそも中国に存在するはずもなかった。人権すら無視している国が、環境破壊は当然の成り行きである。

中国が、「仮想敵」日本にたいしてにわかに、「ニーハオ」と裏木戸から声をかけてきた。4月28日のブログで詳細に取り上げている。その狙いは、日本なしではやって行けない厳しい現実があるからだ。「憎い日本」を一時、棚上げしてもここは「微笑」を浮かべなければならない。そう観念して接近しているに違いない。腹の底から「ニーハオ」と言っているわけでないのだ。あくまでも、日本の技術を安く利用することにある。それには、日中関係を雪解け状態にしなければ、日本企業が乗ってこない。そのような政治的判断を固めたとしても不思議はない。

以上の解説は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月19日付け)にたいして行った。これより厳しい土壌汚染を伝える記事も存在する。これを読むと、中国の将来は「真っ暗」というほど絶望的な気持ちになる。

『中国財経報=中国新聞社』(2013年6月24日付け)は、次のように伝えている。

⑤ 「経済成長を主軸とする成長戦略を受けて、中国の多くの地域では工業排水を直接農地灌漑(かんがい)に使用しているほか、企業の中にはスラグを農地に廃棄し、土壌が重金属で汚染される問題が起きている。中国科学院応用生態研究所の資料によると、現在、中国でカドミウムやヒ素、クロム、鉛などの重金属で汚染された耕地は全体の約5分の1を占める約2000万ヘクタールに上り、重金属で汚染され、または減産した食糧は100億キロに及ぶ。このうち鉱業汚染は約200万ヘクタール、石油汚染は約500万ヘクタール、固形廃棄物汚染は約5万ヘクタール、工業三廃(工業生産による排水、排ガス、固形廃棄物)汚染は約1000万ヘクタールで、灌漑に汚水が使用されたのは約330万ヘクタールだった」。

中国の無秩序な経済成長政策が、国土の汚染をもたらした「犯人」である。よくぞここまで、無神経に経済成長率のみを追求してきたもの、と驚かせられる。過去の「高速成長」は、環境崩壊という犠牲を伴った結果である。決して、他国をうらやましがらせる内容ではないのだ。もし中国が民主主義政治であったならば、これほど環境崩壊が進まず改善されたに違いない。国民が、選挙でその意思表示をするからだ。専制主義政治は、中国の歴史においても挽回不可能なダメージを与えている。

重金属で汚染された耕地は、耕地の約5分の1を占める約2000万ヘクタールである。要約すると次の通りである。

鉱業汚染は約200万ヘクタール
石油汚染は約500万ヘクタール
固形廃棄物汚染は約5万ヘクタール
工業三廃(工業生産による排水、排ガス、固形廃棄物)汚染は約1000万ヘクタール
灌漑に汚水が使用されたのは約330万ヘクタール

工業三廃汚染が、1000万ヘクタールと重金属汚染の半分を占めている。政府も企業も環境保全意識ゼロがもたらした悲劇である。黄土高原を裸の大地にしてしまった「漢族」の前歴がある。この民族に明日があると思うのは、余りにも楽観的すぎる。専制主義政治の運命は、環境崩壊によってその終末を決定づけられたと見るのだ。

⑥ 「中国土壌学会副理事長を兼任する中国農業科学院の張維理教授は、『重金属汚染だけでなく、農薬や化学肥料による汚染も深刻だ。中国の農薬使用量は(年間)130万トンで、世界平均の2.5倍。だが実際に効果があるのは30%未満で、残りの70%以上が環境汚染の原因になっている』と指摘する。専門家によると、土壌汚染の深刻化は今後30年間続く見通しだ。有毒化学物質や重金属汚染は都市部から農村へ、地表から地下へ、上流から下流へ、水質・土壌汚染から食品汚染へと移動しており、蓄積された汚染物質が汚染事故を次々と引き起こしている。土壌汚染が自然に回復するには数百~1000年の時間がかかるといわれる」。

土壌汚染の深刻化は、今後30年間続く見通しとされている。土壌汚染が自然に回復するには数百~1000年の時間がかかる、と言われるのも頷ける。中国経済は、生産年齢人口比率の低下によって、今後は潜在成長率が下降に向かうのだ。この過程で、土壌汚染の深刻化が30年も続くという「負の加重」は、中国経済をひっくり返すに十分な負担である。中国の将来をバラ色に見ることのリスクは、余りにも大きいのである。もはや、「中国の時代」は、終わったと言うべきなのだ。
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