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欧州連合(EU)は集団的安全保障と国益優先の「ねじれ」を乗り越えることが出来るか?対中融和策の限界と危険性を考えてみる。

白髪頭でズバリと斬る -じじ放談- 2015年07月14日

はじめに

大自然が創造したすべての動物は「食物連鎖」中で生かされている。「食うもの」と「食われるもの」は、食物連鎖の頂点と最底辺にあるものを除き可変的だ。ある場面では「食う側」に立つものが、他の場面では「食われる側」に追い込まれる。また、「食物連鎖」といっても動物によって嗜好が異なるから、第三者から見て「なぜ、猫は昆虫を食べ、犬は昆虫を食べないの?」ということもある。食物連鎖の頂点に立つ動物は「丸ごと食われる」という心配はないが、寄生虫やウイルスに格好の繁殖場を提供し、「部分的に食われる」こともある。さらに、あらゆる動物には生まれながらにして「生命停止装置」が組み込まれており、同種が急増するのを防いでいる。見事過ぎる大自然の摂理といわねばならない。

大自然の摂理は「食う(搾取する)側」から見ると、都合のよいものであるが、「食われる(搾取される)側」から見ると、不条理なものである。そして、大自然の摂理は動物界だけではなく人間社会の隅々に浸透し貫徹しているから、人間社会から格差や不条理がなくなることはない。弱肉強食、優勝劣敗、格差社会、寄生生活など「見たくない現実」は緩和されることはあっても根絶されることはない。大自然の辞書には「個性的と不均等」という言葉はあるが、「画一的と機会的平等」という言葉はない。

「国益」とは何か?(1)当該国家が実効支配する領土・領海・領空を保全し、その領域拡大を図ること、(2)安全保障上の勢力圏を維持し拡大すること、(3)国民の命を守り、文化的で安定した経済生活を維持し発展させること等であろう。しかし、(1)と(2)の国益は、周辺国の国益を侵犯する利益相反行為であるから戦争や紛争が勃発するのは自然の道理だ。国益と国益が衝突している世界の紛争(内戦)地域はウクライナ、シリア・イラク、イエメン、東シナ海・南シナ海等であるが、現在、未分割で新たな紛争の兆しが見える空間は南極大陸、北極圏、宇宙空間、サイバー空間等。(3)は国家の経済力や発展段階によって対応が異なる。金融立国、科学技術立国、商業立国、資源立国、人材派遣立国、大衆消費財供給立国などのほか、ギリシャの如く、地域経済圏の金融支援がなければ生きてけない国や、「ゆすりやたかり」の手段とすべく歴史問題を次々に掘り起こす等心魂卑しい国もある

20世紀はユダヤ人が創造した共産主義(インターナショナル)とグローバリズムの全盛時代であった。彼らは、国家の垣根(規制)を破壊し、民族の伝統(宗教、慣習、生活様式等)を否定して広大な更地を創ることで「利潤の最大化」が実現できると考えた。後世の歴史家は「20世紀は、過去2000年虐げられてきたユダヤ人が最も輝いていた時代であった」と記すはずだ。

第1:ギリシャ問題の収拾策で一致しない米仏独の国益

(チプラス首相の不可解な対応)

ギリシャのチプラス首相はEUが支援の条件として提示した緊縮財政政策に対して「反緊縮財政」を掲げて国民投票を強行し、ギリシャ国民の圧倒的多数の支持を獲得した。数日後、チプラス首相は君子豹変、「反緊縮」の看板をドブ川に投げ捨て、おおむねEUが提示した緊縮財政策を受け入れると態度を一変させ、議会の承認をとりつけてEU首脳との交渉に臨んだ。

見事な豹変ぶりというべきか?開いた口が塞がらない。彼の破廉恥な無節操ぶりには驚く。ギリシャ国民をペテンにかけ、その成果を引っさげてEUからの金融支援を獲得する。ギリシャ国民をペテンにかけた男が、EUとの約束だけを守ると信じる者はおるまい。メルケルだけではなく、誰もが「チプラスは金融支援を得て一息つけば、EUとの約束を反故にする算段だろう」と感じるはずだ。詐欺師チプラスが「敵(EU)を欺かんと欲すれば、まず味方(国民)を欺け」と考えていると疑われても文句はいえまい。偉大なる?詐欺師の条件は「羞恥心と責任感の欠如」だ。天性の詐欺師チプラスはギリシャ国民やEU首脳をペテンにかける意思をもって虚言を弄したのではない、虚言を真実と誤認したのでもない。天才的詐欺師は「破産国家ギリシャ、我が祖国ギリシャに冨(金融支援)をもたらすのは虚言しかない」と確信し虚言を弄しているのだ。共産主義者かつ偉大なる詐欺師チプラスはギリシャ国民の怒りを手繰り寄せ断頭台の露と消えるか?

(妥協しない独メルケル首相の対応)

ドイツ民族の精神性は緻密かつ堅牢に積み上げた石造建造物の如きもので何よりも原理原則を重視する。何事にもいい加減な(融通無碍な)イギリス経験論や米国プラグマチズム(功利主義)とは相容れない。ドイツ国民の圧倒的多数が「ギリシャ支援に反対」というが、これは「借金踏み倒しの常習犯(ギリシャ)をこれ以上甘やかすべきではない。情けは人のためならず」と考えているのだろう。賭け事は「勝っている最中に止めて帰るのが上策」であって「負けるまで賭け事を続ける」のは愚の骨頂だ。腐ったリンゴは速やかに廃棄しなければならないとドイツ国民は考える。

EUにおいてドイツ(メルケル)の評判は芳しくないという。ゲームで「一人勝ち」すれば誰からも嫌われる。参加者が相応の配当を得られるよう手加減しなければ仲睦まじく遊ぶことはできない。「ドイツ(メルケル)とは二度と遊びたくないわ、さんざんカモられたし」となる。世の中で、嫉妬心ほど怖いものはない。怨念の火で藁人形を燃やされるかも分からないし、告げ口外交で失脚を狙う女番長がいるかもしれぬから油断できない。

仮に、ドイツがユーロを導入しなかったとすれば、わが国が円高不況で苦しんだ20年と同様、ドイツもマルク高不況に襲われ悪戦苦闘したことであろう。2002年1月1日、ドイツマルクはユーロに移行した。ドイツは経済発展の遅れたギリシャを初め開発途上国の割安通貨国をユーロ圏に取り込むことで、自国通貨の大幅な切り下げに成功した。ドイツは世界最大の貿易黒字国となったが、ユーロは低位水準を保った状態で推移した。ギリシャのような破産国家予備軍が通貨高を抑制していたからだ。欧州通貨ユーロはドイツの貿易黒字を極大化させた反面、ユーロ圏内の開発途上国ギリシャ、ポルトガル、スペイン等南欧諸国は国力を大きく超える「通貨高」で輸出競争力を奪われ、体力を消耗した。ユーロ導入の最大の受益者がドイツとすれば、最大の被害者がギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン等の南欧諸国といえる。「ユーロ圏」には富の再分配機能がない。国の経済力格差は拡大することはあっても縮小することはない。

(ギリシャの応援団となった仏オランド大統領)

フランスでは「反EUと移民規制」を標榜するフランス国民戦線が勢力を急拡大。フランスを代表する左翼知識人エマニュエル・トッド(アシュケナージ系ユダヤ人の末裔)も「EU賛美派」から「EU解体派」に転向した。なぜ、彼は転向したのか?彼は理想と現実を混同する性癖があって「欧州人の欧州(EU)」という儚い夢(理念)を追い求めた。その結果が「ドイツ第4帝国」という忌まわしい怪物を出現させてしまったのだ。「後悔は何の役にも立たない」とパスカルは語っている。

オランド大統領が真っ先に「チプラス首相の緊縮財政策を支持する」との表明を打ち出したのは、米オバマ大統領の意向を忖度したものと考えることもできるがそれだけはない。ドイツの経済力に圧倒され、EUでの発言力低下を指摘されているフランスに久しぶりの出番が回ってきたから張り切っていることもある。さらに、対独に追随するのではなく独自外交を貫くことがフランス国民の不満を慰撫する政治的効果も期待できる。仮に、ギリシャがEUの財政緊縮策を拒否して債務不履行(デフォルト)に陥っても、「フランスの責任ではない、ドイツの頑固で融通がきかない対応がもたらした結果だ」と弁解できる。

(裏面工作を仕掛けるだけか?オバマ大統領)

米国には、ウクライナ内戦、シリア・イラク内戦、アフガン内戦、イエメン内戦、南シナ海での中共軍の膨張主義への対応等多方面作戦を行う余裕はない。いずれも、部分的かつ限定的関与に留まらざるを得ない。反面、NATOにとって、東地中海の要所ギリシャにロシア黒海艦隊の基地が建設されることを容認することはできない。という事情があって、かつ西欧における英国の発言権も大きく低下しているから、オバマ大統領が独仏首脳に電話して説得せざるを得なかった。「ギリシャをロシア側に追い込んではならない」と頼み込んだはずだ。

「歴史は繰り返す」という。英国宰相チェンバレンが、ソ連の膨張をけん制するためにドイツ第3帝国(ヒットラー)を活用したように、米国はウクライナとギリシャでのロシアの影響力拡大を阻止するためドイツ第4帝国(メルケル)に依存せざるを得ない。原理原則が欠落した「勢力均衡戦略(国際関係論)」の限界だろう。ロシア赤色革命を指導したレーニンは「戦略なき実践は盲目であり、実践なき戦略は空虚である」と述べている。

第2:東シナ海と南シナ海における中共軍の戦略

(以下1-4は、7月12日付け日本経済新聞掲載の「中国人民大学時殷弘教授の発言」より抜萃。

1.民主・共和両党ともに中国に融和的とは言えない。民主党はヒラリー・クリントン前国務長官が本命候補だが、中国の政府や国民は彼女のことが好きではない。共和党の候補は一般に自由貿易を好むので、米中の経済関係は現在より少し良くなるかもしれない。オバマ政権がここ数年進めてきた軍事予算の削減ペースは鈍る。

2.中国が米国の反対を押し切って南シナ海で岩礁を埋め立てた理由には3つある。(1)米国が最終的に偵察活動を行えなくなるような条件を徐々に整えること、(2)中国が主権を主張している南沙諸島からフィリピンとベトナムを追い出すこと、(3)エネルギーの調達ルートとなるシーレーンの安全を確保すること。

3.中国政府の行動や習主席の対外戦略から(判断)すると、中国は西太平洋の西部、つまり(九州、沖縄から台湾、フィリピンと連なる)第1列島線の西側では少なくとも一定の主導権を握りたいと考えている。沖縄の近くまで進出することになる。中国と日本の戦略的な利益の衝突はかなり大きい。

4.中日関係は当面、部分的に改善に向かうが、対立は続く。中国にとっては、日本が南シナ海と(将来の統一を目指す)台湾の有事に介入しないことが最低ラインとなる。日本がこれを越えれば戦争になる。

時殷弘の発言は、中共中央(習近平総書記)や中共軍の意向を代弁したものといってよく、中共の侵略的凶暴性を露骨かつ正直に披瀝したものだ。つまり、中共は日米両国や周辺国が反対しても、東シナ海・南シナ海全域を管理し内海化する。台湾を併合し、沖縄諸島又は沖縄諸島周辺の海底資源を奪取する戦略だ。中共が我が国固有の領土である尖閣諸島の周辺海域に公船を派遣して我が国領海を侵犯し、沖縄諸島周辺の我が国排他的経済水域内で海底資源の調査を繰り返しているのは、彼らが遠くない将来、東シナ海全域の制海権・制空権を握り、自由自在に海底資源を採掘する意思を表明したものだ。中共は米国の弱腰を見抜いている。「軍事力による国境線の変更」、つまり「領土・領海・領空を拡大する中共に対抗する周辺国(日本・フィリピン・ベトナムなど)との戦争を回避しない」と表明し威嚇している。

中共の軍事予算は年率二桁で膨張し、公式発表でも我が国防衛予算の約3倍(年間15兆円)だ。数年以内に米国の国防予算を凌駕すると推定されている。そして、中共軍の侵略的体質と侵略意思の強固さを勘案するならば、現在、日本共産党・社民党・民主党左派・革命的共産主義者同盟革マル派・同中核派らの左翼勢力が「安全保障関連法案潰しに狂奔していること」の意味が理解できる。彼ら左翼勢力は中共軍の侵略行為を容易にするための後方支援部隊なのだ。戦時中、中共八路軍に参加して日本軍の後方撹乱に従事、日本兵多数を殺傷した野坂参三(戦後、凱旋帰国し日本共産党議長になって君臨)らと同類の国賊なのだ。

第3:米国のリバランス政策(対中共対策)のあいまいさ

(以下1-5は、7月12日付け日本経済新聞掲載のカーネギー国際平和財団理事長ウイリアム・バーンズ氏の発言より抜萃)

1.我々に求められているのは、中国との協力と競争を安定的に混在させて、それを管理していくことだ。そのためには、共通の土台や、違いを管理するための強固な姿勢に加えて、この地域での(多国間による)枠組みとパートナーシップを強化していかなければならない。日米同盟はそうした努力の中で、中心的な存在でなければならない。

2.米中関係は、単に米国の外交政策にとどまらず、国際的なシステムの変化の中でも中心的な課題となるだろう。そのうえで言えることは米国による対中アプローチというものはかなりの部分、継続されていくということだ。

3.南シナ海の領有権問題を巡っては、今後も国際法と外交の有益性について焦点を絞っていくべきだと思う。そうすることがこの問題でとても重要なことだ。

4.国際社会で見える風景は以前にも増して非常に複雑であり、混然としており、競争関係も増している。それを否定するつもりはない。しかし、私はある地域の、そして地球規模で秩序を形作り、守っていくという意味で、米国のリーダシップや、同盟国たちとの連携について私はまだ楽観している。

5,米国は強固な同盟相手と緊密な協力をする時、ベストな存在となれる。その上で私は日米同盟の重要性を長い間、高く評価してきた。実際、今の日米関係は(米外交政策における)要石のような存在となっている。それによって米国はアジアで今後、何年にもわたって戦略的に物事を進めることができるのだ。

(以下は聞き手・春原剛記者のまとめ)

その知見と人脈から「米外交の秘密兵器」とも称されるバーンズ氏は、南シナ海での中国による埋め立てなどで波乱含みの米中関係について、「安定的混在(Stable Mix)という言葉を何度も使った。中国を国際社会と世界の秩序に取り込む関与政策と、軍事的な膨張をけん制する抑止政策を随時使い分けるという考えである。

以上、中国人民大学の時殷弘が中共の膨張戦略を具体的に指摘しているのに対し、カーネギー国際平和財団理事長バーンズの見解は抽象的で具体性が全くない。「安定的混在」とは「戦略なき戦略」、つまり場当たり的という意味だろう。バーンズはオバマ政権の戦略なき、支離滅裂な迷走外交をもたらした元凶ではないのか。

そういえば、米国の情報衛星は「中共軍による南シナ海南沙諸島海域の岩礁埋め立て工事」を何ヶ月も前から知っていたはずで、なぜ沈黙していたのか?民間の衛星やフィリピン当局が現場写真を公開してから、米国政府も騒ぎ出した。米国は中共軍による埋め立て工事を黙認していたが、周辺国(フィリピン・ベトナム)や国際社会が騒ぎ出したから「見て見ぬふり」を続けることができなくなった。そこでアリバイ作りのために、突然「中共非難」に舵を切った。黙認派がバイデン副大統領、ライス大統領補佐官及び国務省、非難派が米太平洋軍と国防総省というところか?

中共に対する米国の「へっぴり腰外交」は周辺関係国を不安にさせる。わが国が米国に対して何度も「尖閣有事は日米安保条約第5条の適用範囲」を求めてきたのも、フィリピンとベトナムがわが国に急速接近しているのも、米国が「対中融和外交に回帰するかもしれぬ」との不信感を抱いているからだ。オバマ政権の戦略なき場当たり外交に対する不満は中東やヨーロッパだけではなく東アジアでも拡散している。

バーンズは前記5で「米国は強固な同盟相手と緊密な協力をするとき、ベストな存在になれる」と述べた。「強固な同盟相手」がヨーロッパではドイツ、東アジアでは日本であることは間違いない。これを深読みすると「米国は単独覇権を求めてきた従来の路線を修正し、強固な同盟国を地域覇権国として育成・支援する。米国は地域覇権国を統括して覇権国家の地位を守る」となる。直接支配から間接支配への転換とみなしてよい。米国はヨーロッパ戦線でも、中東戦線でも、そして東アジア戦線でも、主役の座を強固な同盟国に譲り、引き立て役(後方支援)に徹したいと考えている様子なのだ。老いた米国は水中に潜って魚を獲る体力がなくなったから、船の上から鵜を操って魚を獲る「鵜匠」になるという訳なのだ。

米国が軍事と経済の重心をアジアに移す「リバランス政策」は将来の経済発展が期待できるアジアに集中投資して国益の最大化を図る構想である。米太平洋艦隊及び同空軍の増強が図られつつあり、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の締結に向けた取り組みも加速中だ。在日米海軍基地への最新型イージス艦2隻の増配備、同佐世保基地への最新型強襲揚陸艦の配備、兵員輸送機オスプレイやF35の増配備、海自舞鶴護衛艦隊基地が拡張され米原子力潜水艦(戦略型・戦術型)の寄港頻度も増えているとのことで、在日米軍の戦力が相当強化されていることだけは間違いない。これが半島有事を想定したものか?それとも中国大乱を想定したものか?は明らかではない。

第4:軍事戦略と経済戦略のねじれ

米ソ冷戦というイデオロギー対立の時代が終わり、国家が思想・信条ではなく国益を基準に動き始めた20世紀末、世界は国益と国益が衝突する修羅場になった。軍事的には対立関係にあっても経済的には相互依存が深化するというねじれ関係も少なくない。ロシアとEUの軍事的紛争と経済交流、中共と日米及びフィリピン・ベトナム・インドネシアとの軍事的紛争と経済交流、中共とインドの国境紛争と経済交流など軍事戦略と経済戦略に齟齬(ねじれ)がある。軍冷経熱又は「右手で握手、左手にナイフ」という構えだ。

国家の安全保障にとって軍事戦略と経済戦略は一体不可分のものであり、本来、「軍冷経熱」とか「政冷経熱」というねじれた関係はあり得ない。軍事的緊張が高まり、政治関係が冷え込めば経済関係も停滞するというのが通常のパターンだろう。しかし、各国とも国民生活を向上させ、雇用を増やす必要があって思想・信条に拘っている場合ではないと考えるようになった。毒入り饅頭と分かっていても食わざるを得ない。大衆迎合政治こそ、軍事と経済の「ねじれ現象」を生み出した元凶だろう。いかなる国の為政者でも、国民の御機嫌を損じないよう配慮するようになった。大衆迎合政治は容易に衆愚政治に堕落する。世論調査で政治を行うようになれば国会議員は不要だ。総理を国民投票で選び、政治課題はネット世論調査で多数決をとり、官僚に命じて政治を行えば済む。国会議員の莫大な歳費、揚げ足取りの国会審議、国会審議で時間をとられ政治課題に取り組む余裕がない総理大臣以下の閣僚。誠に不経済で非効率的な話ではある。

中共とロシアは軍事力による国境線の変更に踏み込んでいるが、経済的相互依存が深化していることもあって決定的な対決には至っていない。ドイツ第3帝国ヒットラー総統が英仏と「チェコスロバキア・ズデーデン地域の帰属を巡って合意したミュンヘン協定(1938)の当時と近似した状況といえるかもしれぬ。ミュンヘン協定が締結された1年後、独ソ不可侵条約が成立し、ドイツ軍とソ連軍がポーランドに侵攻し分割した。ウクライナにおけるロシアの領土拡張と東シナ海と南シナ海における中共の制海権、制空権及び領土の拡張は偶然の一致ではない。「赤信号、二人で渡れば、怖くない」ということだろう。以心伝心というより共同共謀正犯とみなすべきだ。

西欧列強(英独仏伊ほか)が中共主宰のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加したのは、各国が国益を優先してビジネスチャンスを失いたくないということであった。西欧列強は「先進国(G7)の結束」よりも「国益(経済的利益)」を優先させた。ミュンヘン協定と同じように毒饅頭を食って中共の国際法違反を許した。

なお、ユーロ圏19か国首脳会議は「15日までにギリシャ議会が増税や年金改革などの財政再建策を法制化すること、500億ユーロ規模の国有財産を民営化基金に売却、債務返済や銀行への資本注入に活用すること」を条件として、3年で820億ユーロ(約11兆円)超の支援実施に向けた手続きに入ることで合意した。(以上、7月14日付け日本経済新聞より抜萃)

ギリシャの地政学的重要性を勘案すれば、ギリシャをEUやユーロ圏から放逐してロシアの勢力圏に追いやることは良策とはいえない。しかし、自立更生意欲が乏しく、放漫財政に慣れ親しんだギリシャ国民がさらなる緊縮財政措置をどこまで受け入れることができるか、といえばはなはだ疑問だ。金を貸せば貸すほど不良債権が積み上がる虞れが高い。ギリシャに資金を融通することは、溝に金をすてるようなものではないか。ユーロ導入で大儲けしたドイツはともかく、東欧諸国の国民を納得させるのは容易ではない。

今回の措置は「ギリシャの国益、ユーロ圏およびEU参加国の国益、地域共同体の利益(EU・ユーロ)、価値共有国の共通利益(欧米)を勘案して練りあげた妥協の産物であった。ユーロ圏首脳はヘトヘトになるまで議論を重ね、全員一致の結論を得たという。

第5:米国の脅威はロシア、中国、イラン、北朝鮮

米国の国家軍事戦略によると「米国の脅威はロシア、中国、イラン、北朝鮮」の4か国とされた。米本土を直接攻撃できる意思と能力を有する悪人4兄弟を列記しているだけで順不同。中国を名指しで非難するのは初めてであり、親中共の巣窟国務省では反対意見が強かったと推定されるが、中共軍による南シナ海岩礁の埋め立て工事と3000メートル級の滑走路工事を含む軍事基地化が進展している現場写真が世界中で報道されたから、さすがの国務省も徹底抗戦できなかったということだろう。遅きに失した感はあるが、ようやく中共も「米国の仮想敵国」に認定されたのだ。

中共は「対中包囲網」をけん制すべく西欧列強(英独仏)に接近するほか、「中露印」の3国連携を強化すべくBrics銀行を立ち上げた。先般はロシアで、上海協力機構とBrics5か国の合同会議を開催。インド、パキスタンは上海協力機構に加盟する意向。中共は大陸同盟を結成して海洋同盟に対峙する構想を描いている。もとより、インドとロシアが習近平の掲げる「一帯一路戦略」の下請けに甘んじるとは想定できないから思惑は別にあると見るべきだろう。おそらく、習近平が描くユーラシアの東西回廊ではなく、ロシアー中央アジア5か国ーアフガンーイランーインドを結ぶユーラシアの南北回廊を構想しているはずだ。その布石としてインドは、まず上海協力機構に加盟し中央アジア5か国との関係強化につなげる狙いだろう。

ロシアと中共を仮想敵国とみなす米国の軍事戦略は中露両国を一括して殲滅する力があれば効率的な手法となるが、一網打尽に殲滅することができる力もないのに仮想敵国を分散するのは「敵の団結を促す」マイナス効果しかない。仮に、中共とロシアを同時に揺さぶり殲滅したいのであれば、例えばイスラム過激派(ISやアルカイダ等)と休戦し、イスラム過激派戦闘員をチェチェン共和国(ロシア)や東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)に送り込み、後方からイスラムゲリラのジハードを支援することがあってもよい。勝つか負けるかの戦争に善悪の価値判断が介在する余地は微塵もない。

もし、中共とロシアを分断して各個撃破する戦術を採用する場合は、米国の好みで敵を選ぶのではなく、敵を第2走者に絞り、第3走者以下を自陣営に取り込む工作を仕掛けるべきだ。現在、米国は敵を絞り込めていないようで「反米国家はみな敵」という感じだ。このように杜撰なヨミでは勝てる戦争でも負ける。敵を一点に絞り込み戦争を仕掛けるためには、劣後する物事を棚上げし、好悪の主観を交えないで優先順位を決め、工程表を淡々と実行すべきである。戦争以上の罪悪はないのであるから価値観や感情で合理化することはできない。

まとめ

中国歴代王朝の不可思議さは「万里の長城」という巨大かつ実用的でない構造物を営々と築いてきた点にある。中共王朝も、世界最大のダムや長江支流から首都北京等に至る長大な水路を建設した。巨大ダムは地殻変動と地震を誘発し、数千キロに及ぶ水路は汚染水の悪臭を撒き散らしている。中共が世界中で手がけている道路・鉄道・ダム等のインフラ整備事業は現地住民から「環境破壊をもたらした悪魔」と罵られているという。

「大なるものを良し」と為す中国歴代王朝の未熟な心性が「巨大な構造物(無駄な公共事業)」を世界中にばらまいている。「費用対効果」は2の次の3番以下で彼らの関心事ではない。

「万里の長城の30%が消失した」という。理由は、周辺住民が万里の長城を掘り崩し、レンガ等を売却し生活費に充当しているのだという。食うためであれば「たとえ火の中水の中」で怖いものなし、餓死するよりマシだ。という訳で、中共官僚に虐げられた民衆は躊躇せず「世界遺産」を掘り崩す。中共中央に政策あれば13億人民に対策(抜け道)ありだ。

という訳で、習皇帝がいう「一帯一路」とか、「中華民族の偉大なる夢」というのも、万里の長城に国富を傾け滅びた歴代皇帝と同じく誇大妄想症とみなしてよい。歴代皇帝は万里の長城が異民族の侵攻を防ぐ盾にはならないことを知りつつ、営々と公共事業(万里の長城建設)を続けた。独裁政治は即断即決出来る反面、間違えた政策を変更できない重大な弱点がある。歴代中国王朝にとって万里の長城建設事業(公共事業)は、実効性の有無に関係なく、「異民族の侵入を防ぐ唯一絶対のもの」でなければならなかった。反対すれば高官であっても「国家転覆煽動罪」と「反革命罪」によって首が飛んだ。

中共は東シナ海と南シナ海の制海権・制空権を掌握するためには「戦争も辞さない」と大言壮語する。軍事力を増強して威嚇すれば、周辺国は尻尾を巻いて屈服すると考える。清朝末期と同様、中共王朝末期も自己過信と自己肥大症に罹患しているとみなしてよい。潜水艦や艦船を建造して並べただけでは戦力とはいえない。職業軍人を何十年も訓練し鍛え上げなければ実戦では役に立たない。戦闘機も右に同じであって、現代戦においては臨時雇いは足手まといになるだけで、先進国では徴兵制を廃止した。

中共軍最高幹部数十名の一族郎党が、職権乱用と昇進斡旋等で何千億円、何兆円も蓄え粛清された。頭脳部が腐っている中共軍の指揮命令系統が十全に機能するのか?はなはだ疑問だ。最高幹部から下級幹部に至るまで腐敗にまみれた中共中央と中共軍最高幹部の指揮命令に従う者がどれだけいるのか?下部組織にだけ、清廉潔白と忠誠心を求めるのは酷というものだろう。腐敗まみれの中共中央とその私兵集団に過ぎない中共軍のために一命を捧げたいと考えるだろうか?戦争が始まると、我先に脱走するのではなかろうか。小中華を自認する「韓国」も右に同じ。戦争開始と同時に司令官が脱走することは間違いない。

中国4000年の歴史は「武力で天下の主となった異民族(騎馬民族)や山賊(軍閥)が王朝を創設し、官僚に統治させた王朝史」である。人民は牛馬以下の搾取されるべき、弾圧すべき対象であった。現代中国も例外ではなく、国民もいないし、国軍もいない。「中国人民解放軍」という名の共産党の私兵集団がいるだけ。国務院は「中国共産党政治部」であり、国有企業は「共産党党営企業」なのだ。国営新華社や人民日報は「中国共産党宣伝部」であり、北京大学や清華大学は「党立大学」だ。軍も、政府も、企業も、大学も、領土・領海・領空も、そして13億人民のすべてが中国共産党の所有物なのだ。「馬上天下を取る」という意味は、異民族や山賊が天下のすべてを支配し独占することなのだ。

我々は価値観を共有しない中共王朝(習皇帝)と金王朝(金皇帝)に隣接しているとの自覚を持ち、警戒心をもって対応すべきである。彼らは近代社会の合理的な感性を持っていない。2000年以上前の秦の始皇帝以来の「力の信奉者」であって、戦争を仕掛けることも人を殺すことも何とも思わない。

彼らの暴走を食い止めるために、集団的自衛権の限定行使を含む多国間防衛体制の構築を急ぐ必要がある。国民は法改正の条文ではなく、法改正後の事実によって徐々に理解する。「百聞は一見にしかず」という。説教を数回聞いただけで理解できるのであれば誰でも東大法学部の教授になれる。

安全保障関連法案の国会審議を100年間続けても国民の50%以上は理解できないであろう。それゆえに、有識者を国会議員に選出し、国会審議を行わせ、国政全般の検討を委嘱しているのだ。

最近、国政の課題についての世論調査が多い。無作為抽出して応答した国民を1000人ほど選び「国民の声」とみなす。有権者が1億人とすれば「10万人に1人」の声が国民の声というのである。とんでもないペテンと言わねばならない。中国共産党御愛用の「情報操作」の一種だ。

内なる敵を恐れよ。そして一人づつ殲滅せよ。

白髪爺 at 21:30
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