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中国、経済面で「太平洋の孤児」TPPが妥結すれば必至!

勝又壽良 2014-06-18 04:27:31
焦る中国に有効策なし  脱中国の経済圏づくり

このところ、中国外交が孤立の道を辿っている。5月末に開かれた「アジア安全保障会議」では、中国の軍備拡張と南シナ海や東シナ海での威圧的行動に対し、アジア各国からの批判にさらされた。宣伝上手の中国が、「国際法を遵守せよ」という正論の前に、為す術がなかった。かろうじて、「2000年以上前に中国が発見し管轄下に置いた」などと述べるだけ。法律上の根拠は「時間がない」として示さなかった。要するに、中国領海説には国際法的な根拠がないのだ。それを中国自らが証明した。

中国は、南シナ海も東シナ海も中国領海と言うしかない。こうした「中華帝国」感覚の国家に対して、周辺諸国はどのように対応するのかが問われている。国際法では「先占の原則」がある。どの国が最初にその地域を占有して利用したかが重要である。中国には「管轄下」に置いた実績はゼロである。ただ、歴史の古い国家であるから、「2000年以上前に発見した」という「おとぎ話」を持ち出すしかない。

こうした「横車」を押す中国に死角はないのか。周辺国が経済的に孤立させる戦略を実践すれば、中国経済といえども干し上がる運命である。秦の始皇帝時代と異なるのは、現代が農業社会でなくグローバル経済下にあることだ。貿易こそ経済発展の原動力である。中国は目下、12ヶ国で交渉中のTPP(環太平洋経済連携協定)加入資格について、ゼロ同然である。前近代的な産業構造の上に、「社会主義市場経済」というヌエ的な、市場経済もどきでお茶を濁している経済システムである。これを抜本改革することは、現状から見ても絶望的だ。それ故、中国のTPP加入問題は、永遠の夢に終わるに違いない。

焦る中国に有効策なし
中国メディア『財経網』(6月4日付け)は、次のように伝えた。『サーチナー』(6月7日付け)が転載したもの。

① 「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を巡る日米交渉でせめぎ合いが続いていることについて、『世界1位と3位の経済大国による交渉はすでに大詰めを迎えているが、中国が推進している東アジア地域包括的経済連携(RCEP)はいまだに実質的な交渉すら行われていない』とし、中国はTPPによって世界の貿易から『蚊帳の外に追いやられる可能性がある』と危機感を示した。TPPやRCEPに積極的な姿勢を示しているカナダやニュージランドの政府関係者に対する取材の結果として、『中国のTPP加盟に関する意思とは無関係に、TPP加盟国はすでにこれ以上規模を拡大しないことで一致しており、協定のルールが固まってから他国の加盟申請を検討する方針であることが分かった』と報じた」。

中国は、TPPの概略を理解しているはずである。高度の自由化を実現するのがTPPの基本理念である。中国の経済システムが、このTPP理念と比べていかに立ち遅れているか明白だ。現在、中国政府が取り組もうとしている経済改革でさえ、IMF(国際通貨基金)や世界銀行の後押しがあっても、実現が危ぶまれている。この程度の経済システムの国家が、TPP加入へと飛躍するのは不可能と言うべきだ。子どもが大人の社会へ仲間入りするのと同じである。

「中国のTPP加盟に関する意思とは無関係に、TPP加盟国はすでにこれ以上規模を拡大しないことで一致している」のは事実である。韓国もTPP加入意思を決めて、関係12ヶ国へ伝えたが、米国から「拒否」されている。現在の12ヶ国で意見調整中であり、正式決定してから「入場券」を買って参加して欲しいと言われたのだ。これに対して、韓国は落胆している。主要事項は、日米が音頭をとって決めてしまうからだ。韓国は、とくに技術面での日米了解線がハイレベルになることを警戒している。

中国は、韓国よりも数段も遅れた経済構造である。その韓国すら、日米のTPP先行交渉に神経を払っているのが現状である。中国がTPP加入の資格を整えるには、どれだけの時間がかかるか想像もつかないのである。習近平国家主席は、「TPPに関心はある。事前に情報を開示して欲しい」と米国へ伝えはした。それは、単なるゼスチャーに過ぎない。本心ではないと見るべきだ。

② 「記事では、中国国内にはTPP加盟をめぐって議論が絶えないことを紹介し、関税撤廃や国有企業の改革、労働者の権利問題、環境保護や知的財産権など、『TPPに絡むあらゆる項目が中国にとっては敏感な問題だ』と主張。カナダのエド・ファスト国際貿易大臣の発言として、『米国は将来的にTPPを大きく成長させたいと考えているが、現段階ではまず交渉を妥結させることが第一だ。明確な枠組みを作ってから他国の加盟を受け入れる』と伝えた。現時点で、中国国内のTPP加盟をめぐる議論は『あまり意味のないもの』と評した。『TPPがどのような内容になろうと、中国が巨大な市場から隔絶されることは間違いなく、それによってマイナスの影響を受けることも不可避である』と警戒感を示し、日米のTPP交渉が妥結した後で中国が加盟を望めば極めて厳しい条件を受け入れざるを得ない。その難しさは、『WTO加盟をはるかに凌ぐだろう』と伝えた」。

中国にとって、関税撤廃や国有企業の改革、労働者の権利問題、環境保護や知的財産権など、TPPに絡むあらゆる項目が敏感な問題だとしている。それは、そうだろう。中韓で協議中のFTA(自由貿易協定)の関税問題では、中国が「20年の猶予期間」を求めているほどだ。関税すらこの調子である。TPPでは、国有企業の改革、労働者の権利問題、環境保護や知的財産権、などの諸問題などがずらりと並ぶ。まさに、「天山山脈」を素足で登り切る感じである。国有企業は、太子党の利権巣窟である。それだけに、この改革は絶望的である。習政権は、経済改革の柱に国有企業を根幹に据えると明言している。これだけでも、TPP加入は不可能である。共産党政権が続く限り、国有企業は共産党員が甘い汁を吸える「利権のダム」であるのだ。

環境保護も困難である。「中国の土壌汚染面積は、2012年における日本の耕地面積合計、454万9000ヘクタールの約5.1倍だ。土壌汚染の改善で効果を出すのには、ごく大雑把な見積もりで10兆元(約160兆円)程度はかかるという。中国の国家予算では、2011~15年の5年間で300億元(約4800億円)しか汚染対策費に投じられていない。単純計算して、改善には1667年が必要になる」(『サーチナー』6月6日付け)。ここまで環境崩壊させてしまったのだ。この問題だけでも、TPP加入は門前払いされるであろう。

中国がTPP加盟を望めば、極めて厳しい条件を受け入れざるを得ない。その難しさは、「WTO(世界貿易機関)加盟をはるかに凌ぐだろう」見られている。TPPから外れた中国は、今後の貿易戦略で不利になることは否めない。中国の経済発展が世界平和に寄与するならば、世界は喜んで中国の制度改革に支援の手を差し伸べる。だが、国力がつけば軍事力を増強して、米国を頂点とする民主主義国へ軍事挑戦する「危険児」になりかねないのだ。となれば、中国をTPPのような経済圏には入れたくない。そういう選択肢が、現実化するはずだ。

TPPは、英語でTrans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreementと言う。一般には、「環太平洋経済連携協定」と訳されている。実際は字義通りに訳すと、「環太平洋戦略的経済連携協定」である。「戦略的」(Strategic)が挿入されている。その意味を、改めて問い直さなければならない。戦略的とは、単なる経済連携協定でないのだ。安全保障の意味が込められている。ここが、重要なのだ。中国を排除することは、暗黙の前提である。南シナ海や東シナ海で傍若無人な振る舞いを続ける中国は、国際社会の仲間として受け入れがたい対象国になっている。

脱中国の経済圏づくり
『日本経済新聞』(5月21日付け)は、次のように伝えている。

③ 「軍事と経済の両面で影響力を強める中国に、どう対抗するか。強力な通商秩序を築くTPP構想には、東アジア地域の安全保障を高める機能がある。閣僚会合に臨んだ各国代表は、合意を急がなければならない理由を、暗黙のうちに認識していた。『TPPは経済的な恩恵だけでなく、地政学的にも極めて重要だ』。閣僚会合を終え、ほっとした様子だったフロマン米USTR代表が一瞬、厳しい顔になった。『この地域に米国が積極的に関与する意義は大きい』。南シナ海での対立で中国とベトナムは一触即発の緊迫感が漂う。対中批判を強める東南アジア諸国連合(ASEAN)の結束を阻止しようと、中国は個別国に外交工作を展開。TPP構想の立案に関わった米外交官は、『軍事力の均衡だけで紛争を阻止できる時代は終わった』と、次世代の通商ルールづくりの意義をこう語った。中国を包囲し、その力を封じ込めるのではない。中国に依存しすぎずに成長する道を開くという考え方だ」。

TPP交渉の参加12カ国による閣僚会議は、今夏をメドに大筋合意を目指している。これまでの原理原則論から、最低限の例外を認め合う現実路線を探り出したところだ。TPPは、「戦略的経済連携協定」である以上、「戦略的」な妥協も不可欠である。そうでなければ、単なる経済連携協定という平板で終わるのだ。TPP構想の立案に関わった米外交官が、「軍事力の均衡だけで、紛争を阻止できる時代は終わった」という認識を深めている。それは、中国を封じ込めることでなく、中国に依存しない経済圏の樹立が前提である。

要するに、中国に依存するアジア経済ではなく、中国とは別個の自由経済圏を形成する。その必要性を強調しているのだ。韓国の対中国輸出が4分の1にもなることは、中国への依存を深める。韓国の「反日」による中国へのにじり寄りは、中国経済がアジアでの存在感を深めている結果なのだ。専制主義国家・中国への経済的依存を避ける。民主主義国が安心して安全保障をも確立するには、TPPが是非とも必要になってくる。TPP交渉の12ヶ国は、こうした意識を共有する。韓国の中国接近という事態は、改めてTPPの早期成立の必要性を迫るものである。その韓国も、TPP加入の意思表示をしている。台湾も同様である。経済的な「脱中国」への第一歩が、始まっているとも言えるのだ。

④ 「(TPP交渉国の)ベトナムの貿易構造をみると、弱点がよく分かる。2012年の輸出額は1146億ドルで、米国向けを中心に前年比18%伸びた。衣料品や靴、電気製品を得意とするが、生産に必要な原材料、設備の大半は中国からの輸入に頼る。対中輸入の品目はセメント、鉄鋼などの素材のほか、プラント設備、製造機械、糸や布地など衣料品の材料、プラスチック原料が多い。輸出が伸びるほど輸入も増え、対中貿易赤字は膨らむ一方だ。生産を支える電力も中国からの輸入に頼らざるを得ない。ベトナム経済の弱点を握る中国が、南シナ海で実力による支配に動いている。混乱するウクライナ情勢と、欧州連合(EU)各国への天然ガス供給の元栓を握るロシアの強気にも通じる点がある。日本、マレーシア、ブルネイ、フィリピン(加盟希望国)も、海洋や島の領有権で中国と問題を抱える。TPP交渉国、次期参加の有力候補と重なるのは偶然ではない」。

ベトナム経済は、完全な中国依存である。ベトナムは前2世紀以来、1883年のフランス植民地になるまで、一貫して中国の支配を受けてきた。それだけに、中国忌避の精神はきわめて強いのだ。現実の経済関係では、中国の影響を受けている。ベトナムとしては、TPPに加入して中国経済の影響力を遮断したい。それを切実に訴えている。南シナ海での中国との衝突は、中国への経済的な依存の大きさを反映して、思い切った対応ができずに「泣き寝入り」を迫られかねない。もしもTPPが発効していれば、背後の加盟国全体の影響力を考え、中国は自重せざるをえないはずだ。TPPが安全保障の役割をする、という意味はこれである。

TPPが、中国に自粛を迫る道具立てになるのだ。中国は、アジア唯一の「大国」を目指し、好き勝手な武断外交を展開している。これは、持続性を保てるだろうか。「中華帝国」時代は、国土と人口の規模が最大の武器として相手国を威嚇できた。現代はグローバル経済下である。中国は専制主義国家ゆえ、周辺国から軍事的に警戒されている。TPPという経済システムは、周辺国が団結して経済圏をつくり、中国経済に依存しないことを可能にする。つまり、中国の武断外交の弊害を自律的に遮断することが可能なのだ。2200年前、秦の始皇帝が採用した「合従連衡」と「孫子の兵法」は、TPPという現代の砦によってその神通力を失う。この事実を、中国は冷静に受け入れるべきであろう。
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