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死期の中国経済、共倒れの韓国経済

blogos 2014年10月27日 13:08 石平(拓殖大学客員教授)

不動産バブル崩壊が囁かれる中国。その次には全国規模の金融危機が発生する。日本経済も影響を受けるが、いちばんダメージを受けるのが韓国経済だろう。すでに起こっている未来だ。

マイナス成長となっている可能性
中国経済はいま、死ぬか生きるかの瀬戸際に立たされている。

それを端的に示しているのは、今年8月20日に中国煤炭工業協会が公表した2つの数字である。今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1.45%減と1.54%減となったという。

李克強首相は地方政府のトップを務めた時代、統計局の上げてきた成長率などの経済数字を信じずに、もっぱらエネルギー消費量や物流量が伸びているかどうかを見て本当の成長率を判断する、という有名なエピソードがある。このような物差しからすれば、今年上半期の中国経済の成長率はけっして政府公表の「7.4%」ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある。中国のエネルギー産業の主力である火力発電を支えているのは石炭であるが、その生産と販売がマイナス成長となっていれば、この国の経済は依然として成長しているとはとても思えないからである。

実際、中国最大の自動車ガラス製造企業・福躍硝子集団のオーナー会長曹徳旺氏は9月11日、香港フェニックステレビの番組において、「中国のGDP(国内総生産)は、いままったく伸びていない」との爆弾発言を行なったことで話題を呼んでいるが、経営者として中国経済の現場で活躍していて、経済問題を見る目の確かさで広く知られる曹氏の発言にはそれなりの重みがある。

そして、今年上半期において全国の工業製品の在庫が12.6%も増えたという当局の公表数字からしても、あるいは同じ今年上半期において全国の百貨店の閉店件数は歴史の最高記録を残したという8月23日付の『中国経営報』の報道記事から見ても、中国経済の凋落ぶりが手に取るようにわかろう。

問題は、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いの中国経済がここまで落ちたのはいったい何故なのか、であるが、その理由はじつに簡単だ。要するにいままでの中国経済の急成長は最初から、大変な無理をした歪んだかたちでの成長だったからである。

いままで、個人消費率が40%前後で徘徊して国内の消費が徹底的に不足しているなか、中国政府はずっと、国内の固定資産投資の継続的拡大と対外輸出の継続的拡大という「2台の馬車」を牽引力として高度成長を引っ張ってきた。つまり、本来なら経済の成長を支える国民の消費拡大がずっと低迷しているなかで、中国は結局、国内の不動産投資や公共事業投資などからなる「ハコモノづくり」の規模拡大と、外国人の消費拡大に貢献する輸出の拡大を頼りにして高度成長を何とか維持してきた。2010年までの約30年間にわたって、経済全体の成長率は10%前後であったのに対し、国内の固定資産投資と対外輸出が毎年つねに25%以上の高い伸び率を維持してきていることはこの辺の事情をよく示している。

問題は、長年にわたって固定資産投資の高い伸び率をいったいどうやって維持するのかであるが、中国政府の一貫したやり方は結局、お札をパンパンと刷らせて市場に大量に回していくような手法、すなわち財政出動と金融緩和という二つの政策手段の濫用となるのである。つまり、政府がお金を出して莫大な財政出動を行なって公共事業投資を継続的にやっていけば景気がいつでも良くなるし、金融緩和をやってお金を市場に大量に流通させれば、民間の不動産投資や企業の設備投資が盛んになって高い成長率がつねに維持できるわけである。

しかし、このような安易な政策手段を濫用しすぎると当然、深刻な副作用が起きてくる。金融緩和と財政出動でお札が大量に放出された結果、市場に流通している貨幣の量が溢れすぎるという「過剰流動性」の現象が生じてきて、そのたどり着くところはすなわち、貨幣の価値が落ちてモノの価値が上がるというインフレの発生である。実際、2009年の年末から、中国で大変なインフレが発生して、食品を中心にして物価が毎月十数%上がっていくという深刻な状況となっていた。

ここまでのインフレとなり、大変な危機感を覚えたのもやはり当の中国政府である。というのも、貧富の格差が拡大して国内でつねに億人単位の都市部貧困層が存在しているなか、食品を中心とした深刻なインフレの継続は、いずれ「天下大乱」ともいうべきような社会的大動乱を誘発する恐れがあるからである。

それを避けるために、中国政府は結局2011年に入ってからは一転して、インフレ退治のための厳しい金融引き締め政策を実施していたが、その結果、昔の金融緩和によって支えられていた国内の固定資産投資はその伸び率が徐々に鈍化してきて、経済成長の足を引っ張ることとなった。

その一方、インフレが継続しているなかで、中国の対外輸出も大きな打撃を受けることになった。物価の上昇に伴って人件費が大幅に上がってくると、「中国製」は昔のように安くつくれなくなって安く売れなくなったからである。中国の対外輸出の競争力が人件費のより安い東南アジア諸国に奪われて、輸出の伸び率は急速に落ちていった。たとえば今年1月から8月までの期間中、中国の対外輸出の伸び率は2.1%となっていたから、昔の「25%成長」とは雲泥の差がある。

つまり、それまでに中国の高度成長を引っ張ってきた、固定資産投資の拡大と輸出の拡大という「2台の馬車」は2台ともに力を失って失速した。その結果、中国経済全体は、まさに冒頭に記述したような、マイナス成長となっているか、なっていないかの瀬戸際に立たされているのである。いってみれば、輸出と投資の継続的拡大という「2台の馬車」で高度成長を引っ張っていくいままでの成長戦略はもはや限界であり、このようなかたちでの高度成長はすでに終わってしまった、ということである。

不動産価格引き下げの「悪性競争」
しかし中国経済の抱える問題は「成長の終焉」だけではなさそうである。成長率の減速と同時進行的に、じつは今年の春先あたりから、以前から囁かれていた不動産バブルの崩壊はにわかに現実味を帯びてきているのである。

まず目に見られたのは、全国の不動産市場の低迷である。中国では、毎年5月1日のメーデーを中心に数日間の休みがあって、例年では不動産がよく売れる「花の五一楼市(不動産市場)」とされてきたが、今年のそれは惨憺たるものであった。中原地産研究センターが観察している全国54の大中都市で、「五一楼市」で売れた不動産件数は9887件で、去年の同じ時期と比べると32.5%減となったという。そのなかで、たとえば首都の北京の場合、期間中の不動産販売件数は前年同期比では約8割も減った。地方都市の保定に至ると、期間中の不動産契約件数はわずか10件、まさに「不動産市場の5月厳冬」と呼ばれる大不況の到来である。

不動産が売れなくなると、付いてくるのは価格の下落だ。全国における不動産価格下落の傾向は今年の3月からすでに始まっているが、5月後半ではそれがいっそう加速化している。中国経済新聞網が5月30日、重慶市最大の不動産開発プロジェクトの「恒大山水城」は3割以上値下げして売り出されたと報じれば、同じ日に放送された中央テレビ局の「経済三〇分」という人気番組は、杭州市にある分譲物件が予定価格の3分の1程度を値下げして売り捌いた事案を取り上げた。そして『毎日経済新聞』の報じたところによれば、「値下げラッシュ」が南方の大都会の広州にも広がり、ある業者が史上最高の価格で取得した土地でつくった「亜細運城」という大型不動産物件は3割程度の値下げを余儀なくされたという。

5月31日に中国指数研究院が発表した全国100都市での定期調査の結果、この100都市の不動産平均価格が5月において前月比で0.32%の下落となったことがわかった。全国で広がる価格下落の実情を見ると、この「0.32%」という下落幅がはたして真実を十分に反映しているかどうかはかなり疑問だが、少なくとも、全国の不動産平均価格は2年ぶりに確実に下落していることがこの調査結果からわかっている。

そして今年の夏になると、不動産価格下落の傾向はよりいっそう鮮明になっている。8月1日に中国指数研究院が発表した数字によれば、7月の全国100都市の新築住宅販売価格が6月よりは0.81%下落し、4月、5月以来の連続4カ月の下落となっているが、9月19日に中国国家統計局が公表した数字では、8月になると、全国主な都市の70都市のうち、不動産価格が下落したのは68都市であったという。

そのなかで、たとえば8月25日に新華通信社が配信した記事によると、全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの「悪性競争」はすでに始まったという。開発業者が競ってなりふり構わずの価格競争に走っていれば、それはすなわち不動産価格総崩れの第一歩であることは誰でも知っている。8月23日、山東省済南市にある「恒生望山」という名の分譲物件が半月内に25%程度の値下げを断行したことで、値下げ以前の購買者が抗議デモをした事件が起きたが、9月3日には、広東省珠海市のある分譲物件の値段が一夜にして4分の1も急落したとのニュースがあった。そして9月15日、大都会の北京市では一部の不動産物件で30%以上の値下げが断行されたことが報じられている。その一連の動きが、「総崩れ」はすでに目の前に迫ってきていることの前兆であろう。

こうして見ると、9月3日、新華指数公司首席経済学者の金岩石氏が「中国9割の都会で不動産バブルが崩壊する」と警告したのも決して根拠のないことではない。中国における史上最大規模の不動産バブルの崩壊は、いよいよ目の前の現実となってくるのであろう。

5兆元規模の信託投資が返ってくるか
問題は、不動産バブルが崩壊したあとに中国経済がどうなるのかであるが、現在、全国の不動産投資のGDPに対する貢献度が16%にも達しているから、バブル崩壊に伴う不動産投資の激減は当然、GDPの大いなる損失、すなわち経済成長のさらなる減速に繋がるにちがいない。しかも、バブル崩壊のなかで多くの富裕層・中産階級が財産を失った結果、成長を支える内需はますます冷え込み、経済の凋落によりいっそうの拍車をかけることとなろう。

しかし問題の深刻さは、それだけのものにはとどまらないのである。不動産バブルの崩壊に伴って、その次にやって来るのはすなわち全国規模の金融危機の発生なのである。

今年3月26日、中国新華通信社傘下の『経済参考報』は、中国の金融事情に関する記事の1つを掲載した。金融市場で大きなシェアを占める「信託商品」は、今年から来年にかけて返済期のピークに達し、約5兆元(約82兆円)程度の貸し出しが返済期限を迎えることになるという。

ここでいう「信託商品」とは、正規の金融機関以外の信託会社が個人から資金を預かって企業や開発プロジェクトに投資するものであるが、高い利回りと引き換えに元金の保証はまったくないリスクの高い金融商品だ。中国の悪名高いシャドーバンキング(影の銀行)の中核的存在はまさにこれである。

問題は、返済期を迎えるこの5兆元規模の信託投資がちゃんと返ってくるかどうかである。申銀万国証券研究所という国内大手研究機関が出した数字では、全国の信託投資の約52%が不動産開発業に投じられているという。じつはそれこそが、信託投資自体だけでなく、中国経済全体にとっての致命傷となる問題なのである。

前述において克明に記したように、いまの中国で、信託投資の半分以上が注ぎ込まれている不動産開発業自体は、まさに風前の灯火となっているからである。バブルが崩壊して多くの不動産開発業者が倒産に追い込まれたり深刻な資金難に陥ったりすると、信託会社が彼らに貸し出している超大規模の信託投資が踏み倒されるのは必至のことである。9月19日付の『中国経営報』の関連記事によると、中国河北省の邯鄲市ではいま、「金世紀地産」などの多数の不動産開発社の経営者たちが、約100億元(約1800億円)以上の「信託投資」負債を踏み倒して続々と夜逃げしていったという。邯鄲で起きているようなことは今後、全国的に広がっていくこととなろう。

前述のように、信託投資の不動産業への貸し出しはその融資総額の約半分にも達しているから、今後において広がる不動産開発企業の破産あるいは債務不履行は、そのまま信託投資の破綻を意味するものである。そしてそれはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招くこととなろう。

しかし融資規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当する「影の銀行」が破綻でもすれば、経済全体の破綻はもはや避けられない。いまでは、中国経済はただでさえ失速している最中であるが、今後において、不動産バブルの崩壊とそれに伴う金融の破綻という2つの致命的な追い打ちをいっせいにかけられると、中国経済は確実に「死期」を迎えることとなろう。

じつは今年4月あたりから、中国政府は一部銀行の預金準備率引き下げや、鉄道・公共住宅建設プロジェクト、地方政府による不動産規制緩和など、あの手この手を使って破綻しかけている経済を何とか救おうとしていた。だが全体の趨勢から見れば、政府の必死の努力はほとんど無駄に終わってしまい、死に体の中国経済に妙薬なしということである。

肝心の命綱を失った韓国経済
中国経済がこういう状況となると、中国に進出している日本企業と日本経済がかなりの影響を受けることになるだろうが、おそらく日本以上に深刻な影響を受けて、中国経済の破綻と共倒れする危険性のもっとも高い国はやはり韓国であろう。

今年の4月3日、韓国銀行は、昨年の韓国経済の対外依存度が105%となって3年連続100%を超えていると発表して世界を唖然とさせたが、じつは韓国最大の輸出国はまさに中国であり、対中輸出が毎年、韓国の対外輸出全体の25%以上を占めていることはよく知られている。ということは要するに、韓国経済の運命は完全に対中国の輸出によって左右されており、中国の景気のよし悪しは韓国経済の生死を決める最大の要素となっているのである。しかしいま、中国経済の高度成長は終焉してしまい、今後はバブルの崩壊と金融の破綻によって破滅への道を辿ることになるのは前述のとおりであるが、そのことの意味するところは要するに、韓国経済はその肝心の命綱を失ってしまい、中国経済の破綻の道連れになることであろう。

実際、中国の景気が徹底的に悪化して外国からの輸入が急速に冷え込んでいるなかで、韓国の対中国輸出はすでに低迷し始めている。今年9月2日、韓国の『朝鮮日報』は、「韓国の対中輸出が4カ月連続で前年割れした」と報じて韓国経済の先行きに不安を示したが、記事によると、韓国産業通商資源部の発表した数字では、韓国の8月の対中輸出は、前年同月比3.8%減少し、今年5月から4カ月連続で、前年同月を下回ったという。

つまり、韓国の対中輸出が減り始めたのは今年5月からのことであるが、じつはそれ以来、韓国経済は直ちに多大な影響を受けているようである。9月4日に韓国銀行が発表した第2四半期(4―6月)の国民所得統計では、名目でGDPが前期比0.4%減だったようで、金融危機当時の2008年第4四半期(10―12月)に記録した2.2%減以来、5年半ぶりのマイナスとなっているのである。おそらく今後、不動産バブルの崩壊と金融の破綻に伴って中国経済が破綻という名の「地獄」へ落ちていくと、韓国経済も道連れにされるようなかたちで、底なしの奈落へと転落していくのであろう。

中国にしても韓国にしても、本当は彼らにとって、いまや無意味な反日に熱を上げているどころではないのである

プロフィール
石 平(せき・へい)拓殖大学客員教授
1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。1988年来日、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。著書『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。
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