Entries

中国、輸出競争力が低下「米国製造業」復活で逆転

勝又壽良  2014-05-07 03:28:21

米中の製造業は逆転へ  職権を利用した天下り

「奢れる者久しからず」。中国は、「世界の工場」と豪語してきたが、米国製造業の復活に脅かされている。過去30年余の「高速成長」を背景に、「米国何するもの」と意気込んできた。軍拡を進めて、太平洋を米海軍と二分する。ここまで舞い上がってきた。所詮、成り上がり者国家の悲しさである。人海戦術経済の限界は、大幅賃上げで露呈している。科学技術の裏付けのない経済は、一瞬の輝きに終わる運命だ。

私はかねてから、米国経済の強さを指摘してきた。「イノベーション能力」の高さは、とうてい中国の及ぶところでないからだ。政治、経済、科学技術、民度など、いずれを比べても中国は「周回遅れ」である。たまたま、世界的な技術革新の空白期を衝いて、人件費の安さだけが「武器」であった。それが、中国経済発展の舞台裏である。科学技術は、階段的な発展過程をたどるもの。1990~2010年は、まさに世界的な技術革新の空白期であった。そのエアポケットで顔を出したのが中国経済である。

新たな技術革新とは何か。それは、エネルギー革命である。化石燃料に代わって「脱化石燃料」へと転換する。究極的には無公害の「水素エネルギー」の登場である。この技術開発で先頭を走っているのが日本である。「水素自動車」の実用化は目前(2015年以降)である。水素発電所の実用化も2017年を目途とする段階までこぎ着けている。これらの先端技術は、中国が指をくわえて見ていなければならない。中国が、日本と敵対するコストは、予想を超えて大きいのだ。

米中の製造業は逆転へ
英経済紙『フィナンシャル・タイムズ』(4月25日付け)は、次のように伝えた。

① 「米コンサルタント大手のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、米国とメキシコは他の主要経済国に比べ、この10年間で製造拠点として魅力が高まってきたと指摘した。労働コストの上昇が緩やかなことや、天然ガス価格下落が寄与した。BCGが世界の製造業に強みを持つ経済国を分析したところ、ブラジル、オーストラリア、ロシアといった資源国はコストが最も急速に上昇し、中国やフランス、イタリアなど欧州の一部でも大幅にコストが上昇した。こうした傾向は、生産活動が米国やメキシコに向かう長期的な流れを加速すると予想される」。

米コンサルタント大手のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、輸出上位25カ国の製造原価の変動要因や競争力の順位を分析した。この指数は、賃金・労働生産性・エネルギー価格・為替レートという4つの変数を基にして、米国の競争力を100とした場合の各国の原価競争力を比較したもの。現在1位の中国と2位の米国は、順位が入れ替わる。中国では、10年前に比べ賃金が187%、エネルギー価格が138%急騰するなど原価負担が高まっている。2014年の時点で96の中国の競争力指数は、2018年には102に上昇すると予測されている。米国は、シェールガスがもたらすエネルギー価格の低下、緩慢な賃金上昇率(注:2010~13年で4.0%上昇)、安定的な為替レートなどがプラスの要因である。米国が、2018年ごろに『製造業最強国』の地位を取り戻す、とBCGは見通すのだ。

『ジェトロセンサー』(2014年5月号)も、次のように指摘している。

「米国経済の緩やかな回復基調の下、生産拠点としてだけでなく、開発拠点として米国で『つくる』優位性が再認識され始めた。(1)中国などの新興国での生産コスト上昇に伴う米国の生産コストの相対的低下。(2)シェール資源開発ブームや、それによる安価な原材料の活用。(3)自由貿易協定(FTA)網による輸出拠点としての強み。(4)イノベーション(技術革新)による新たなものづくりの動き、などだ」。

アップルが、パソコンの最上位機種を米国内で生産すると発表、世界を驚かせた。アップルによる米国内でのパソコン生産は、2004年に終了して以来、実に10年ぶりである。日本のパソコンメーカーも、すでに3~4年前から日本国内での生産を開始している。中国製に比べて「国産」は1万円程度の割高であるが、「信頼性」はグッと違うのだ。

米国経済が、「メード・イン・USA」を看板に打ち出している背景は、技術革新の進行が上げられる。中国で急上昇した賃金で生産することや、運賃を計算に入れれば、もはや中国国内での有利性は薄まっている。しかも、米国は自由貿易協定(FTA)網によって輸出拠点のメリットを発揮している。輸出先を確保しているにも等しい米国の輸出戦略は、中国の真似ができないところだ。

中国がそれに気づいているのか、いないのかは不明である。それを象徴するように中国における競争力低下のなかで、無謀にも日本と敵対する道を選んでしまった。日本企業が中国で生産し輸出するメリットは薄れている。そのうえ、「反日」という時限爆弾を抱えたからだ。先の「商船三井」の貨物船差し押さえ事件は、中国のイメージを一段と下げる結果になった。「GDP世界2位」で有頂天になっていることが、中国の経済的な地位を悪化させている。

② 「中国などの低コスト地域に移転させた製造拠点を米国内に戻す『回帰』の兆候はまだ確かなものではない。国際的にコストを比較すると、米国の製造業が今後さらに勢いを増すとの期待が膨らむ。BCGのハル・サーキン氏は、『状況が変わらない限り、高コストの国に工場を設ける企業は大幅に減り、閉鎖される工場も増えるだろう』と指摘する。BCGが算出した平均コスト指標によると、中国が享受してきた優位性はこの10年間で急速に減退した。米国においてコストが相対的に改善した最も重要な要因は、製造業の賃金の伸びが抑えられ、主要経済国の平均伸び率よりはるかに低かったことだ。メキシコでは賃金の伸び率は世界平均並みだが、労働生産性が目立って向上した。欧州やアジアでは対照的にガス価格が上昇する中、米国とメキシコは天然ガス価格を急落させた米シェール革命の恩恵も受けている。コスト差が立地の決定に及ぼす影響は業種によって異なる。輸送コストが比較的高い業種や、顧客と近いことが重要な業種では、米国への回帰が最も有望視されるだろう」。

労働コストの比率が高い製品分野では、中国の急速な賃上げは不利に働いている。最近に限っても2010~13年まで、上海の一般工賃金は48.7%、広州は同74.0%の上昇である(『ジェトロセンサー5月号』)。この間に、米国は同4.0%の上昇である。米中の賃金格差は急速に縮小している。これでは、中国から米国へと製造業回帰が起こっても当然であろう。

科学技術の進歩が、ますます高付加価値製品を生み出して行く。こうした傾向のなかで、中国は先進国の製造業に対してどのように対抗するのか。高付加価値製品ほど、全体の製造コストに占める輸送費や人件費の比率は低下する。例えば、モトローラの「Moto X」の場合、部品コスト214ドルに対して、組立コストは12ドル程度とされている。率にして5.6%だ。これでは、わざわざ中国で生産する必要性もなくなる。中国経済が先進国企業に頼って発展してきた段階は、完全に終焉期に入るのだ。こうした前兆はすでに現れている。

『サンケイビズ』(4月24日付け)は、次のように報じた。

③ 「北京に事務所を置く在中米国商工会議所(ACCC)は、中国ビジネス環境に関する年次報告をまとめた。米国企業や多国籍企業が、『中国からの輸出やインフラ建設を主体とした従来型の経済成長モデルにあまり必要性を感じなくなった』と指摘。個人消費拡大による成長牽引(けんいん)がまだ十分ではないなか、投資や輸出の減少が外資のビジネスチャンスを減らしているとの見方を示した。また、『市場アクセスの障壁が投資を減少させる主な理由の一つで、国内総生産(GDP)成長の増加スピードも鈍化している』と懸念。国有企業をさまざまな形で支援する中国政府の産業政策が、“不公平感”を生んでいるとして不満を表明した」

在中米国商工会議所(ACCC)によると、米国系企業や多国籍企業は、中国からの輸出やインフラ建設を主体とした従来型の経済成長モデルに魅力を感じなくなった、としている。これは、きわめて重要な点を指摘している。中国の輸出競争力が落ちていること。インフラ建設が限界に達して、今後の伸びが余り期待できないこと、などを率直に表明しているからだ。中国経済の魅力がそれだけ低下した事実を裏付けている。経済成長率低下のなかで、国有企業への保護傾向が高まっている点の不満も指摘されている。要するに、経済成長率が高いときは隠れていた中国経済の欠陥が、成長率低下によって一層はっきりしたにすぎない。

職権を利用した天下り
『大紀元』(4月23日付け)は、次のように報じた。

④ 「中国の上場企業トップ100社の独立董事(社外取締役)のなかに、定年退職した政府高官が41人いることが明らかになった。41人のなかには、中国証券管理監督委員会の元会長、国家石油・化学工業局の局長、中国人民銀行の元副総裁、国家建設部(省)の部長らが社外取締役として就任した企業は、以前の公職と密接な関係にあるケースが多かった。中国の『公務員法』では、政府幹部を務めた公務員が退職後3年間、元の職務と直接関連のある企業で仕事につくことは禁じられている。習近平政権の反腐敗運動が本格化した昨年10月以来、すでに60人以上の社外取締役が辞任している。2012年の政府統計によると、上場企業全体の社外取締役の8.45%、642人は政府幹部だという」。

政府の高級幹部が、それまで勤務していた職務と関連した企業へ「天下って」いた。中国の「公務員法」では、退職後3年間について元の職務と関連ある企業への再就職を禁じている。それを破っての再就職である。まさに「法あって法なし」の現実に驚かざるを得ない。先に指摘されているように、外資系企業から「国有企業保護」として批判されるのは当然である。中国は恣意的な行政である。「家産官僚制」という、専制政治特有の官僚社会を見せつけている。これが、汚職腐敗の原点である。

恣意的な行政とは、行政官の自由裁量幅が極めて大きいことを表す。ここに、賄賂・汚職の忍び込む余地が生まれる。これを封じるには、「近代官僚制」に立て直すことだ。つまり、恣意的な要因が入り込まないように規定し、公的な監視制度の確立が前提になる。司法までが恣意的に運用されており、政治が介入するという酷さである。中央政治局常務委員(現在7人)は、原則として法的な追及を受けない。こいう不文律が存在すること自体、時代錯誤なのだ。これは、科挙制度が存在した時代の名残をとどめている。高級文官には法的な追及が免除されていた。「人は法の前に平等」という近代司法の精神から著しく逸脱している。ここで、法に違反するおかしなことが起こるのだ。習近平政権の「反腐敗闘争」により、官僚の「役得」が摘発されている。これが嫌気され、公務員志望者が減っている。呆れた社会である。

『産経新聞』(4月16日付け)は、元拓殖大学国際学部教授・藤村幸義氏のレポートを次のように伝えた。

⑤ 「中国ではいま、地方公務員の選抜試験が各地で一斉に行われている。この数年、景気悪化に伴い企業の採用者数が低下してきているので、公務員人気はさらに高まっているかと思いきや、実際にはそうでもない。ほとんどの省市自治区で応募者が激減しており、公務員就職熱が急速に冷めつつある。例えば浙江省では、昨年は受験者が36万人もいたのに、今年は22万7000人と4割近くも減っている。河北省も昨年の28万人に対し、今年は20万人でしかない。中国の公務員試験では、細かい職位ごとに募集をしている。このため、職位によっては応募者が募集定員に達せず、再募集を行うとか、あるいは募集そのものをあきらめるケースも出ている」。

つい最近まで、公務員試験は難関そのものだった。人民解放軍に在籍した者は、公務員試験で優先的に扱われる恩典を利用して、公務員を志望する若者が多かった。人民解放軍入隊を公務員試験突破のエサにしていた時代もあった。公務員になると、次のパラグラフで指摘されている「灰色収入」が期待できた。こうした不謹慎な「二次収入期待」も手伝って、公務員試験は絶大な人気があった。それが、「反腐敗闘争」ですっかりと公務員への魅力が色あせた。何とも「現金」な中国の若者たちである。

⑥ 「公務員になる最大のメリットは表向きの給与のほかに、福利厚生面での厚遇を受けることができること。さらには様々な『灰色収入』も期待できる。賄賂や贈り物とか、未申告の報酬などの類だ。ところが習近平政権下では、厳しい反腐敗キャンペーンが展開されていて、このメリットを享受しにくくなっている」。

いやはや、驚くばかりである。国家公務員としての使命感は二の次。「灰色収入」が目的であったとは。中国の民度の低さを、これほど露骨に表す事例もない。こうした国家が、世界の覇権に挑戦したい。世界にとって、この上なく迷惑である。自らの民度の低さも顧みずに背伸びし続ける。その行き着く先は、自滅以外にないのだ。
スポンサーサイト
  • コメント : -
  • トラックバック : -

Appendix

最近の記事