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中国、「不良債権隠し」低迷の上海株テコ入れするも効果はない

勝又壽良 2014-09-15 05:33
政府系メディアが株価で共謀 バブルはすでに限界を超えた

世界主要国の株式市場で、まったく見捨てられてきた上海株式が、政府のテコ入れで復活気配を見せている。だが、業績回復を先取りするといったものでなく、先行きへの淡い期待が株価を底離れさせているようだ。長年、銀行株はPER(株価収益率)5倍程度と見捨てられてきた中国である。大手国有銀行は、不良債権処理に備え一斉に資本増強に動き出している。その資金は、株式市場で調達せざるを得ない。ここまで書いてくれば、中国政府が必死になって株価操作に動き出している理由は明らかになる。「バブル崩壊隠し」といった姑息な手段とお見受けする。5年前にも、政府の株価操作は大失敗している。同じ誤りを、また繰り返すのであろうか。

上海総合指数の時価総額は、今年5月末までの3年間で4600億ドル(約48兆2600億円)も失われた。世界の主要な株価指数では、最大の値下がりである。同期間に、投資家が解約した取引口座数はおよそ500万口に上るという。国民の減退した株式への関心が復活すれば、不動産市場や理財商品に流れ込む資金が、株式市場へ「逆流」かも知れない。こんな期待も取り沙汰されているのだ

政府系メディアが共謀
『ブルームバーグ』(9月5日付け)は、次のように伝えた。

① 「国営の新華社通信は9月第1週、株式投資を提唱する記事を少なくとも8本配信。株式投資に関する評論や記事で、『中国には質を伴った強気相場が必要』や『どうすれば株式相場は活況づくのか』といった見出しが躍った。共産党機関紙の人民日報や国営テレビも先月、同様の趣旨の報道を行った。中国政府による相場押し上げに向けた取り組み強化が株価に一部反映されていると指摘する向きもある」。

9月第1週(1~5日)の間に、国営メディアの新華社通信が、株式投資奨励記事を8本以上も掲載したという。これに歩調を合わせて、共産党機関紙『人民日報』や国営テレビが「株式投資キャンペーン」を打ったというのだ。これを否定するような記事は禁じられているから、あるいは私のブログが、日本からの「否定記事」第1号になるのかも知れない。

このブログ程度の否定論では、「役不足」が明らかである。だが、中国政府や共産党が揃って、「株式キャンペーン」を行うことに、国民はなんらの疑念も持たずにいる。壮大なる国民財産の「巻き上げキャンペーン」になることは不可避であろう。これから、本格的な不動産バブル崩壊が始まるというのに、国民は余りにも「能天気」過ぎるのだ。欲得が絡むと、冷静に中国経済の先行きを読めなくなるのは、まさに中国人社会の「性」(さが)そのものである。

② 「中国当局はこの2週間のうちに取引手数料や口座新設費用の引き下げを発表した。上海証券取引所は9月第1週、透明性の向上と投資家との関係強化のために大手14行による投資家向け説明会を開催することを明らかにしている。こうした動きを評価して、シティグループやモルガン・スタンレーなどは、今年の相場上昇を予想している。当局による株式投資促進はこうした流れに追随する動きで、その効果はすでに相場に及んでいる可能性がある」。

そっぽを向いた投資家を、もう一度株式市場へ呼び込むには、それなりの舞台装置が必要である。取引手数料の引き下げなどを行ったという。さらに、大手銀行14行が投資家向け説明会を開いたほどだ。ここで、株価テコ入れの意図が鮮明である。なぜ、銀行が株式取引の奨励に乗り出しているのか、である。

本来ならば、証券会社の仕事である。株式市場に資金が流れれば、その分の銀行預金が減少するはずである。それでも、銀行が乗り出した背景には、自らが抱える見込みの不良債権処理に備える必要があるのだ。資本増強となる「増資」を円滑に行いたいからである。こうして、銀行を巻き込んだ株式キャンペーンの狙いが明白になったであろう。「シティグループやモルガン・スタンレーなどは、今年の相場上昇を予想している」とは、愉快な記事である。米国の投資銀行などが、中国株の上昇に対して「異議」などあるはずはない。自らも利益に預かれるからである。

③ 「中国は不動産市場の落ち込みを乗り切れるとの観測から、上海総合指数は3日、約1年3カ月ぶりの高値を付けた。5月末以降の上昇率は12%に上る。残高のある株取引口座数は8月8日終了週までは12週連続で減少し、2010年3月以来の低水準まで落ち込んだが、ここへきて増加に転じつつある。また、口座の新規開設は5月以降、倍増した」。

中国が、不動産バブルの危機を乗り切れる。こういう話しは初耳である。多分、前記の新華社通信や人民日報がさぞ、真実のごとく報道して国民を「安心」させたに違いない。こうした「情報宣伝」は、中国の最も得意とする分野である。尖閣諸島の中国領有説でも、「下関条約」(日清講話条約)で、日本が無理矢理併合した、という嘘を並べている国だ。「下関条約」の条文を詳細に読めば分かる。どこにも、それが記録されていないのだ。この調子で、デマカセを言っているのであろう。

政府の「虚言」であろうと、経済政策の決定権を握っている当局者の発言であれば、国民は飛びついて当たり前である。9月11日の上海総合指数は、2311の終値であった。実に、2013年3月22日の終値2328と肩を並べるまでになった。残高のある株取引口座数は、5月以降増加に転じているという。不動産投機がダメ。シャドーバンキングも危険。こうした消去法で、株式市場が選ばれているのであろう。欲得になると、中国人の嗅覚は鋭くなる。ただ、その成果のほどは保証の限りでない。こちらも、きわめて危険なはずである。

④ 「光大証券のツォン・シエンチャオ氏は、『確かに政府は株式投資を奨励している。海外資金流入を促進するためには、市場に活気がある必要がある』と述べた。5年前には、国営メディアの強気の報道に、現地投資家の需要増にもかかわらず、株式相場の下落は避けられなかった。中国大手経済紙2社が継続的な上昇相場を予想し、取引口座新規開設数が09年7月に18カ月ぶりの高水準に達した。上海総合指数は、その後12カ月にわたり23%も下落した」。

中国政府が現在、株式投資を奨励していることは疑いない。5年前に、同じことを政府が行ってその後、大失敗している。中国大手経済紙2社が、継続的な株価上昇を予想したほどである。取引口座新規開設数は、09年7月に18カ月ぶりの高水準に達した。上海総合指数はその後、12カ月にわたり23%も下落したのである。日本でも、マスコミの株価記事が増えると、株価は天井をつけるというジンクスがある。大衆が参加する株式相場は、どうしても早期に過熱するからである。

中国はすでに、政府機関紙と共産党機関紙、国営テレビの三者が揃って「相場の煽り」を始めている。これは、相場が短命であることを予見させている。肝心要なことは、中国経済が不動産バブル崩壊に伴う不良債権処理にメドがつけることである。現在は、その準備作業が始まった段階である。この段階で、相場の煽りをすることは逆効果である。

『サーチナー』(9月4日付け)は、次のように伝えた。

⑤ 「中国中央人民銀行(中央銀)の潘功勝副総裁は9月2日、北京市内で開催された全国社会信用体系建設工作会議に出席。社会信用システムの建設を加速することや、信用調査市場の健全な発展を促進することなどを強調した。現状については、『信用を失っても、内には利益をもたらし、外にはコストを押し付ける』行為が横行していることを問題視。信用問題については、『信賞必罰』のための有効な制度を形成する必要があると強調した。金融分野では、金融商品の刷新と金融サービスの改善を求めた。さらに、金融詐欺、債務逃れ、インサイダー取引、虚偽情報の発信、非合法な資金集め、詐欺などに対する処罰を強化するという」。

この記事を読むと、中国の金融システムがいかに不備であるかを証明している。とても先進国レベルには達していないのだ。「信用を失っても、内には利益をもたらし、外にはコストを押し付ける」行為が横行している。中国社会の最大の弱点は、経済倫理観の欠如である。企業会計においてもしかりだ。粉飾決算は珍しくない。米国株式市場で上場している中国銘柄について、まったく信用されていないのである。中国銘柄は、強制排除(上場廃止)措置が取られるほどである。

こうした状態だから、中国国内に上場している銘柄について、信頼性が欠けるのは致し方ない。粉飾決算銘柄が上場されていれば、資金はドブに捨てたのも同然になる。そんなリスクを冒してまで、中国株を買う層がどれだけいるのか。今後、中国当局は「金融詐欺、債務逃れ、インサイダー取引、虚偽情報の発信、非合法な資金集め、詐欺などに対する処罰を強化する」という。まだ、前記の悪事が野放図にされていることを認めているのだ。不真面目な企業経営者が、「信用を失っても、内には利益をもたらし、外にはコストを押し付ける」という違法行為をして、逃げ回っている。こんな盗賊まがいの中国株を買うくらいならば、どこかへ寄付でもした方がはるかに人様に喜ばれるのだ。

中国企業における底なしのリスクは、企業会計が正しく表示されていない点にある。これから本格化する不動産バブル崩壊は、企業会計に虚実が織り交ぜられる危険性増大を意味する。すでに、中国不動産のバブル認識は、広く世界に拡散している。それは同時に、中国企業全体への警戒信号発信でもある。

バブルはすでに限界を超えた
『大紀元』(9月6日付け)は、次のように伝えた。

⑥ 「中国の不動産価格は、過去10年で5倍に高騰した。北京や上海、広州などの中国の主要都市の住宅価格は、世界先進国の主要都市と同価格にまでなった。中国の普通の労働者層の賃金は、西欧諸国に比べればまだまだ低い水準にある。世界経済の一体化が強まる中、中国経済は世界経済の成長と緊密につながっている。各国関係者らは不安を感じながら、中国の不動産市場の動向を注視し続けている。一部の専門家は、各種の指標や兆候からみれば、中国の不動産バブルは2008年の米住宅バブル(注:リーマン・ショック)より大きい可能性があるとの見方を示した」。

中国政府がどれだけ隠しても、不動産バブルはすでにリーマン・ショックの規模を上回る可能性が指摘されている。それにも関わらず、中国当局は「不動産市場の落ち込みを乗り切れる」といった観測を株式市場に流すことは、無責任きわまりないと言うほかない。GDPの200%を優に上回る債務総額が、簡単に乗り切れるはずがない。仮にそうならば、日本の平成バブルは容易に処理できたはずである。「失われた20年」にもならなかったであろう。中国は、余りにも問題を単純に考えすぎているのだ。

⑦ 「サブプライム住宅ローン危機に端を発した2008年の米国発の金融危機は、世界的な金融危機へと連鎖反応を引き起こした。欧米経済はいまだにその危機により残された、さまざまな悪影響と戦っている。米国のニュース専門放送局CNBCは8月31日付論評記事で、中国の不動産市場は銀行や建設業界と直接的な関係を持っており、中国の不動産市場の重要性を過小評価することはできないと強調した。中国の不動産投資対GDP比は、2013年に16%で極めて危険な水準に達している。実際、1960年以降、世界各国の不動産投資対GDP比は6%以上を超える場合、不動産バブルの崩壊が出現している。米国サブプライム・ローン危機の場合、住宅投資対GDP比は6.2%に上昇した。日本のバブルが崩壊した時、不動産投資対GDP比は9%だった」。

中国の不動産投資対GDP比は、2013年に16%である。この数値がいかに高いかは、次の例を見れば明らかである。米国サブプライム・ローン危機の場合、住宅投資対GDP比は6.2%である。日本のバブルが崩壊した時は、不動産投資対GDP比は9%である。1960年以降、世界各国の不動産投資対GDP比は6%以上を超える場合、不動産バブルの崩壊が出現しているのだ。中国は、すでに16%にも達している。バブル崩壊はいかんともし難い状況に追い込まれている。噴火直前である。

中国の経済政策は、きわめて安易であった。土地国有化制度を「悪用」してきた。安値で農地を買収して高値で売却。膨大な売却差益を地方政府の財源にして、不動産開発を続けてきた。2013年に不動産投資対GDP比が16%にも達したのは、無駄な不動産投資によるGDPかさ上げを狙ってきた結果だ。2010年、GDPで世界2位に躍り出た背景には、このゾットするような無駄な不動産投資が支えたのである。今や、この無駄な投資が総決算を迫られている。この精算過程では、膨大な不良債権を生み出す。中国企業が低収益体質に落ち込むのは不可避である。

これを反映する中国の株式市場が、どのような悪影響を被るかはもはや言うまでもない。きりもみ状態に落ち込んで当然であろう。中国当局は、楽観論を振りまいて強引に「腕力相場」で株価を押し上げ、国民の財産を「巻き上げ」銀行の不良債権を肩代わりさせようという狙いであろう。最後のしわ寄せは、国民大衆に押しつける。これが共産党専制政治の常套手段であろうか。
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