Entries

米大統領共和党予備選が露わにした米国社会の暗部。あのドナルド・トランプが第45代大統領になるのか?

白髪頭でズバリと斬る -じじ放談-   2016年03月04日

はじめに

近年、「想定外の出来事」がしばしば発生するから、「想定外の出来事」も想定しておかなければならなくなった。それにしても、あのトランプが大統領共和党予備選で他候補を寄せ付けないほど支持を集めているのだから世の中は分からない。共和党員や同党支持者の知的水準が劣化し適正な判断ができなくなったのか?それとも共和党主流派が候補者の一本化に失敗し、候補者が乱立したためトランプに漁夫の利を与えてしまったのか?

第1:トランプが勢いに乗った
(1の代議員獲得数及び2の支持率は3月3日付け日経より抜粋)

1.各候補が獲得した累計代議員数(全体2472人)

スーパーチューズデイを終えた段階で、トランプは315人、小さな政府を唱える茶会のクルーズが205人、主流穏健派のルビオが106人と他候補を圧倒した。共和党の大統領候補は「トランプ」になるであろうといわれている。ペースメーカーと思われていた馬が、想定に反して第3コーナーまで数馬身引き離してダントツで疾走している。冷静に眺めていた観衆がが騒ぎ出すのも無理は無い。「先頭をキープしたまま、奴がゴールに駆け込むのではないか」と、早くも勝ち馬に乗り換える者が出た。

2.クリントンとトランプの本選挙対決を想定した支持率

クリントン46.5%、トランプ43.5%

泡沫候補とみなされていたトランプが知名度・家柄ともに抜群のクリントン前国務長官と拮抗する支持率を得るなんて、誰が想定したであろうか?誰もがびっくりしているはずだ。トランプ陣営は気勢が上がっていることであろう。

第2:トランプの政策<3月3日付け日経より抜粋。( )内は筆者>

1.税財政・・・法人税率は35%から15%に、中所得者層に加え高所得者も減税
2.TPP・・・強く反対、「ばかげた協定だ」
3.内政・・・不法移民は強制送還。銃規制強化に反対
4.外交・・・イスラム教徒の入国禁止。メキシコ国境に壁(万里の長城を築く)
5.対日政策・・・円安誘導と批判。安保条約は「日本ただ乗り」(双務化を主張)

(以上、財源を示さないで、企業の大幅減税及び中間層以上の減税を行うほか、同盟国・関係国・イスラム諸国との関係を破壊するつもりなのだろう。イスラム教徒の入国禁止など正気の沙汰とは思えない。無知蒙昧、荒唐無稽の政策である。偉大な米国の復活どころか、米国を世界の孤児に追い込む愚策だ)

(だが、トランプは非難されるのを覚悟の上で、敢えて「非現実的な政策」を打ち出したと考えるべきかもしれぬ。なぜ、トランプの選挙参謀はかくも「八方破れ」の愚策で勝負することにしたのか?)

第3:トランプの戦術

1.差別化

カネ儲けには熟達しているが政治経験が全くないトランプが知事や上院議員経験者等政治経験豊富な政治家と同じ土俵で勝負しても勝ち目はない。そこで、他候補との議論がかみ合わないよう争点をずらし、「敵は敵の土俵、俺は俺の土俵」と異なる次元で相撲を取ることに決めた。

2.目立つ

大統領候補に立候補する者は、有権者に「名前を覚えてもらうこと」が第1であるから、まず民衆の記憶に「強烈な印象」を残さなければならない。ドングリの背比べでは記憶に残らない。「好きか嫌いか」は多少犠牲にしても「目立つか、目立たないか」を重視せざるを得ない。その意味で、優等生タイプの真面目な政治家よりも不良タイプの粗野な政治家が記憶に残る。「嫌だ、嫌だも好きのうち」ということもある。「無視されること」は恐れるべきであるが、「嫌悪されること」は愛されるための最低条件を満たしていると前向きに考えるべきなのだ。世の中、万人に好かれることはありえないし、100人中50人から好かれたならば「御の字」だ。厚顔無恥でなければ政治家は務まらない。

3.情報過多時代に適応するための感度

「情報化社会が到来した」といわれて数十年。社会に垂れ流される情報量は幾何級数的に膨れ上がった。流通する情報が多すぎて、必要な情報と必要でない情報を弁別することも困難な時代になった。個人が受容できる情報の総量は算術級数的にしか増やすことができないが、現実世界では個人の情報受信能力の何万倍も、あるいは何億・何兆倍の情報が流れている。個人は「寄せては返す情報」に翻弄され波の間をさまよう木片の如し。結果、個人は「聞き流す」(情報受信器の最小化)ことで、心身の安全を図る。

米国大統領予備選で、政治的実績もあり、人格・識見も優れていると思われている優等生候補各位は支持率が低迷、次々に落馬した。その中で、民主党サンダース候補は社会主義者らしく「ウオール街(金融資本)の解体」と、若者の最大関心事である「学費の全額国費負担」という甘すぎる餌を見せて支持率を上昇させクリントン候補に肉薄した。サンダースは大統領民主党予備選で勝てるとは考えていないから気楽なものだ。仮に間違って大統領になったら場合は「米サンダース大統領暗殺される」という事件報道が世界を駆け巡る。

共和党のトランプ候補は「イスラム教徒の入国禁止」や「メキシコ国境に万里の長城を築く」という誰も信じないであろう妄想的な政策を展開する。要するに、誰も信じないことを信じて、ひねり出した秘策だろう。周到な準備をして練り上げた戦法だろう。「真面目な政策論」は面白みがないし、情報過多時代の有権者の感覚器官を刺激しないから「聞き流されてしまう」と考えた。マスメディアの触覚や民衆の感覚器官に響くのは「ありえないほどの大声」、「奇想天外な発想」、「危険過ぎる話題」である。マスメディアや民衆は「面白そうな話」や、「刺激が半端でない話題」にしか反応しない。真面目な話題にはアキアキだから「パス」されてしまうのだ。

4.悪魔と悪魔払い

ファシストや共産主義者が好む煽動の手口は、(1)仮想敵(悪魔)を創作する。(2)仮想敵(悪魔)の所業がいかなる害を与えているかを針小棒大に描く。事実であるか否かは全く問題ではない。(3)仮想敵(悪魔)を倒さなければ昇天できないし地獄に落ちるというシナリオを騒ぎ立てる。(4)そして白馬に乗った天使(悪魔払い)が民衆を率いて悪魔と戦う。悪魔を倒して一件落着メデタシメデタシとなるストーリーを描いている。ファシストや共産主義者は自らを天使(悪魔払い又は前衛)と位置づけ、民衆を惑わし煽動する。日本共産党志位和夫委員長以下が大好きな「戦争法廃止」の煽動・宣伝工作がこれに当たる。彼らの手口は単純であるが、「ウソも100回言うと真実になる」というナチス党ゲッペルス宣伝局長の忠実な後継者だ。

トランプは「中国や日本を締め上げ米国の雇用を守る」とか、「イスラム教徒は危険であるから入国を禁止する」と述べているが、トランプがウルトラマンになって虐げられている民衆を救出するという勧善懲悪のシナリオだ。そして、国内に向けて「企業の大幅減税」を唱えて企業を調略し、中間層・上流階層に対する減税を公約して対抗馬の支持層を切り崩す。「予算の裏づけ」は全く示さないで約束手形を切りまくる。覇権国家の地位を失い自信喪失に陥っている国民には「偉大な米国を復活させる」とリップサービスして見せる。「選挙用脚本」があることは間違いない。

ヒットラーの「仮想敵国」は第一次世界大戦で、天文学的戦後賠償をドイツに請求した英仏露等で、第二次世界大戦でも敵対した。「内なる敵」はドイツを内部から掘り崩す共産主義者とユダヤ人と位置づけた。結果、ドイツ第3帝国は「反共の防波堤」として金融資本に期待され、ドイツ国民の圧倒的支持を獲得した。ヒットラーはナチス党一党独裁政権を樹立、世界大恐慌で生まれた数百万人の失業者に仕事を与え、わずか3年で完全雇用に成功したほか、先駆的な福祉政策を断行した。「敵には鉄槌を、身内には豊かな生活を」がモットーであった。

プーチンの「仮想敵国」はいうまでもなく米国。プーチンは米国を「偉大なる祖国を分裂させた首謀者である」と位置づけている。プーチンは「米国の一極支配は許さない」を国是とし、中共に接近して調略、手中に収めた。そして折からの原油高によって国富に余裕が生まれたことを利用して「ロシア軍の再建」と、「年金等社会福祉の充実」を図るとともに、政敵を追放・処刑・暗殺する等して独裁政権の足場を固め、「強大国ロシアの復活」をめざした。ヒットラーがレーニンを、プーチンとトランプがヒットラーをそれぞれ模倣した。

中華帝国の世界制覇を狙う習近平の「仮想敵国」は米国であるが、米国との貿易で食っている中華帝国としては「米国敵視政策」を公然と打ち出すことができない。そこで、米国の身代わりに我が日本を「仮想敵国」に祭り上げた。中国人民に被害感情を植えつけながら、自らを日本軍国主義と戦い中国人民を解放した主役とする改竄した歴史で中国人民を洗脳した。

国内向けには、最低賃金を年率10%以上を引き上げ(企業に負担を押しつけ)、「虎もハエも退治する」との大義名分を掲げ共産党独裁に対する人民の不満を緩和しながら政敵を次々に粛清し処刑した。習近平は「偉大なる中華民族の夢」を実現すべく掲げた「一帯一路戦略」は露骨な中華帝国の膨張政策であるから、領土・領海を侵犯される周辺国・関係国の脅威となった。結果、中華帝国は友達を失い孤立化を深めた。かろうじて札束外交で仲間を増やしているが「カネの切れ目が縁の切れ目となる」ことは必定だ。

米国民がトランプ旋風の流行病に感染して判断を誤り、トランプを米国第45代大統領に当選させた場合、トランプがヒットラー型になるのか、プーチン型になるのか、あるいは習近平型になるのかは明らかではない。おそらく、どの類型にも当てはまらないトランプ型になるはずだ。アメリカ合衆国を分裂させ、ピリオドを打った最後の米国大統領としてその悪名を歴史に刻む。

まとめ

仮に、ヒットラーという先例がなかったとすれば、米国民は「トランプは何をするか分からない危険な男ではあるが、大化けするかもしれず、一度試してみてはどうか」と考えて大統領に選任するかもしれぬ。

しかしながら、共和党の大統領予備選で共和党内部から「反トランプ」の声が噴出しているから、トランプが共和党大統領候補に指名されたとしても、本選挙で民主党クリントン大統領候補に勝てる確率は限りなく低い。

今、欧州(EU)では、とりわけイスラム圏からの難民や移民に対する忌避感情が高まっている。彼らは、経済的負担に加えアイデンティティの危機を感じている様子なのだ。「ドイツは誰のものか?」と。米国では何年も前に白人は人口の過半数を割り込んだ。黒人と黄人は増えるばかりであるから、米国社会における白人優位はすでに大きく傾いている。

米国白人社会の一部には「米国は誰のものか?」というアイデンティティの危機が充満しているとようで、白人警官複数名が黒人青少年の素行を咎め射殺するケースが相次いでいる。「多民族・多文化共棲」は米国の理念ではあろうが、現実は「白人が黄色人種(インディアン)を掃討し建国した西洋キリスト教文明国家である。建前「そうあるべき」と、事実「である」には大きな溝が横たわっている。「頭」では多民族・多文化共棲国家を理解できても、「心」では納得していない。「白人が建国した国なのに、なぜ?」という不満が間欠泉となって噴出する。

今や、欧州連合(EU)だけでなくアメリカ合衆国も分裂の危機にある。米国大統領共和党予備選が露わにした米国社会の暗部。あのドナルド・トランプが第45代大統領になるのか?    白髪爺 at 01:24
スポンサーサイト
  • コメント : -
  • トラックバック : -

Appendix

最近の記事