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法改正だけで集団的自衛権が行使できると思っているのか!! 日高義樹氏の指摘

おゆみ野四季の道  新 2015年10月22日 (木)

 日高義樹氏といえば元NHKのアメリカ総局長で、退職してからはハドソン研究所の主席研究員になった人だが、ハドソン研究所はアメリカ共和党のシンクタンクで、日高氏は実質的に共和党のスポークスマンのような立場の人だ。
だから日高氏のレポートや本を読むとアメリカの保守陣営が今何を考えているかよくわかる。

 このたび日高氏が「誰も知らない新しい日米関係 集団的自衛権で何が変わる」という本を緊急出版したので私も取り寄せて読んでみた。
趣旨は「安倍首相がようやくのことで集団的自衛権を認める法改正に成功したが、これは絵にかいた餅であり、具体的に集団的自衛権が行使できるような措置をとらねば戦争などできない」という主張だった。

 簡単に言えば「法律を改正したからと言って、戦争ができる体制になっておらずそれにふさわしい軍備増強を図れ」というアメリカ保守陣営の危惧をそのまま表明している。
日本の左翼陣営からすると「戦争ができる体制を組めなどという論議は憲法の平和主義に悖るし、そもそも第9条違反になる」と目をむきそうだ。
しかし左翼とは現実を見ないで幻想の中に生きている人々のことでいづれ滅びる運命にあるから無視しても、日高氏のいう戦争ができないという意味は具体的には以下のような内容だった。

 もっとも重要なことは戦争行為を行う時には指揮権の問題と、そのシナリオに従った日常的訓練が必要なのだが、日本の自衛隊は海上自衛隊を除いて全く準備ができていないという。
日本の海上自衛隊はアメリカ第7艦隊の指揮下にあって、常時アメリカ軍との合同演習を繰り返しているので、集団的自衛権の行使をする段階になってもアメリカ軍の一部隊として戦闘行為に入ることができる。

 問題は航空自衛隊と陸上自衛隊だが、最も問題が大きいのが航空自衛隊だという。
航空自衛隊は専守防衛の立場からにスクランブルが主な任務となっており、配備されている航空機は海を越えて中国や北朝鮮を攻撃できるほどの航続距離を持っていない。
もちろん途中で空中給油機から給油を受ければ中国にも北朝鮮にも出撃が可能だが、そうした空中給油機は現在二機しかなく、とても有事には間に合わないのだという。
具体的な話として北朝鮮からミサイル攻撃を受けた場合、日本海を渡って北朝鮮のミサイル基地をたたくことができない。
もっぱら迎撃ミサイルで撃ち落とすことだけになってしまうが、相手を攻撃できなければ戦争にならないというのが日高氏の指摘である。

 また陸上自衛隊についても主力ヘリコプターや戦車や装甲車は日本に敵が攻めてきて国内が戦場になった場合の迎撃用であり、とても海外に出向いて行って戦闘を行えない。
その典型が病院船がないことで、戦闘になれば多くの兵士が負傷するが、兵士を海外の民間病院で手当てするなどということはありえない。
病院船の存在こそは海外で自衛隊が集団的自衛権に基づき行動した場合にもっとも必要な設備だが、それがないのだという。
航空自衛隊も陸上自衛隊も戦闘は日本近海か日本の国土の中で行われることを前提に整備されており、とても海外に戦闘部隊として派遣できるレベルではないという。

 さらに問題なのは指揮権の問題で、指揮権をどこが持つかの問題がある。海上自衛隊のように第七艦隊にあると言いきれないところが、航空自衛隊と陸上自衛隊の悩ましいところで、指揮権と日ごろの訓練は貨幣の表と裏だから、実際に戦闘行為が始まったら大混乱に陥るのではないかと日高氏は危惧している。
今のままではアメリカ軍が北朝鮮や中国のミサイル基地を攻撃しているときに、長距離爆撃能力を持たない航空自衛隊は単なる足でまといの軍隊になってしまうという。

 日高氏がいいたいのは集団的自衛権というのはアメリカと一緒に軍事行動をおこすことであり、そのためには海外派兵能力のある軍隊に編成変えしないと、いくら安倍首相が集団的自衛権の行使といってもできないのではないかという指摘だ。

 私は日高氏の本を読んでアメリカの保守陣営が何を考えているかよくわかったが、海外で戦争をするには専守防衛と異なった自衛隊の装備が必要で、現在のような規模の小さな自衛隊ではとても不可能だという指摘はとても新鮮だった。
簡単に言うと集団的自衛権には金がかかるということで、自衛隊をそうしたレベルまで引き上げない限り「集団的自衛権は絵に描いた餅にすぎない」と日高氏は指摘している。
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