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韓国にやられた「UAEショック」から5年…インフラ輸出は3倍増 規制改革は「岩盤」崩せず

産経  2014.12.1 06:07更新 (安倍首相vsモディ首相)

 8月28日、短文投稿サイト「ツイッター」に日本語でつぶやかれた一文が海外メディアの注目を集めた。

 「日本とインドの友好は時の試練を経てなお続いている。われわれ二国は世界の繁栄と平和の推進に傾倒する活力に満ちた民主主義国家である。私が特に心待ちにしているのは安倍首相にお会いすることだ」

 ツイートの主は、インドのナレンドラ・モディ首相。この2日後、安倍晋三首相はモディ首相に会うべく新幹線に飛び乗り、残暑厳しい京都迎賓館で熱い抱擁を交わした。

 「アベノミクス」と「モディノミクス」-。両者はともに自国の経済再生を政策課題のトップに掲げる。企業の海外進出促進を掲げる安倍首相と、海外からの投資促進を掲げるモディ首相。京都での抱擁から2日後の9月1日、都内に舞台を移した会談で両者の思惑はぴたりと一致した。

 安倍首相「インドによる日本の新幹線システム導入に期待している」

 モディ首相「インドの国土を高速鉄道でつなぐことは私の夢だ。日本による高速鉄道に関する調査実施に感謝する」

 具体的には、インド最大の都市ムンバイと工業都市アーメダバードを結ぶ全長約500キロの高速鉄道計画について日本側が資金、技術、運営の各面で支援することで合意した。会談後、両首相は「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」に調印し、日印関係は新たな一歩を踏み出した。

 アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略。新幹線など日本が誇るインフラの輸出促進は、その重要な柱となる。首相は就任以来、新興国・途上国を相次いで訪問してはトップセールスを展開していた。訪問国は50カ国に上り、歴代首相で最多となった。

 その成果は著しい。日本企業による平成25年の海外でのインフラ受注額は、前年比3倍の9兆2600億円。首相のトップセールスで受注に直結したものは、モンゴルの国際空港建設事業▽トルコの原子力発電所建設計画▽インドの貨物専用鉄道敷設工事-など25件に上る。

 「首相の外遊に同行しませんか」-。大手商社やメーカー、ゼネコンなどには最近、経済産業省からこうした“お誘い”が引きも切らない。首相外遊の際、大手企業の社長らが大挙して同行する「経済ミッション」には、この2年間で1200人以上が参加した。

 そのメリットは計り知れない。

 経済ミッションでは、首相が相手国首脳との会談で、その国が計画するプロジェクトに言及し、日本が貢献できる技術などをトップセールスする。相手が興味を示すと、同席する企業側がすかさず具体的にプレゼンするわけだ。

 さらに会談に合わせて夕食会やレセプションも開かれる。ここで、企業単独ではなかなか接触しにくい相手国の政府高官らとパイプを作ることもできる。途上国ほどトップダウンで物事が決まるのでプロジェクトは一気に加速する。

 昨年8月、首相の中東訪問に同行した三菱商事と三菱重工業はカタールで新交通システムを売り込んだ。両社は2011年にアラブ首長国連邦(UAE)で中東初の鉄道「ドバイメトロ」を開業させた実績を持つだけに「経済ミッションでこの実績を直接アピールするのが最善の策だ」と判断したのだ。

 実はUAEでのビジネスには苦い経験がある。企業関係者が今も「UAEショック」と語る09年の商談だ。当時、日立製作所や米ゼネラル・エレクトリック(GE)などの企業連合がUAEの原子力発電所の受注を目指したが、土壇場で韓国企業に逆転負けを喫した。背景には、李明博大統領(当時)とUAE皇太子の密接な関係があったとされる。「あの時は官民の一体感が弱かった…」。関係者は苦々しく振り返る。

 それから5年。首相の「地球儀を俯瞰する外交」は経済面で大きく実を結びつつある。経済面で結びつきが強まれば、首相が主眼を置く安全保障面でも関係は強化される。今のところその戦略に死角はない。
 
 このように官民一体となったインフラ輸出は成長戦略の優等生といえるが、その影に劣等生もいる。その1つは「海外からの投資促進」である。

 海外投資が国内総生産(GDP)に占める比率はわずか3・4%。米国(18・8%)、韓国(13・0%)などに大きく水を空けられている。

 首相は対日直接投資の残高を平成32年までに35兆円へ倍増させる目標を掲げるが、その障害となるのが、先進国では米国に次いで高い法人実効税率(東京=35・64%)だ。首相は数年で実効税率を20%台まで引き下げたい考えだが、財務省の抵抗もあり、議論はまだ緒に就いたばかりだ。

 成長戦略の「1丁目1番地」といわれる規制改革も、医療、雇用、農業などの「岩盤規制」に阻まれ、さほど進んでいない。

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉や農業改革では全国農業協同組合中央会(JA全中)を中心に農業団体が激しく抵抗する。混合診療拡充では日本医師会から異論が噴出する。首相は「いかなる既得権益といえども私のドリルから無傷ではいられない」と強弁するが、岩盤は想像以上に固く厚い。しかもそこを巣くうのは旧来の自民党の支持勢力なのだ。

 そこにこの衆院選の大義がある。首相が「アベノミクス解散」と銘打ったのは、しがらみを断ち切り、岩盤をたたき割る難工事を進めるには、国民の新たな信任が必要だと考えたからではないか。そのためにも選挙戦では、日本再生の処方箋を丁寧に説明していくことが重要となる。 (田端素央)vs
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