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中国、日中合意文書の背景「江沢民派の対日開戦策謀」封じ

勝又壽良 2014-11-20 04:48

尖閣での衝突防止に先手打つ 日中合意で中国軍暴走を防止

「事実は小説よりも奇なり」、である。中韓「反日同盟」の契りを反故にしてまで、日本との首脳会談に臨んだ裏には、一刻も猶予ならぬ国内事情があった。今回の日中合意文書が作成された背景には、中国の習近平VS江沢民一派の権力闘争が大きな蔭を落としている。この視点から眺めると、突然のミステリアスな動きは整合的に読み解けるのである。

11月10日、北京での安倍首相と習国家主席による冒頭のテレビ映像は、日本人にとっては、なんとも不愉快な場面である。習氏は、安倍氏に対し遠来の客を迎える態度でなかった。やむなく、配下の人間に会ってやる。そんな不遜な態度を示していた。その裏には、食うか食われるか。したたかな国内権力闘争があった。にこやかな顔はできなかったのだ。

尖閣での衝突防止に先手打つ
『大紀元』(11月10日付け)は、次のように伝えた。

① 「日中両国政府は11月7日付の合意文書で、東シナ海の領有権問題に異なる見解を持っていると確認し、『不測の事態を回避するため』、危機管理体制を構築することに同意した。中国共産党政権の最高指導部が内部分裂しているのは周知の事実である。江沢民派は習近平陣営の『腐敗撲滅運動』を阻止するため、日中の対立を激化させることで、再起のチャンスを狙っている。すなわち、習近平政権が日中両国衝突の過程で不利な状況に陥ると、江派は『漁夫の利』で習氏を退任させて政権の主導権を奪還するという構図だ。以前、江派はすでに一度、このような布陣をしいた」。

情報源の「大紀元」とは、中国で江沢民氏によって弾圧され過酷な取締を受けている法輪功の運営するサイトである。法輪功は、中国の伝統的な養生法である気功集団であるが、これに仏教・道教の教えを取り入れた宗教集団的な側面もある。1999年、中国政府は江沢民主席による強い指示で法輪功を非合法化した。それ以降、信者は監禁され3000人以上が命を落とす悲惨な弾圧が続いている。特に、刑死した人間の内臓をえぐり取って売買し国際的な問題になっている。

海外では広く、中国政府による法輪功弾圧事件が報道されている。江沢民氏には、海外で国際逮捕状が出ているのだ。アルゼンチン連邦裁判所のラマードリッド裁判官は、2009年12月、元総書記・江沢民と最高指導部の元高官・羅幹を、法輪功への集団弾圧の主導者として、ジェノサイド(集団虐殺罪)と拷問の罪で刑事訴訟手続を行い、国際逮捕状の発行を裁定した。

中国共産党内部にも法輪功の「隠れ信者」が多くいるため、ここから共産党内部の腐敗や権力闘争など生々しい情報が提供されている。それだけに、一般には流れないような貴重な情報が活字となっている。ここに出てきた記事は、日本国内での報道とかなり異なっている。今回の「日中合意書」は、江沢民一派の政権転覆の動きを阻止する狙いだった、としているからだ。

これまで中国側は、「靖国参拝」「尖閣諸島」の問題について、日本が明確な態度を示さない限り日中首脳会談には応じないとしてきた。それが、「合意文章」ではいずれも曖昧になっている。それでも首脳会談を開催した理由は何か。また、日中首脳会談前に大急ぎで「合意文書」発表した理由な何か。こういう二つの予想外の動きを見せた裏には、中国国内で寸刻を争う事態が発生していたのであろう。外交上の合意文書は通常、会談終了後に発表されるもの。今回は、順序が逆になっている。「?」と感じなければならない。

今月6日、元外務次官の谷内正太郎国家安全保障局長らは訪中して、日中合意文書の案文を協議した。「最終合意に至ったのは日付が変わった午前2時ごろ。中国側の交渉責任者の楊潔篪国務委員は笑みを浮かべて谷内氏に握手を求めた。中国側は、合意文書の発表を急ぐよう迫ったが、日本側は谷内氏が帰国して首相に報告してからにすると伝えた」(『日本経済新聞』11月11日付け)。これを読むと、中国がかなり急いでいた様子が分かるのだ。この間の事情は、次のように説明されている。

「安倍首相は、日中首脳会談の実現に向け周到に準備を進めてきた。中国側は靖国神社参拝や尖閣諸島の領有権をめぐり首脳会談に前提条件を付してきた。中国側はこうして、一方的に前提条件を提示し、交渉の主導権を握ろうとした。最終的な局面を迎えると、日本が強く出る場面もあった。日本政府高官によると、日中の合意文書の作成過程で中国側は首相が靖国神社に参拝しないと盛り込むことに固執した。これに対し、日本側が首脳会談の見送りも構わないとの意向を伝えたところ、中国側が折れてきたという。習氏には国際会議のホスト国として、首脳会談に応じなければ国際社会からそしりは免れないという事情があったためだ」(『産経新聞』11月11日付け)。

中国は、日本へ要求していた「二要件」を明確にしないまま、早急な「合意文章」発表にこだわった。APECのホスト国として、メンツを立てたいという動機もあろう。だが、頑として日中首脳会談を開かず、中国の主張の正しさをアッピールする手もあったはずである。あれだけ、世界中に向かって日本批判を続けてきた中国である。21ヶ国の首脳が集まる会議である。中国の主張が正しいと考えるならば、こういう方法もあったのだ。それをあっさり方向転換した。しかも、日本の主張をほぼ飲んだ形での「合意文章」を、首脳会議実施前に発表した。中国には、止むにやまれない事情があったと見るべきである。これが、外交の舞台裏を読む基本的な視角である。習近平氏を急がせた事情とは、江沢民一派が日中対立を煽って戦争させる危険性が迫っていた。これが、『大紀元』の情報である。

② 「2012年9月に中国各地で勃発した大規模な反日デモ。多くの日系企業が襲撃され甚大な被害を受けた。当時、デモ現場では、中国共産党政権の初期最高指導者である故・毛沢東氏や江派の若手後継者で当時取り調べ中の薄煕来を擁護するプラカードが多く掲げられており、公安・警察当局がデモに直接関与したことを示す証拠も数多くある。『大紀元時報』が入手した情報では、元重慶市公安局トップの王立軍の米国領事館亡命未遂事件により、次期習近平政権を転覆させようとした江派の政変計画が発覚し、薄煕来・元重慶市トップは失脚。江派の重鎮である周永康・元中央政治局常務委員も危機的状況に陥った」。

江沢民一派は、最初から習近平氏の失脚を狙っていた。薄煕来・元重慶市トップが、習氏に代わって、途中から国家主席の座に着く構想を練っていた。この事実は、すでに世界中に知れ渡っている。江氏が、ここまで薄煕来を国家主席にさせたかった理由は、法輪功弾圧事件と膨大な収賄事件が暴かれることを防ぎたかったのである。現在に至るまで、習近平氏の暗殺事件は何回も起こっているという。江沢民一派が、執拗なまでに習氏の抹殺を狙っているがゆえに、江沢民一派を標的にした「反腐敗闘争」も苛烈になっている。すでに今年に入り、30人余が汚職嫌疑で調べられ、自殺に追いやられたという。いずれも、『大紀元』が報じている。

③ 「江派は上記の反日デモを引き起こし、内乱を誘発することで、習近平次期政権が発足する2012年の共産党第18回全国代表大会(十八大)の開催を先送りさせようとした。その目的は、江派が当時まだ握っていた権力をキープすると同時に、無期懲役の実刑判決を受けていない薄を助けるためだった。現在、習近平陣営と江派は水と油のような関係であり、表向きの共産党『統一』『団結』はもはや口先だけで、内部の根深い分裂は明らかである。習氏を倒すことで政権の主導権を握ろうとする江派は、暗殺、政変、各種重大襲撃事件を計画、実行してきており、他国との戦争もその目的達成のためなら、選択肢の一つとなっている」。

このパラグラフを読むと、現在の中国で起こっている権力闘争は、手段を選ばない清国時代に逆戻りしたような事態だ。「他国との戦争も、政権転覆の目的達成のためなら、選択肢の一つとなっている」とは、驚くほかない。中国は、人権意識はゼロ同然の社会である。年間3000人以上が死刑に処せられている。このように、人間の生命はきわめて軽んじられているのだ。こういった社会では戦争が、簡単に始められるのである。民主主義国でない恐ろしさはここにある。

④ 「習氏が今回日本との関係を安定化させ、日中合意文書の発表に至ったことは、対日戦争を発動しようとした江派の夢を打ち砕いた。習氏は外交事務を片づけたことで、新な粛清を始める可能性が高い。江派がいま一番恐れているのはこのことで、その外交分野における勢力基盤も近いうちに一掃されるであろう」。

日中首脳会談では、「東シナ海での不測の事態に備えた海上連絡メカニズムの運用開始へ協議を加速」させることで一致した。これは、人民解放軍が尖閣諸島周辺で軍事行動発動の危険性を大幅に減少させる。これまで中国は、日本からの「不測の事態に備えた海上連絡メカニズム」構築提案を、真面目に取り上げずにきた。私はこれについて、中国が日本へ奇襲攻撃を仕掛ける予定だから、あえてこの緊急事態連絡構想に乗らないのであろう。こう判断してきた。緊急事態の連絡システムがあれば、偶発的な軍事衝突は双方の国家によって抑圧できる。それを拒否する中国は、奇襲攻撃の意図を持っていると見られたのだ。

私は、中国が周辺国に戦争を仕掛ければ、必ず国内政治で混乱が起こる。このように主張し続けてきた。専制政治体制では簡単に戦争を始めるが、それが国内の政治的な不満に火をつけて、民衆が立ち上がり専制政治は倒される。第一次世界大戦後、参戦したドイツ・オーストリア・ロシアの帝政はすべて崩壊した。この実例をもっても分かるように、中国が日本に戦争を始めれば、習近平政権は民衆によって倒されるであろう。江沢民一派はこれを利用しようとして、人民解放軍を煽ってきたに違いない。海上自衛艦に向けてミサイル発射装置をロックインした。この危険な行動を許した背後に、江沢民一派が黒い野望をたぎらせていたとは恐ろしい話だ。

日中合意で中国軍暴走を防止
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月8日付け)は、次のコラム(筆者はラッセル・リー・モーゼス北京中国研究センター主任教授)を掲載した。

⑤ 「日中両国は11月7日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて釣魚島(日本名・尖閣諸島)を含めた幅広い分野に及ぶ対話の再開で合意した。この意表を突くニュースは、アジア太平洋地域の外交がまだ機能していることを示している。ほぼ全ての関係者がこの展開を喜んでいると思われるが、注目すべき例外者がいる。中国人民解放軍だ。東・南シナ海上でここ2年間に起きている領有権争いの最大の受益者は中国軍だ。中国の海・空両軍は日本やその他周辺各国との対立で前衛を担ってきた。彼らの功績を伝える(中国語の)報道によって、人民解放軍は予算支出の増加や軍が同地域での外交協議に不可欠な存在だとの主張を十分正当化できた」。

戦前の日本陸軍は、勝手に満州事変を起こして戦線拡大をさせ、ついには太平洋戦争に飛び込んで自滅した。軍部とは、人民解放軍を含めてこうした軍拡を好む体質である。自らの軍功を挙げるには戦争をする以外に方法がない。人民解放軍は、尖閣諸島での軍事的な危機感を煽り立てる行動に出た裏には、江沢民一派の野望があった。日中を戦わせて、国内に政治的な不満を煽る。その責任を迫って、習近平氏を辞任に追い込む。こう指摘しているのだ。軍部独走という視点から見ると、確率はきわめて高いと言える。

⑥ 「今回の外交的取り組みが勢いに乗れば、人民解放軍は影響力を失うことになる。しかも、上級幹部の汚職を防止できなかったとして厳しい批判にさらされているこの時期である。習近平国家主席は11月6日、人民解放軍の会計検査署の所属を総後勤部から習氏率いる中央軍事委員会の直下に移すと発表した。この1週間前、習氏は中央軍事委員会の主要会議に出席。司令官らの前で、共産党は中国軍に対して『絶対的指導力』を保持していると強調した上、軍は『腐敗を罰し、より厳しい規律を保つよう』さらなる措置を講じる必要があると述べた。国営メディアも軍を厳しく批判している。階級特有の汚職を非難し、腐敗疑惑が国家のイメージを損なったと指摘した。軍の主要機関誌である解放軍報さえも『軍関係者内には腐敗をはびこらせやすい不健全な雰囲気がある』と認めた」。

人民解放軍は、江沢民一派が長いこと支配してきた。江氏が国家主席に就任した当時、彼は軍歴がないために軍部の歓心を惹くべく、賄賂などを使ったと言われている。これが、人民解放軍の規律を歪めて、賄賂の巣窟化とさせたのであろう。江沢民一派が、軍部を使って習氏の暗殺などを仕掛けていることはあり得る話だ。こうした点を頭に入れて、このパラグラフを読むと、実に理解しやすいのである。同時に、パール・バック女史の『大地』に描かれている、清国の軍閥行動にもきわめて似通った面があることに気づく。時代は変わっても、軍隊が「私兵」のごとき位置づけにある。この中国の前近代性には、驚くほかないのだ。

⑦ 「人民解放軍が名誉を挽回する上で、領有権争いは格好の機会となった。釣魚島をめぐる日本との争いは特にそうだ。他国との衝突の不安が存在する限り、軍指導部は、政府内で影響力を維持できるだけでなく、習氏の反腐敗防止の取り組みで矢面に立たされずに済むとそれなりに自信を持つことができた。だが、事態は今、不透明な様相を呈しつつある。東シナ海をめぐる日中の緊張が多少なりとも緩和される可能性が出てきたことで、人民解放軍の指揮官らは部屋からたたき出される危険に突如さらされていると考え始めているかもしれない」。

尖閣諸島周辺で、中国は緊張関係をつくりだしてきた。こうした事態が続く限りは、人民解放軍は、政府部内で重要な位置を占められる。この結果、反腐敗闘争で摘発の危険が薄れられるメリットがあった。だが、日中の合意文書に海上衝突時の緊急連絡メカニズムの設立が挙げられている。この具体的な手続きが合意されれば、日中の軍事衝突は回避されるのだ。人民解放軍にとって、「火遊び」ができなくなるわけで、江沢民一派が日中を戦争に誘い込む危険性が減った。習氏が日中戦争を防止することは、自らの権力基盤を防衛することにもなりうる。皮肉にも、タカ派の習氏が江沢民一派の策動封じによって、自らが生き延びられるという不思議な巡り合わせになっている。「事実は小説よりも奇なり」を実感するのだ。
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