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2016年の世界情勢。特に、中東における世界戦争の背景と今後の展望を考えてみる。

白髪頭でズバリと斬る -じじ放談- 2016年01月09日

はじめに

原油等資源価格が急落したことによって、資源産出国へ流入していた天文学的規模の「富」が、資源消費国に滞留することになった。このベクトル変換は国家や企業の盛衰に決定的な影響を与えた。世界経済の風景と国際政治の勢力図は大きく変化した。

国際政治は司令塔なき「Gゼロ時代」らしく混迷度を深めている。目下、内戦状態(戦争)にあるアフガニスタン、イラク、シリア、パキスタン、リビア、チュニジア、イエメン、スーダン、マリ、チェチェン(ロシア)、トルコ、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)等では自爆テロが頻発している。しかも、戦場は米国、フランス、タイ・バングラデッシュにも拡散した。もはや、世界中が非対称的戦争(テロ)の脅威に対処せざるを得なくなった。加えて、軍事力を増強し、軍事パレードで武力を誇示し、「武力による国境線変更」に踏み出したロシア・中共・北朝鮮の国境侵犯にも備えなければならない。その他、サイバーテロも、国家中枢に対する破壊工作やスパイ活動もある。「専守防衛」だけでは国民の生命と財産を守ることができないから、敵の攻撃意思を挫くため「反撃防衛」で対応せざるを得ない。

世界経済は今、「再編過程」にある。国際政治は今、巨大なマグマの塊がせり上がり、その一部が水蒸気爆発や火砕流となって周辺国に甚大な被害をもたらし始めた。山が形状を変え、いつ何時、大爆発が始まるか分からない。マグマは膨張し破壊力を高めている。

第1:原油等資源価格の暴落が体制変革(革命)を誘発する

約1年半前、1バーレル105ドル前後であった原油が、約半年で30ドル台に暴落した。そこから自律反発して50ドル台に戻したものの、再び35ドル前後に下落、目下、30ドル台割れを探っている状態。原油の暴落に天然ガス、石炭、鉄鉱石、貴金属等資源価格も暴落した。結果、資源産出国に流れ込んでいた莫大な資金が資源消費国に逆流した。資源消費国は一息ついているが、資源産出国は「息も絶え絶え」「青菜に塩」の国家存亡の危機に陥った。これから数年間、資源価格が低迷した場合、体力のない資源産出国は債務不履行に追い込まれる。内戦を経て体制変革(革命)を強要されることもあり得る。

1.サウジアラビア・湾岸諸国・中央アジアの体制危機

世界最大規模の原油産出国サウジアラビア(王政)はオイルダラーをたっぷり貯めこんだ大資産国といわれてきた。原油販売で稼いだ膨大な資金を先進国の国債や株式で運用して富を蓄積するほか、国内では社会福祉を充実して独裁政権(王政)に対する国民の不満を緩和してきた。原油価格の暴落が始まって約1年半、サウジアラビア、湾岸諸国、中央アジアの産油国(事実上の独裁政権)は資産を取り崩し、手元不如意に陥っているのではなかろうか。さらに原油安が続いた場合、社会福祉費の削減に踏み切らざる得ない。そうなると、国民を慰撫し、懐柔する手段を失う。

原油や天然ガス以外に収入源がほとんどない産出国にとって、エネルギー資源価格の暴落は致命的な打撃となっている。外貨準備高の大幅な減少と通貨の下落によって、消費財を輸入することが困難になるほか、税収減によって社会福祉の水準を切り下げざるを得ない。一度、豊かな生活を体験した国民は窮乏生活に耐えることができないから、生活が苦しくなれば不満が爆発する。夢も希望も失った若年層は誘惑に弱い。イスラム過激派(IS等)の甘い甘言に騙され、共鳴し、シリア・イラク・アフガン・リビア・イエメン等の戦場に赴き、軍事訓練を受けて帰国、体制転覆を目的とする無差別テロを企てることもあり得る。

独裁政権や王政等、選挙で意思を反映する場がなく、言論の自由が抑圧されている国家において民衆の不満を解消する手段は「社会福祉の充実だけ」である。国家財政に余力がなくなれば社会福祉費の削減に手をつけざるを得ない。独裁政権下で唯一の「ガス抜き手段」がなくなれば、民衆の不満は溜まり、爆発力を増す。抑圧(密閉度)が強ければ強いほど爆発力は増す。そして内戦に至る。

2.南米の左翼政権の倒壊

ベネズエラの社会主義政権は強権的手法で国際石油資本が保有していた採掘設備や採掘権等を接収し国有化した。原油や天然ガスの販売益の大半を国民を慰撫するための費用(社会福祉費)に充当し、長期政権を維持してきた。しかし、採掘設備が老朽化しても更新しなかったため原油採掘量が減少したこと、さらに原油価格の暴落によって財政が破綻、事実上の国家破産状態に陥ったから、社会福祉の切り捨てを断行せざるを得なくなった。社会主義的バラマキ政治が国家の経済力を衰退させ、原油価格の急落に対する抵抗力を失わせた。次回の大統領選で南米屈指の親中共・反米・社会主義政権は倒壊するといわれている。

アルゼンチンの親中共・社会主義政権も「バラマキ政治」が国家経済を疲弊させ、国家破産は時間の問題といわれてきた。そして、社会主義政権は国民の信頼を失い、選挙で破れ下野。同じく、ブラジルの親中社会主義政権も資源価格の急落という不運も重なって国家経営に失敗した。企業倒産と失業者が急増、治安の悪化で政権に対する支持率は低迷、オリンピックの開催にも疑問符が付けられている状態で、次回選挙では政権交代必至といわれている。

以上の3か国はいずれも「親中共・反米」の社会主義政権であり、中共と通貨スワップ協定を締結。しかし、中国人民元をいくら手に入れても、米ドル債務の返済には充当できないからほとんど役立たない。中共との自国通貨建て貿易決済以外に使途がないから、いくら中共と通貨スワップ協定を締結しても緊急時の役には立たないということだ。(韓国は中共と700億ドル相当の通貨スワップ協定を締結している。韓国は最近「米韓スワップ協定」と「日韓スワップ協定」の再締結を求めている様子であるが、米ドルやユーロと互換性のない人民元ではデフォルト対策には役立たないと理解したのであろう。マヌケな話だ。)

3.南アフリカ

世界有数の貴金属産出国であった南アフリカは人種隔離政策を撤廃して民族協和の民主主義国家になると期待されたが、現在は閣僚の質が劣化して汚職と腐敗の温床になっているといわれている。経済の疲弊が政治を劣化させることもあるが、政治の劣化が経済を破綻させることがあるという実例だ。

4、ロシア

ベネズエラと同じく、主としてエネルギー資源を切り売りして国家を経営しているロシアにとって、原油や天然ガス等資源価格の暴落は致命的な打撃となった。ウクライナ領クリミア半島を奪い取ったことに反発した先進国(G7)による経済制裁について、当時、プーチン大統領はロシア国民の民族意識が高揚していることに目をつけ「2年間の窮乏生活を」と訴えた。しかし、経済制裁は解除されない、エネルギーの需要は減少し供給は増えるばかりで数年以内に原油価格が反騰すると考えている馬鹿はいない。「窮乏生活2年」どころか、「窮乏生活5年又は10年」となっても不思議ではないのだ。

プーチン大統領の「2年我慢せよ」との言葉を信じ、凍てつく大地で歯を食いしばり、空腹に耐えてきたロシア国民はそろそろ「いつまで我慢すればよいのか、プーチン大統領はウソをついたのか?」と不信感を抱くようになる。ロシア通貨ルーブルの暴落もあって、大規模な資金逃避(キャピタルフライト)も加速しているといわれている。財政難によって、仮に社会福祉を大幅に削り込むことになれば、いかに我慢強いロシア国民といえども怒りを爆発させ、体制転換(革命)を求めるようになる。これを心配するからこそ、プーチンは「カラー革命に備えよ」と訴えたのだ。

第2:戦争の一形態としてのテロ

テロリストが数百人、数千人単位で蝟集し、組織化され、一定の地域を勢力圏に治めたとき「反政府軍」と称することができる。本拠地を持てず漂泊する暴力集団は山賊・野盗の類であろう。シリアには何百もの山賊・野盗の集団がいるというから、その中で、組織力と統率力に優れた集団が大規模化して反政府軍となるのであろう。

地域に割拠し政権を脅かしているのがアフガンのタリバン、イラク・シリアのIS、独立国家の建設を狙っているのがトルコ・イラク・イラン・シリアに割拠するクルド人武装集団、フィリピン・ミンダナオ島のイスラム系武装集団、ロシア・チェチェン共和国のイスラム過激派武装集団、リビア、イエメン、ソマリア、スーダン、マリ、ミャンマーの反政府軍など。いずれも政情不安定で、かつ統治機構が十分に機能していない国家や地域で勢力を拡大している。彼らは敵対する政府の重要拠点を狙って自爆テロを仕掛けるほか、敵の後方を撹乱し、社会全体を不安に陥れる効果を狙って無差別テロを仕掛けることもある。

反政府軍やテロリストは「敵方の兵士であるか、一般市民であるか」に頓着しない。これは戦争であるから、敵方に最大の打撃を与えることができれるならば、テロの標的は何でもよいのである。テロは「攻めやすく守り難い」点において、弱者が強者と五分の勝負ができる舞台なのだ。まことに厄介といわねばならない。したがって、テロを封じ込めるためには諜報機関を充実させるだけでは十分ではない。「テロの発生を国民全員で防ぐ」との危機意識を養うべきである。

先般、パリで発生した同時多発型無差別テロはフランス全土を初め欧米を震撼させた。キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒の区別なく一般市民多数がテロの標的とされて殺された。テロリストの狙いは「社会不安を醸成すること」と「偉大なる?殉教者集団ISの宣伝」にある。「IS」は20世紀初頭に誕生したコミンテルン(共産主義者の司令塔)と同様、世界各国に「IS支部」を立ち上げ、世界中を「テロの戦場(革命の拠点)にしたいと願っている。

21年前(1995)、我が国でもオーム真理教が行った「地下鉄サリン事件」等の無差別テロがあった。彼らは、小火器を準備し、神経ガス(サリン)を大量生産しして無差別テロを繰り返した。数千人の一般市民が殺傷された。オウム真理教は自らを「革命軍」と称していたが、実態は社会に不満を抱き、社会を混乱に陥れる反社会的テロリスト集団にすぎない。首謀者松本智津夫ほか事件に関与した幹部は尽く逮捕され、最高裁で死刑判決が確定した。しかし、なぜか?現在に至るも、未だ一人も、死刑が執行されていない。

原油価格の急落によって、ISへの資金ルートが細っていると推定されるが、ISは採掘した原油をトルコの業者や敵対するシリア政府の関係者に密売して軍資金を稼いでいるという。そして、ISはネットワークを活用してイスラム圏だけではなく世界中から戦闘員を集めている。20世紀型の共産主義に代わって登場した21世紀型のイスラム過激派(IS・アルカイダ)といわねばならぬ。

仮に、シリア・イラクに割拠するISを掃討できたとしても、彼らは世界中の政情不安定な地域(特に内戦地域)に戦闘員を移転させて勢力を温存し、新たな拠点づくりを始めるだろう。ISをイラク・シリア北部に封じ込め、「生かさず殺さず」の生殺し状態に留めおくのが賢明な方策であり、トルコ・イスラエル・サウジの意向にも合致すると思うのであるが如何なものであろう。癌の腫瘍は必ず摘出手術をしなければならないとは決まっていない。免疫療法や放射線治療が効果を発揮する場合もあるのだ。

第3:欧州連合(EU)の存立を脅かす民族大移動問題

2015年、ドイツに流入した移民(難民)は約110万人。移民(難民)は大別すると、(1)EU域内(東欧)や同周辺国のキリスト教圏からの移民、(2)アフリカの西欧列強旧植民地からの移民、(3)シリア・イラク・アフガン・リビア・イエメン等内戦地域からの戦争難民又は移民等が混在。これら内戦地域からの移民(難民)と、移民(難民)の群衆に紛れ込んでいるISやアルカイダ等イスラム過激派戦闘員を識別するのはほとんど困難である。移民(難民)の1000人中1人(0.1%)の割合でイスラム過激派戦闘員が潜伏していると仮定すれば1100人となる。

英国では来年にも「EUからの離脱の可否を問う国民投票」が予定されている。フランスでも「EU不要論・脱退論」が台頭している。EU加盟国において、イスラム圏からの移民(難民)に対する生体拒否反応が激しくなっているのは、異文明に対する違和感のほか、低賃金労働者が大量流入することで失業者が増大し、賃金切り下げ等雇用条件の悪化をもたらすと感じているからだ。加えて、納税の義務を果たし、社会福祉制度を充実させてきた一般国民にとっては(人権を盾に)社会福祉制度の受益者権を主張する新参者(移民・難民)を心優しく受け入れることができないのだ。豊かな社会であれば、鷹揚に対応することができようが、格差が拡大し、貧困層が拡大し、国家の経済が疲弊している国家にあっては「西欧近代の人権主義を貫くこと」が困難になったということだ。

移民・難民の大量流入は企業経営者にとっては低賃金労働者を確保できるというメリットがあり歓迎すべき事柄であるに違いないが、競争相手が増えるだけの労働者にとっては迷惑な話なのだ。もっとも、円高で、賃金が高く、人手確保が困難で、法人税率が高いようであれば企業は国外脱出を考えるであろうから、事は単純な図式ではない。安倍総理がやや強引に法人税を引き下げ、基幹産業の社長を伴って首脳外交に励んでいるのも、企業の仕事を増やし従業員の雇用確保を狙っているのだろう。企業は世界的規模で国家を選ぶ時代になった。国家もウカウカしておれないのだ。現代は閉鎖的かつ自給自足型の一国社会主義の時代ではない。

第4:習近平が急ぐ中共軍の近代化と失速(又は崩壊)する中国経済

毛沢東は「中国の現状を具体的に分析し、彼我の力関係を直視して戦略・戦術を練り上げる達人(現実主義者)」であった。毛沢東の軍は「敵を中国大陸に誘い込んで殲滅する」という人民戦争を基本とする「守りの軍」であった。守備を固め、しかる後、反転攻勢の機会を窺う。毛沢東は10大元帥系列の陸軍(軍閥)が団結できないよう分断して支配した。毛沢東は共産党中央直属の陸軍(軍閥)が軍事クーデターに立ち上がることを何よりも恐れていた。

習近平は「理念(べき論)」で現実を見る。「理念(べき論)」に合致するよう現実を改造したいと考える。「中国は大国らしく処遇されなければならない」と考え、公言する。「習近平の軍」は米軍と対等の勝負ができるよう、特に海軍・空軍・ロケット軍・宇宙軍・サイバー部隊を重点的に強化しなければならないと考える。陸軍中心の7軍区制を改編し、陸軍・空軍・海軍・ロケット軍の4戦区体制に移行、各軍を機動的に運用できる「攻めの国軍」を建設しなければならないと考える。

核ミサイル部隊をロケット軍の格上げし、空母機動軍を複数編成して7つの海を遊弋させ、ステルス戦闘機を多数配備して周辺国を威嚇し、畏怖させなければならないと考える。(党中央ではない)習近平は全軍と武装警察(以上、暴力装置)を統括する中共王朝の皇帝となって君臨する。

習近平の「理念(べき論)」は、5年ほど前、梁光烈国防相(当時)が提起したとされる国軍化構想とほぼ同じ観点で軍の再編強化を狙ったもので独創性は皆無。職業軍人梁光烈国防相(当時)の問題提起としては合理的な考えといえるが、国家主席(総書記)たる習近平が世界最強の米軍に対抗したいと欲する理念(べき論)で、強大な中国軍の建設に執心し邁進するのも、最高指導者として如何なものか?と思うのだ。

中国の実体経済の失速及び金融崩壊の危機、人間の生存に適さないほど悪化した大都市の自然環境、福祉の貧困と世界最大の貧富の格差問題を放置して軍事偏重政治を強行する習近平の政治的資質を疑わざるを得ないのだ。

外国資本の導入によって右肩上がりの経済成長を続けることができた過去20年と、国有企業の借金残高が最低でも1500兆円に達し、銀行の融資が停止すれば「即倒産」となるゾンビ国営企業が過半に達するといわれている。そして、地方政府の多くが不動産投機によって天文学的負債を抱えているといわれている。目下、ゾンビ国営企業では設備の廃棄と従業員の解雇等を小出しで行わせ社会不安が高まるのを抑えるソフトランディング路線(新常態)を進めているが、当座のボロ隠し(弥縫策)に過ぎないから、一度、金融機関の不良債権が表面化すれば銀行閉鎖(預金者の取り付け騒ぎ)が全国規模で発生しても不思議ではない。国家が13億人の口と耳を塞ぐことはできない。

習近平は「2016年の経済成長率は最低でも6.5%」というが、この数字は社会主義的計画経済の努力目標に過ぎない。世界銀行やIMFは中共中央政府が発する努力目標の数値を鵜呑みにしているがとんでもない談合試合だ。習近平がいう「新常態」とは「+6.5%成長」ではなく「せめて±0%確保」という切羽詰まった願望なのだ。漢族が発する言葉に騙されてはならない。彼らは「2016年はマイナス成長に陥る危険が高い」と認識しているからこそ、意味不明の漢語で粉飾し、世界と13億人民を欺いているのだ。

つまり、経済が失速又は崩壊し、前年比マイナス成長が続く時代にあって軍事予算の二桁増を続けることは不可能な話なのだ。仮に、経済の失速又は崩壊と無関係に軍事予算だけを二桁増額したならば、北朝鮮と同じく先軍国家となる。民生部門の予算は大幅に削減され餓死者が続出、生き残った数億人の民衆が流民となる。失うものがない民衆は勇気凛々「黄色の旗」を掲げて全土で一斉に蜂起する。古代中国の思想家「老子」は「強梁なる者はその死を得ず」と述べた。「民衆を力で弾圧する為政者はろくな死に方はできない」というのである。

何が言いたいのか、といえば習近平の大風呂敷も歴代皇帝が心血を注いだ「万里の長城」の公共事業と同じく、何の成果も得られず未完で終わるということだ。歴史の約半分を異民族に支配された漢族は民族の集合的無意識(劣等感)を癒やすべく、何よりも「中華民族は偉大ですね」と賞賛してもらいたいのだ。例え、それが「お世辞」であるとしても。

第5:箍(たが)が外れ、世界の秩序(?)が壊れた

2016年1月時点で内戦が勃発しているのは、ウクライナ、チェチェン、アフガニスタン、パキスタン、トルコ、イラク、シリア、リビア、イエメン、スーダン、マリ、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)等である。地球儀で見ると、北緯30度から北緯40度のイスラム文化圏に集中していることが分かる。その中でも、シリア(イラク)の内戦には、政府軍と反政府軍だけではなく、周辺の主要国(イラン・サウジアラビア・ヨルダン・イスラエル・トルコと欧米列強(米英仏)・ロシアが参戦しているという意味で、「内戦」の概念を超えた「世界戦争」といってもよい。

1.中東戦争の経緯と特徴

イスラエル建国(1948.5)の翌日に始まった第1次中東戦争は、イスラエル(ユダヤ人)とエジプト・サウジ・イラク・シリア・ヨルダン(アラブ人・パレスチナ人)であった。エジプト(ナセル大統領)がスエズ運河を国有化すると宣言したことで勃発した第2次中東戦争(1956)ではエジプトとイスラエル(英国)が戦い、第3次中東戦争(1967)では、アラブ連合共和国(エジプト・シリア)とイスラエルが戦い、第4次中東戦争(1973)では、エジプト・シリア・モロッコ・サウジ・イラクとイスラエルが戦った。

1979年、イスラム原理主義勢力(ホメイニ)がイランの王政(米ソ支持)を打倒してイスラム革命を成功させた。翌年(1980)、イラク(アラブ各国・米ソ支援)とイランの戦争が始まった。同戦争中の1982年、イスラエルとシリアがレバノン内戦に介入(第5次中東戦争)。

1990年、イラク軍(フセイン)がクウェート侵攻、1991年湾岸戦争がイラク軍(パレスチナ解放機構支持)と多国籍軍(米欧・アラブ各国)で戦われた。2001.9.11米中枢部に対する同時多発テロ発生、同年10月、米軍を主力とするNATO軍がアフガンに侵攻、タリバン政権を崩壊させた。2003年3月、米軍を主力とする有志連合がイラクに侵攻しフセイン政権を崩壊させた。

2011年1月、シリアのアサド政権が民主化を求めるデモを武力鎮圧したことで国軍が分裂、イラクの内戦が始まった。同年12月、イラク駐留米軍が完全撤退した。マリキ政権(シーア派)から排除されたスンニ派系軍人・旧フセイン軍残党・旧バース党党員らが蜂起し、シリア反政府軍の一派と合流し「イスラム国(IS)」を立ち上げた。

(2016年1月、中東地域における戦争は以下のとおり)

1.シリア・・・政府軍(イラン政府・イラク政府・イスラム過激派ヒズボラ(いずれもシーア派)・ロシアが支援)と反政府軍各派の戦争と、ISと政府軍及び反政府軍各派(アラブ連盟・パレスチナ自治政府・トルコ・米英仏独ら有志連合が支援)の戦争と、ISとクルド人武装勢力(欧米とイスラエルが支援)の戦争と、イスラエル軍とシリア政府軍・イスラム過激派ヒズボラ(シーア派)の戦争が主なもので、その他反政府勢力には弱小の野盗や野武士の如き集団が何百もあるという。戦国末期の我が国でも蜂須賀小六の如き野盗又は野武士の集団が多数いたが、徐々に戦国大名に吸収された。

2.イラク・・・政府軍(イラン・ロシア・米国・クルド人武装勢力)とISとの戦争。米国はシリア戦争ではイラン・ロシアと敵対するが、イラク戦争ではイラン革命防衛隊と協調する等戦略方針に一貫性が見られない。結果、主要同盟国のイスラエル、トルコ・サウジアラビア等湾岸諸国(いずれもスンニ派)は米国の二股外交・二股戦略に失望し、米国への不満を隠していない。

3.アフガニスタン・・・政府軍(米軍を中心とするNATO軍)とイスラム原理主義タリバン(スンニ派)との戦争。タリバンはアルカイダやパキスタン陸軍諜報部と緊密な関係にあるとされ、サウジ等湾岸諸国の富豪(スンニ派)から金融支援を受けているとみられている。

4.パキスタン・・・政府軍(中共・米国)とパキスタン・タリバン(スンニ派)との戦争。タリバンの後見人はサウジや湾岸諸国の富豪とみられている。

5.イエメン・・・政府軍(スンニ派)をサウジアラビア政府が、反政府軍の一派(シーア派)をイラン政府が、反政府軍の他の一派(IS系又はアルカイダ系)をアラビの富豪が支援する三つ巴の戦争。

6.チェチェン・・・ロシア軍と反政府武装勢力(IS・アルカイダなどイスラム過激派と連携)との戦争。

7.トルコ・・・NATOに属するトルコ軍とクルド人武装勢力(後背地のイラク領クルド人武装勢力は欧米やイラク政府が武器供与)との戦争。

8,イスラエルとレバノン南部に割拠するイスラム過激派ヒズボラ(シーア派)・パレスチナガザ地区に割拠するイスラム過激派ハマス(スンニ派)との戦争。

9.エジプト・・・軍事政権とシナイ半島に拠点をおくIS系過激派との戦争、先般、同過激派はロシアの旅客機に爆弾をしかけ、飛行中に爆発させて乗員・乗客全員を死亡させた。シリアにおいて、ロシアがIS支配地域を空爆したことに対する報復と表明した。

以上、すでに中東全域が戦争(内戦)に突入している状況にあるが、アラブとイスラエルの戦争が25年続いた後、イラク・イラン戦争ではスンニ派がイラクを、シーア派とイスラエルがイランを支援した。イスラエルにとっては「敵(アラブ)の敵(イラン)は味方」ということであったのかもしれぬ。

そして、米国を盟主とする多国籍軍は湾岸戦争(1991)でイラクのフセイン政権(スンニ派)を痛めつけ、アフガン戦争(2001)でタリバン政権(スンニ派)を打倒し、イラク戦争(2003)でイラク・フセイン政権(スンニ派)を打倒し、マリキ政権(シーア派)を誕生させた。そして、シリアのアサド政権(シーア派)が保有していた毒ガス兵器でシリア国民多数(スンニ派)を殺傷した事実を把握していた米国は、なぜか?アサド政権軍への空爆を断念してアサド政権の延命を助けた。以上の事実から言えることは、「米国は一貫してスンニ派勢力を弱体化させる戦争を仕掛け、結果としてシーア派勢力が伸長するのを支援してきた」ということなのだ。これがアングロサクソン流のイスラム教分割統治策なのか?疑問は尽きない。

サウジアラビアやトルコに立って眺めたならば、米国が主導した湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争、ISとの戦争は「スンニ派弱体化戦略」「シーア派育成戦略」に見える。オバマ大統領は毒ガス兵器でスンニ派住民多数を虐殺したシリアのアサド政権の存続を容認することで、結果として、ペルシャ湾から地中海までの「シーア派回廊」の悲願を成就させた。同盟国として米国を信頼してきたサウジアラビアとエジプトは失意のどん底に落ち込んだ。「捨てる神あれば拾う神あり」。ロシアにとってはチャンス到来、エジプトとサウジアラビアに接近し親密な関係の基礎を築くことができた。トルコはドイツとイスラエルに接近中だ。

おそらく、米国の中東政策(スンニ派弱体・イラン優遇)に対するサウジアラビアの不満が(イランに対する経済制裁が解除される以前に)「国交断絶」という非常手段をとらせたのだ。イランと欧米との合意(核開発の一部停止)を何としても阻止しなければ、シーア派の勢力拡大を阻止できなくなると感じ焦った。

もとより、米国(西欧)のイラン(シーア派の盟主)への接近に不満を抱くのは、サウジ等アラブ連盟加盟国(スンニ派)やトルコだけではない。イスラエルの利害も完全に一致する。すでに、イスラエル・アラブ連盟・トルコの「反シーア派同盟結成」に向けた裏工作が始まっているかもしれぬ。そして、「反シーア派同盟」が、切り込み先鋒隊としてのISとアルカイダ系過激派組織(ヌスラ戦線)への期待を高め、取り込みを画策しても何の不思議もない。欧米列強にとっては憎きテロリストであても、スンニ派にとっては同志であるかもしれないのだ。

これまでイランの後ろ盾となってきたロシアが「イランとサウジアラビアの関係を調整する用意がある」と申し出ているのは、ロシアのしたたかな計算による。イスラエルや多数派のサウジ等アラブ連盟にも貸しをつくり、「米国が抜けた穴をロシアが埋める」と表明したようなものだ。米国と同様、ロシアも二股外交を行うつもりなのだ。プーチンは「外交オンチのオバマ政権の残余期間内(1年)で、一気に勝負をつけたい」と考えているはずだ。

まとめ

世界は今、法と正義(理性)が力を失い、暴力(戦争)が横行する時代になった。無差別テロは内戦中の中東地域だけではなく米仏などの先進国にも拡散した。有感地震が多発する関東地域で生活する人間は地震の揺れに慣れているが、同じく現代人は常態化した無差別テロと戦争(内戦)に慣れ、親しみ、驚かなくなった。「平時から戦時へ」との感覚転換が生まれている。余りにも頻繁に大事件が発生するので、少々の出来事には驚かないほど鈍感になった。

新年早々、サウジアラビア等が「イランとの国交断絶」を表明した直後、北朝鮮が「核実験(水爆?)」を強行した。上海株は1月4日・7日の2回、7%超も暴落、「サーキットブレイカー」が適用され、市場閉鎖に追い込まれた。上海株式市場が世界同時株安の震源地になった。さらに、1月7日付け「WTI原油価格」は1バーレル33.64ドル、「CRB商品先物指数」は168.54、「バルチック海運指数」は445と下落中でなお底値は見えない。さらに中国経済の崩壊が顕在化すれば株式市場だけではなく、世界経済を奈落の底に突き落とすであろう。

2016年は世界経済にとって正念場となるだけでなく、世界の政治地図(勢力図)を塗り替える年となろう。経済戦争に敗れた国では民衆の不満が爆発、そして既存の政治体制が打ち倒されて統治機構が崩壊すれば群雄割拠の内戦に至る。歴史上、何百回・何千回も繰り返されてきた光景だ。

いよいよ、疾風怒濤の2016年が始まった。「負けに不思議の負けなし」という。細心の注意力をもって大胆不敵に振る舞うことで難局を乗り切りたいものではある。 白髪爺 at 04:33
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