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中国、失敗した産業構造転換「外資企業頼み」の赤っ恥かく

勝又壽良 2014-11-17 08:45:05

外資企業よウエルカム 韓・台より60年遅れ

考えれば考えるほど、中国とは不思議な国である。自国の「メンツ」を最大限に重んじるが、その裏では恥も外聞もなく他国の力に依存する。「他人の褌で相撲を取る」狡猾さを併せ持っているのだ。あたかも、実力があるかのように装う国である。外交に長けた国なのだ。それだけに、警戒も必要である。日本が気を許し技術的支援をしている間に、力を蓄えてやがて牙を剥いてくる。これまでの中国のやり口が、これを立証している。

習近平氏が政権を担って最初に打った手は、産業構造の高度化政策であった。低付加価値産業から高付加価値産業へ転換させる。こう宣言したものの、中国にはそれを実現する肝心の技術がない。依然として、先進国依存型のままである。とりわけ、日本技術がねらい目である。だが、日中の政治対立でそれも頓挫している。今回の日中首脳会談は、日本技術欲しさが動機であることは間違いない。日米企業の対中直接投資は減少している。中国にとって、背に腹は代えられない局面である。

日中首脳会談決定(11月7日)とほぼ同時に、注目すべき動きが出てきた。中国が、外資企業の対中投資の制限を大幅に緩和するからだ。余りにもタイミングが合いすぎる。日中が政治的に和解姿勢を取る過程で、日本企業の対中投資を増やさせ、日本の「虎の子」技術を手に入れようという算段であろう。新幹線技術の中国への供与が、日本を不利な事態に追い込んでいる例もある。目先の利益に目が眩んで、日本企業は貴重な技術を何らの保全保証もないまま、渡してはならないのだ。

それにも関わらず、11月10日の日中首脳会談に見せた習氏の態度は、安倍首相に対してきわめて礼を欠いた仏頂面で対応した。中国国内向けのポーズとも言われるが、日本に対する態度として、はなはだ穏当を欠いた小児的な振る舞いである。英紙『フィナンシャルタイムズ』(11月12日付け)からも、「朝貢的姿勢」と皮肉られているのだ。

外資企業よウエルカム
『人民網』(11月7日付け)は、次のように伝えた。

①「外国企業に対する投資制限が大幅に緩和される。中国国家発展改革委員会(発改委)は11月4日、『外商投資産業指導目録』の修正案を公表し、社会からの意見を求めた。今回の改定の狙いは、経済グローバル化という新たな状況に合わせ、積極的で主体的な開放の拡大、外資系企業の管理方法の転換、経済構造の調整と最適化、透明性の一層の向上を原則とする。具体的には、制限する項目を大幅に減らし、外資系企業の株式保有比率に関する制限を緩和し、製造業とサービス業の対外開放を重点的に推進して、国内外の各種要素の秩序をもった自由な流動の促進にプラスになるようにする。開放によって改革を促進し、国際的な経済協力や経済競争に参与したりこれを誘導したりする新たな強みの育成を加速させることにある」。

中国の公的な文書には、このように美辞麗句が並んでいる。一言で言えば、中国経済の近代化促進のために、外資の技術を積極的に導入するという「宣言」である。ただ、最終決定したわけではない。原案を告知して経済界の意見を聞いて訂正する姿勢である。ポイントは、「製造業とサービス業の対外開放を重点的に推進する」というのだ。

一見して、随分と物わかりが良い姿勢である。だが、つい二、三ヶ月前まで外資系企業を、「独占禁止法違反」の廉(かど)で摘発し、巨額な罰金を課している。こういう恣意的な政策と、今回発表された「外商投資産業指導目録」修正リストは、そぐわない面が多々ある。前記の外資系企業への摘発は、米英企業からも不評を買っており、米英企業の本国回帰の理由になっている。私が、一貫して指摘してきたように、中国の行政は恣意的である。その場限りのドタバタ劇が多いのだ。今回も、主要国外資の対中投資が減少している焦りが生み出した面もかなりあろう。

②「改訂後のリストでは、外資系企業が現代型農業、ハイテク技術、先進的製造業、省エネ・環境保全、新エネルギー、現代型サービス業などの分野に投資することが奨励され、研究開発段階への投資が奨励され、資本の導入、技術の導入、知識の導入が有機的に結びつくことが推進されている。また、外資系企業の株式保有比率に関する規定は原則としてすべてリストに明記され、投資が許可された項目については外資系企業に対する株式保有比率の制限が撤廃された」。

中国が導入しようとしている外資は、「現代型農業、ハイテク技術、先進的製造業、省エネ・環境保全、新エネルギー、現代型サービス業など」多方面に及んでいる。これを見ると、中国は現在、これといっためぼしい技術・ノウハウが、何一つないことを証明している。
私が常に言ってきたように、中国は「イノヴェーション能力」ゼロの国である。これほど基盤技術を欠いている国も珍しいのだ。存在するものは、「巨大人口・広大な国土・長い歴史」だけである。ついでに言えば、「大言壮語」(ほら吹き)もトレードマークである。これがどう間違えたのか、中国は世界一の経済体になれる潜在力を持っている。こう誤解させており、自惚れを強めさているのだ。実に困った現象である。それ故、他国の技術を利用することに後ろめたさも感じず、「当然である」という錯覚を生んでいる。

上記の「導入技術一覧表」を見ると、どこの国を導入候補国にしているか分かるはずである。ズバリ、日本が相手国である。「現代型農業」も日本にある。中国は土壌・水質・大気がすべて汚染され尽くしている。耕地の4割は汚染されているというデータがあるほどだ。こうなると、従来型農業では乗り切れない。ハイテク技術を活用して、小規模面積で高収穫を実現できる先進型農業技術を日本から導入するほかない。米国のような大規模農法は中国に不向きである。

ハイテク技術、先進的製造業、省エネ・環境保全、新エネルギー、現代型サービス業などは、すべて日本の既存技術で間に合うものばかりである。現代型サービス業では、ITを活用し宅配ノウハウを組み合わせれば、ほとんど日本技術で問題は解決する。こうした「宝の山」である日本に対して、中国が融和策に出てくるのは当然である。私は、この点をこれまで繰り返し指摘してきた。

中国は、日本技術が垂涎の的である。日中首脳会談を決めるまでに、日本へいろいろ条件をつけたことは、自らを高く売りつける外交術である。日本は、中国を有り難がる必要はまったくない。逆なのだ。日本は、中国が国力をつけることの反作用(日本侵攻)を計算に入れるべきである。

中国社会の伝統的な思考では、経済力をつけた側が政治的に上位に立って当然としている。日本が中国を技術的に援助しても、向こうは感謝もなければ恩に着ることもない。1978年の改革・解放政策後の対日政策を見れば、一目瞭然である。中国を買いかぶっては危険である。日本人とは異質の価値観の民族なのだ。「勝てば官軍」という武力信奉の国家である。精神性を尊ぶという面は絶無である。

③「改訂によって取り消された制限項目には、鉄鋼、エチレン、石油精製、製紙、石炭化学工業設備、自動車電子部品、重機、送変電設備、名酒の白酒、支線鉄道、地下鉄、国際海上輸送、電子商取引、金融会社、保険会社、チェーン店、土地の総合的開発、輸出入商品の検査などが含まれる。リストでは、外資系企業の株式資本出資に関する制限も緩和しており、『合弁、協力』でなければならないとする項目が43から11に減り、『中国側が株式を保有しなければならない』とする項目も44から32に減らされた。リストの中には、武器・弾薬製造、象牙彫刻、航空交通管制など外資系企業の投資が禁止される36項目が含まれている」。

話がここまで具体的になると、日本企業のなかには触手を伸ばしてみたい。そう考える企業も出てくるであろう。よく考えれば分かるように、中国から撤退することはきわめて困難である。丸裸にされる覚悟でもしない限り撤退できない。「行きはよいよい、帰りは怖い」のだ。中国は、外資から経営ノウハウを取得すれば、後はそれを民族資本が乗っ取ることは簡単である。今後、中国の潜在成長率は著しく低下する。現在の年率7%台成長を前提にソロバンを弾くと、大変な間違いを犯すはずだ。間もなく5%台を切ってくる。国内資本が、日系企業を虎視眈々と狙ってくる。それは火を見るよりも明らかである。

そんなリスクを背負うよりも、民族特性がはるかに温和で日本人と親和性の高いASEAN(東南アジア諸国連合)でのビジネス展開が安全である。日本は、ASEANを第二の「生産基地」として育成すべきである。さらに、TPP(環太平洋経済連携協定)が締結されれば、ここで新たなビジネス展開が実現する。人口13億人の中国市場は、人口高齢化によってしだいに魅力を失っていく。ASEANは、人口動態的にも発展余地がまだある。そこに照準を合わせたほうが、ビジネスは有望であるはず。もはや中国の時代は去りつつある。この事実を認識すべきであろう。

中国経済は、生産年齢人口比率の低下とともに、いかに生産性を上げるか。それが最大の課題である。本来ならば、日本と政治的な対立をしている時間的なゆとりはなかった。この問題をさらに考えてみたい。

韓・台より60年遅れ
『ブルームバーグ』(11月7日付け)は、次のように伝えている。

④「中国では参入規制や国有企業重視の政策が、競争を妨げている金融や通信といった産業で、依然、先進国の企業に大きく後れを取っているのが現状だ。トロント大学の朱暁冬教授(経済学)は、2012年に公表した論文において、中国の生産性は米国の水準の約13%に過ぎないと指摘した。これに対し、1950年当時の日本の生産性は米国のそれの56%、65年時点では韓国が43%、台湾は50%となった」。

前述の通り、中国は新たな外資企業の進出枠を拡大する方針を固めた。こうした部分的な制限策の撤廃が、果たして中国の生産性を引き上げるかと言えば、そういう安易な期待はできない。社会主義市場経済システムのなかでは、国有企業重視の政策が相変わらず取られている。習近平政権は、中国経済の根幹には国有企業を据えると宣言している。これでは事実上、経済改革は不可能である。中国政府は、その限界を理解していないのだ。先進技術を導入すれば、それだけで生産性が向上する。そう単純に考えている。

トロント大学の朱暁冬教授は2012年発表の論文で、中国の生産性が米国の約13%に過ぎないという。1950年当時、日本の生産性は米国の56%、65年時点では韓国が43%、台湾は50%となっていたという。これから見ると、中国の対米国との生産性レベルは極端に低いことが分かる。ここでぜひ強調したいのは、韓国や台湾が戦前の日本植民地であった点である。日本から近代的な西洋式教育を導入されたのだ。これが、工業化に当たって大きな力を発揮したのである。元・台湾総統の李登輝氏は、再三にわたり日本から受けた西洋式教育が、工業化促進に役立ったとしている。

その点で、中国は昔ながらの儒教教育で凝り固まっていた。理数科教育は無視されていたのだ。私が繰り返し主張しているように、中国では「5S」(整理・整頓・清潔・清掃・躾け)という基本がデタラメである。これは、理数科教育と一脈通じている。理数科は物事を秩序立てて考えなければ解答は出てこない。製造現場では、「5S」を守らなければ工業製品の均一な品質は維持できないし、高い歩留まり率の維持も困難である。

中国人は行列を守れない民族である。われ先に群がる無秩序は、整理・整頓といった秩序概念からは大きく外れているのだ。民族特性と言ってしまえばその通りだが、市民社会を経験していない結果、個人間で互いに助け合う連帯概念が育たなかった。その点が、「5S」の未発達理由であろう。日本も市民社会の経験はないが、互助精神は育ってきた。天災多発という地理的条件と武士道精神が、それを生み出したと思われる。要するに、中国は独特な無秩序社会であることが、低い生産性となって現れている。台湾・韓国は同じ儒教国家でも、日本の植民地であったプラス面が残っているのだ。

⑤「中国はこれらの数字さえも達成できず、大きく下回っている。日本の生産性は75年までに83%に上昇し、90年までには韓国は63%、台湾は80%に達した。中国がこれまでの成長軌道をあと20年続けたとしても、生産性は米国の水準の40%にしかならないと朱教授は推計する。米民間調査機関コンファレンス・ボードの北京在勤エコノミスト、アンドルー・ポルク氏は、生産性が最適に改善されなければ中国の平均年間成長率は2015~19年に5.5%、20~25年に3.9%に低下すると予想している」。

中国は過去の成長軌道をあと20年続けても(注:2032年)、生産性は米国水準に対して40%に止まると推計されている。この40%レベルは、1965年当時に韓国が実現した43%、同台湾の50%すら下回っていることになる。つまり、中国は韓国や台湾から見て60年以上も工業化で遅れた国家であるとの烙印を押されるのだ。この体たらくで、米国に対抗して世界覇権に挑戦したい。こうした夢物語を描いている中国とは、摩訶不思議な国家と言うほかない。私の中国批判には、こうした経済的な裏付けを持っているのだ。

コンファレンス・ボードは、中国経済について厳しい見通しを示している。この問題は、私がこのブログでも取り上げた。生産性が改善されない限り、2015~19年に5.5%、20~25年に3.9%に低下するという現実が迫っている。ここまで来たら、中国共産党の正統性が揺らぐであろう。

習近平氏の「中華民族の夢」は「中華民族の悪夢」に変わる。日本から最新技術を導入しなければ、中国経済が保たないところまで追い込まれている。さらに、不動産バブル崩壊の津波が加わる。習近平氏が、「最後の皇帝」になる危険性を抱えていることは間違いない。それにしても、助けて貰わなければならない日本に対して、習氏のあの傍若無人な態度は何であるのか。改めて礼儀を弁えない民族であることを実感するのだ
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