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安倍外交の挑戦・消えた朴大統領への首脳会談呼びかけ 中韓同列の慣習も消えた

zakzak 2014.10.07

 安倍晋三首相は9月25日、米ニューヨークで行われた国連総会の一般討論演説で「20世紀には紛争が起きると、女性の名誉と尊厳が深く傷つけられた歴史があった」「日本は世界中のそうした女性たちに寄りそう国でありたい。紛争下での性的暴力をなくすため、国際社会の先頭に立ってリードしていく」と語った。

 積極的平和主義を掲げ、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」との戦いで出た難民支援などに総額5000万ドル(約54億6000万円)の緊急支援を表明。また、国連常任理事国入りに意欲を示すなかで、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領を意識して入れたフレーズだった。

 朴氏は前日24日の一般討論演説で「戦時の女性に対する性暴力は時代や場所を問わず、人権と人道主義に反する行為」と述べ、間接的表現で日本を牽制した。

 名指しを避けたので、韓国メディアは「対日批判のトーンを下げた」と評価したが、訪韓した森喜朗元首相を迎えた19日の会談でも、朴氏は「過去の傷を治癒する誠意ある努力の先行」を求め、慰安婦問題の「解決」が首脳会談の前提という姿勢をかたくなに変えていない。

 朴氏は昨年2月の就任時以来、各国首脳に会うたびに慰安婦問題を取り上げては日本を非難する「告げ口外交」を繰り広げた。7月には訪韓した中国の習近平国家主席と一緒に、日本の集団的自衛権行使容認を批判した。

 米国は「信義則違反」と怒り、「日米韓の枠組みに残るか、中国の傘の下に入るか」と韓国政府に突き付けた。側近は慌てたが、朴氏はまったく動じず「中国寄り」の姿勢を続けているという。

 慰安婦問題一本に絞って日本非難を募らせる朴氏を大津波が襲った。

 朝日新聞が、慰安婦問題の嚆矢(こうし=最初)として放った30年以上も前の吉田清治氏の「韓国・済州島で200人の若い朝鮮人女性を狩り出した」発言を虚偽として取り消したのだ。その後、朝日の木村伊量(ただかず)社長はおわびの記者会見まで開いた。

 吉田証言は慰安婦強制連行説の根拠だった。「国=軍に強制的に慰安婦にされたのだから、国家賠償を要求して当然」という主張である。その根拠が一挙に喪失した。韓国政府は「複数の元慰安婦が『強制的に連れて来られた』と証言しているのだから強制性は間違いない」と抗弁するが、第三者の信頼できる証言も証拠もない。

 国連総会から帰国した安倍首相は9月29日、衆参両院での所信表明演説で、日中首脳会談の早期実現への期待を語った。だが、韓国については「関係改善に向け一歩一歩努力を重ねる」だけ。首脳会談の呼びかけは消えていた。

 中韓を同列に遇する慣習が破られた。

 ■長田達治(おさだ・たつじ) ジャーナリスト。1950年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。毎日新聞社入社、政治部副部長、ソウル支局長、学生新聞編集部長、紙面審査委員会委員などを経て、月刊誌編集・発行人、一般社団法人専務理事。著書に『細川政権263日』(行研)、『橋本龍太郎全人像』(共著、同)など。
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