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中国政府、ついに認めた「バブル崩壊」影の銀行がデフォルト

勝又壽良 2014-12-22 04:29:19

象徴的な鉄鋼業の赤字 バブルが報告書に登場

中国政府は、これまで言を左右にしてきた「バブル崩壊」を認めるにいたった。12月9~11日に開催された中央経済工作会議報告書の一節に、この文言が出ているのだ。もっとも、「管理可能」という楽観論を付けてはいる。現在の景気減速は、すべて「バブル崩壊」が原因である以上、「ソフト・ランディング」を目指せば、完治への時間もそれだけ先へ延びる。中国経済の衰退に拍車をかけることは疑いない。「生かさず殺さず」で、じわじわと中国経済の体質を蝕んで行くであろう。私が長年にわたって主張してきた、「中国経済泥舟論」はいよいよ不可避となっている。

中国経済の象徴的な混乱は、不動産業と鉄鋼産業に見られる。不動産業については、住宅在庫の累積と全土に広がる「鬼城」(ゴーストタウン)によって知れ渡っている。あえて、再説の必要もないほどだ。そこで、苦境に立つ鉄鋼業の現状を先ず紹介したい。不動産開発と鉄鋼産業は「双子の兄弟」の関係にある。とりわけ、中国鉄鋼業は低級品の生産が主体である。建設資材用途が主要な仕向先だ。

象徴的な鉄鋼業の赤字
中国メディア『欧浦鋼網』(12月10日付け)は、生産能力の過剰に苦しむ中国の鉄鋼業界について、次のように伝えた。

① 「中国鉄鋼業界の過剰生産能力は年3億トンに達し、日本の粗鋼生産量の約3倍にあたる。中国産の鉄鋼はすでに大きく値崩れしていることや、鉄鋼メーカーの大半が赤字操業を続けている。『中国鉄鋼業界が直面している苦境はますます“制御不可能”になりつつある』と論じた」。

中国の粗鋼生産は今年10月に6752万トンと前年同月を0.3%下回った。2桁成長を続けていた昨年夏から急減速している。これまでも中国鉄鋼業は苦境にあった。それが、ついに前年レベルの生産を下回るところまで追い込まれている。中国の粗鋼生産は、世界の粗鋼生産の半分を占めている。いかに過剰生産であるかが分かるのだ。これを放置してきた中国政府の責任は重大である。「社会主義市場経済」においては、中国政府が監督する立場にある。野放図な経済政策を続けてきた結果がこれだ。GDP世界2位と言っても、中身はこの程度の「ガラクタ」である。「筋肉質」にはほど遠い。

「中国鉄鋼業界が直面している苦境はますます“制御不可能”になりつつある」と記事では指摘している。中国が完全な市場経済であれば、ここまで追い込まれる前に設備投資の抑制や、市況下落に見合った減産などの手が打てたはずである。それが、計画経済ゆえに自動的にブレーキを踏む者が誰もいないのだ。ただ、地域のGDP押し上げ効果だけを狙った強気経営が支えてきた。こう見ると、中国経済には自動的なブレーキ役が存在しないのだ。GDP世界2位の経済にブレーキが存在しない。改めて、中国経済が調整機能を持たない「暴走型」と断じるほかない。

ここまで現実が厳しくなると、中国政府は「バブル崩壊」について何時までも頬被りし続ける訳にはいかないのだ。今回の中央経済工作会議では、かなり危機感を漂わせた報告を発表せざるを得なかったはずだ。

『人民網』(12月12日付け)は、次のように伝えた。

② 「中国経済は依然として多くの困難と課題に直面している。経済の下方圧力は大きく、構造調整による『痛み』も表面化しつつある。企業が生産・経営面で抱える困難が増え、いくつかの経済リスクが顕在化している」。

控えめながら、中国経済が抱える問題点を率直に表明している。これを読むと、米国を抜いて「GDP世界一」という夢がいかに困難であるかが分かるはずである。それを理解しないで、「中国経済礼賛論」をぶち上げてきた向きには、冷水を浴びせかけるに十分な内容である。以下には、その重要な項目を挙げて解説したい。

③ 「中国の低コストのメリットに変化が生じ、海外からのハイレベルな導入と大規模な海外進出が同時に発生する」。

ここでは、オブラートに包んだように曖昧な言い方をしているが、はっきり言えば「低コスト」時代は過ぎたと宣言している。ならば、自力で産業高度化に動き出せば良いはずだが、その技術基盤あないから、「ハイレベル産業」を導入しなければならない。こう言っている。なんと哀しいことだろうか。中国には自力での発展可能性がない。間接的に「告白」している。それにも関わらず、「大規模な海外進出」を行うという。まことに矛盾した話だ。低レベルの技術で海外進出する。成功は覚束ない。この現状で、「反日」だけには力を入れている。日本企業が中国へ進出するはずがない。すでに、日本企業はインドを第一の進出先に挙げている。状況判断が大甘である。

④ 「高齢化が進み、農業の余剰人口が減り、生産要素の規模の原動力が弱まる。経済成長を、人的資本の質と技術的進歩に依存するようになる」。

言っていることは正しい。それを実現する手段がないのだ。人的資本の質を上げるには、教育を充実することに尽きる。現実は真逆である。地方政府の義務教育は名ばかりである。少子高齢化で学校の統廃合が行われている。通学できない子ども達は退学を余儀なくされているのだ。大学教育も「座学」中心である。理系教育では実験科目の不足が指摘されている。国際レベルで通用する大卒の学力は、約1割しかいないとされている。よって、技術開発能力も劣るのは当然だ。

⑤ 「環境の許容能力が限界に達し、あるいは限界に近づき、グリーン・低炭素の循環型発展という新モデルを推進する必要がある」。

今さら、何を言っているのか。「ツー・レート」(遅すぎる)なのだ。「PM2.5」問題がここまで深刻化して初めて対策を取る。人間の生命を軽んじてきたから、これまで実効の上がる対策を何一つやらずに来たのだ。これは、人権軽視と一脈通じたことであり、国民生活よりも経済成長=軍拡に力を入れてきた証拠である。環境の原状回復はほとんど不可能である。GDPの約3分の1は環境破壊コストとされている。中国政治は、国民無視であり「不真面目」過ぎるのだ。これが、環境崩壊の真の理由である。民意を問わない独裁政治の不可避的な落とし穴である。

バブルが報告書に登場
⑥ 「経済リスクは全体的にコントロール可能だが、ハイレバレッジ(注:過剰債務)とバブルを主な特徴とする各種のリスク解消までには、まだしばらくの時間を必要とする」。

今まで頑として認めなかったことを、ようやく認めた「歴史的」記述である。「ハイレバレッジとバブル」と並置している点に注目していただきたい。つまり、過剰債務が不動産バブルを生み出したのだ。過剰債務が消えて正常化しない限り、不動産バブル崩壊は終わらないことを意味している。現在の総債務残高は、対GDP比250%である。平成バブルをはるかに超えた絶望的な数値である。この認識が中国政府にあるだろうか。経済リスク解消まで、「まだしばらくの時間を必要とする」と言った生やさしいものではない。

日本の平成バブルは、中国の半分程度の規模であった。それでも回復までに「失われた20年」を要している。株価は未だに、1990年12月末に付けた最高値の半分も回復していないのだ。バブル崩壊とは、これだけの犠牲を伴う。日本のバブル崩壊後の人口動態は、偶然にも中国の辿る道である。中国がどうあがいても、日本の辿った道を歩むほかない。その覚悟がないから、相変わらずの「反日」で気勢を上げている。現実をしっかりと認識しなければならない。目を覚ませ。心からそう忠告したい。

⑦ 「過剰生産能力を全面的に解消する一方で、市場メカニズムの役割を発揮することで、未来の産業発展の方向性を模索する必要がある。

この「美辞麗句」の意味を本当に理解しているのか、はなはだ疑問である。過剰生産能力を生み出した原因は、「社会主義市場経済」である。政治の干渉する経済システムが、法外な過剰生産能力をもたらした。しかも、地方政府官僚がこれを足がかりに立身出世するという「人治」が絡んだ失敗である。その点では、きわめて「中国式特色」を表している。中国政治が変わらない限り、過剰生産能力の解消は不可能である。

GDPの250%にも達する過剰債務は、支払不能が起こっても何らの不思議はない。地方ではすでに綻びが起こっている。

『大紀元』(12月5日付け)は、次のように伝えている。

⑧ 「中国河南省内でこのほど、複数の信用保証会社が相次ぎ倒産したのを受け、投資家たちは、政府の監督責任を問うために大規模な抗議を行った。連日、道路や鉄道駅、政府庁舎、列車を包囲、封鎖している。警官隊が出動し、逮捕者も出ている。11月下旬、同省平頂山市の億通投資担保公司が突然倒産した。同社が募った一般市民からの出資金総額はおよそ6億元(約117億円)で、全額が戻らない。それを皮切りに、省内の帝峰担保公司、謄飛集団投資理財有限公司など6社の信用保証会社も立て続けに破産した。これを受け、千人あまりの投資家が毎日抗議を続けている。中には長距離列車の線路に立ち入る人もいる。3、4人の逮捕者が出ているという」。

⑨ 「今回の出来事は、中国経済を支えている、300兆円規模ともいわれているシャドーバンキングの債務不履行(デフォルト)危機の一角が露呈したに過ぎない。中国では多くの中小企業や地方政府は規制が厳しい銀行からの融資を受けられないため、シャドーバンキング(影の銀行)から金を借りている。シャドーバンキングもまた高利回りをうたって一般市民から資金を募っている。多くの専門家は、半分程度(150兆円)が債務不履行になる可能性が高いとみており、社会不安を引き起こし、中国経済を崩壊に導く引き金だとの懸念が高まっている」。

来年のGDPは、「7%前後」の伸びが予想されている。かつて、10%を超える時期に借り入れた債務の返済が、これから迫ってくる。成長率低下の下で、債務返済がきわめて難しくなるのは常識である。中国経済は今後、一段と成長率低下の方向にある。対GDP比で250%もの債務をどうやって返済するのか。一言で言えば、不可能である。待っているのは巨額債務を負う企業の倒産しかない。この分かりきったことが分からない振りをしている。これが、現在の中国政府である。

『大紀元』(12月12日付け)は、次のように伝えた。

⑩ 「江蘇省蘇州市の大手シャドーバンキングの高仕公司が破たん寸前で、投資家から集めた25億元(約478億円)が全額返還不能となったことから、被害者らは、12月初めから連日抗議を続けている。中国国内紙『華夏時報』によると、2005年から融資業務を始めた高仕公司の本社は、蘇州市呉江区政府庁舎内にあり、地元政府とメディアが同社を宣伝するなど積極的にバックアップしていた。このことから、被害を受けた投資家らは地元政府の責任を追及している。政府庁舎前での連日の抗議に対し、地元政府は反応を示していない。警察は被害者の集団被害届に対し、捜査を行うと約束した」。

本社が蘇州市呉江区政府庁舎内にあり、地元政府とメディアが同社を宣伝する。こうした積極的バックアップを受けてきた大手シャドーバンキングが倒産した。ここで集められた資金は多分、地方政府の公共事業資金に回ったであろう。一般投資家がこのシャドーバンキングを信用するのは無理からぬこと。私が、中国のバブル崩壊が日本の比ではないという理由はこれだ。日本では、こういった「事件」はおきていない。市役所に抗議が殺到する類の話はなかった。

⑪ 「高い利回りにつられて一般市民が競って同社に出資したとみられる。ある100万元(約1910万円)の投資契約書には年利10%と記されている。同社はネット上では『年利20%以上』と謳っていた。同社には抵当権詐欺や文書偽造の疑いがもたれている。被害者側は、『同社は融資先とされる複数企業との間で、実効性のない抵当権設定を交わし、投資家から巨額な資金を騙し取った』と主張している」。

中国のバブル崩壊は、庶民の生活基盤を根こそぎ奪ってしまうところにある。東京大学のある著名教授は、中国の不動産バブルが崩壊しても個人は「無傷」と言ったトーンの発言をしていた。私はこれをブログで批判したが、シャドーバンキングの崩壊は深刻である。資金を預けた側は、生活苦になる危険性があるのだ。
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