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中国、「アジア孤立」南シナ海・ミサイル設置で「反中ムード」

勝又壽良の経済時評 2016-03-13 04:40:54

   エコノミック・ショート・ショート

中国は経済政策で大失敗しているが、軍事面でも米国をはじめ周辺国を敵に回す大失態を演じている。2月16日、中国が南シナ海の西沙(パラセル)諸島に地対空ミサイルを配備したことが判明した。米国が、南シナ海での軍事拠点化を中止するよう再三求めるなか、中国は実効支配の強化を進める姿勢を鮮明にした。

中国経済は、見通し難の泥沼にはまり込んでいる。この事実は、私が繰り返し指摘しているところだ。中国政府は、それをカムフラージュすべく、新たな軍事行動に出ている。中国国民に対して、「強い中国」を演じて見せる意図なのだろう。だが、それは逆効果になっている。周辺国は、一斉に中国警戒を強めている。「孫子の兵法」に基づき、先手必勝の「秘策」と考えているのかも知れない。極めて浅はかな振る舞いである。

「孫子の兵法」が現れたのは、紀元前500年頃とされる。今から2500年も過去の兵法だ。日本の真珠湾攻撃は、この「孫子の兵法」に倣った奇襲攻撃であり、最終的には敗戦の憂き身となった。現在は、国際連合という国際機関が存在する時代である。大国と並んで、小国といえども「1票」の発言権を持つのだ。中国の無法な振る舞いは断固、排除される時代環境になっている。中国は、この事実を忘れてならない。この「孫子の兵法」と、秦の始皇帝が用いた「合従連衡」策。中国は今なお、この古びた外交軍事政策を踏襲している。逆に言えば、中国への防御策は実に簡単なのだ。

中国は、米国と南シナ海を軍事拠点化しないという約束をあっさりと破った。米国の怒りは大変なものである。「ワシントンの中国専門の研究者や当局者と議論していても、今の中国に対して否定的というよりも諦めすら感じているようにみえる」(『朝日新聞 電子版』3月3日付、峯村健司・アメリカ総局員)という。米国をここまで怒らせると、日本の真珠湾攻撃を連想させる「裏切り行為」と映るに違いない。もはや、中国とは南シナ海や東シナ海で話し合っても無駄。そういう絶望感が滲み出ているのだろう。

これを察知した中国は、今年の防衛費の伸び率を当初予定の二桁増から突然、6.7%増と大幅に減額して「恭順の意」を示している。米国がこれに騙されることはあるまい。腹の底から、中国のだまし討ちを許さない心情になっている。その端的な例が、2月23日にあった米上院軍事委員会の公聴会 で証人席に座った米太平洋軍のハリス司令官である。「中国は東アジアにおける覇権を追求している」とはっきりと発言したのだ。

中国と南シナ海の島嶼帰属で紛争状態にあるベトナムは、TPP(環太平洋経済連携協定)の調印を済ませた後、そろりと「脱中国」の動きを見せ始めた。

米華字ニュースサイト『多維新聞』(2月24日付)は、次のように伝えた。

①「ベトナムの『デイリー・エクスプレス(電子版)』(2月22日付)によると、ベトナム教育省の幹部はこのほど、18年に発行される新版教科書で、1979年の中越戦争、西沙諸島・南沙諸島海戦などについて盛り込むことを表明した。現行教科書でも触れてはいるものの『内容に限りがあった』としている。教科書の編集担当者はこれまで『中国とは微妙な関係にある』として、記述を減らすなどしていた。ベトナムの高校歴史教科書は現在、2000年に編さんされたものが使用されている。教育省は現在、新版教科書が発行されるまでは『補助教材などを使い、国境問題や領土問題について指導するよう』学校側に求めている」。

ベトナムは、中国の隣国である。歴史的にたびたび中国の侵略を受け、属国にされた苦い経験を持っている。最近では、1979年の中越戦争である。中国の鄧小平が事前に米国の了解を得て、侵略戦争をしかけたものだ。この時、ベトナムの猛反撃に遭って短期間で撤退を余儀なくされている。ベトナムは中国との経済関係が密接であることから、あえて「中国批判」を封印して、表面上は何もなかったように装ってきた。だが、心底深く抱える中国への憾みは消えることがなかったのだろう。

TPPの署名を終えて、「脱中国」の旗印を静かに掲げ始めた。ベトナムが、中国の侵略を受けて戦ったという民族の誇りを、堂々と高校の歴史教科書に記載する。新版の歴史教科書ができるまでは、「補助教材などを使い、国境問題や領土問題について指導する」としている。TPPの署名と軌を一にしているだけに、ベトナムの静かな中国への怒りが伝わってくるのだ。

ベトナムでは、小学校の第一外国語に日本語を教えるという。本来ならば、隣国の中国語が選ばれても不思議はない。それが、日本語を選択したのだ。

『サーチナー』(3月2日付)は、次のように報じた。

②「ベトナム政府・教育訓練省はこのほど、小学校3年に学び始める第1外国語として、英語に加えて日本語を取り入れることを決めた。2016~17年度に始める。ベトナム政府はまず、ハノイ市内の小学校3カ所に日本語クラスを試験的に設け、次にベトナム各地での導入に取り組む予定だ。在ベトナム日本大使館によると、初等教育での日本語の導入は世界でも多くなく、東南アジアでは初の試みという。ベトナムでは2003年に中学校に日本語教育が導入された」。

ベトナムでは、小学校3年生の第一外国語として英語を教えている。これに次いで、日本語が登場するのだ。ベトナムは、かつてフランスの植民地であった。それ故、仏語を避けて英語を採用したのであろうか。英語は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の共通語である。アジアの外国語の選択では、侵略された苦い経験を持つ中国語を避けて、日本語にしたのだろう。もう一つの動機はTPPである。TPPは日米が主導するだけに、日英の外国語を小学生から教えて、将来の発展の素地にしようという目的と見られる。

③「国際交流基金によると、2012年の調査で、ベトナムにおける日本語学習者は4万7000人弱で、世界第8位との結果が出た。小学校における日本語教育の導入については、在ベトナム日本大使館、在ホーチミン日本総領事館、国際交流基金ベトナム日本文化センターベトナム政府に協力する」。

日本としては、ベトナムの日本語教育に最大の支援体制を組むのは当然である。2012年の調査では、日本語学習者は4万7000人弱。世界8位であるという。こうした動きに中国ではネット上で、次のような話しが賑わっているという。「ベトナムは日本の侵略を大喜びしているんだ」という中傷である。中国としては、面白くない話しに決まっている。

フィリピンは、南シナ海の島嶼問題で中国と紛争関係にある。そのフィリピンが、常設仲裁裁判所へ提訴しており、すでに審理が進んでいる。今年の半ばには結論が出るものと予想されている。大方の予想では、フィリピン側の主張が認められるとしている。中国はそれを予想して、早手回しにミサイル基地を設置したとも考えられる。フィリピンは、貧弱な防衛体制の整備に乗り出している。

『中央日報』(3月3日付)は、次のように伝えた。

④「中国は南シナ海北端の海南島に潜水艦基地を建設して攻撃拠点化を図っている。2月にはベトナムと領有権の紛争中である南シナ海パラセル諸島のウッディ島に地対空ミサイル発射台8基とレーダーシステムを配備したことが確認された。日米は中国が南シナ海を超えてバシー海峡、さらには太平洋に潜水艦を配備することを警戒している。中国の潜水艦弾道ミサイルが米国本土を威嚇する恐れがあるという憂慮のためだ」。

中国の海洋進出が積極化すると共に、周辺国は警戒を強めている。豪州が新鋭潜水艦12隻の建艦計画を発表したのも中国警戒の表れである。この建艦に当たっては、日・独・仏のいずれかと技術提携する方針を発表している。日本はこれに応札する方針を立て、米海軍の後ろ盾で熱心な売り込みを図っている。この問題については、すでにこのブログで取り上げている。

米海軍が熱心にバックアップしている理由は、日本の通常型潜水艦の性能が極めて優秀であることだ。豪州の潜水艦に米国製装備を付けて、日米豪海軍の一体的な運用を目指している。米国は同時に、通常型潜水艦技術を習得したいという狙いもある。このように、日本の潜水艦技術は世界最先端にあると指摘されている。日本の潜水艦を最も怖れているのが中国だ。日豪が、高性能潜水艦部隊で中国艦隊と対峙すれば、無力化させられる実力を持つ。最近、中国の対日外交冷え込みは、これが原因である。

⑤「日本は防衛装備を積極的に支援して中国に対する警戒・監視活動を助けている。2013年に公的開発援助(ODA)の形で巡視船10隻をフィリピンに供与することに決めた。建造費は128億円(約1370億ウォン)ほどで、この夏から引き渡しが始まる。海上自衛隊の練習機TC90を5機、警戒・監視用で貸与する案も検討中だ。フィリピン国防部内では海上自衛隊のP3C哨戒機と潜水艦まで購入しようという声も出ている。昨年6月の両国の連合訓練当時にはフィリピン兵士がP3C哨戒機に搭乗もした」。

フィリピン海軍は事実上、戦力ゼロとされている。日本は海軍力整備を支援すべく、巡視船10隻をフィリピンに供与する。さらに、海上自衛隊の練習機TC90を5機、警戒・監視用で貸与する案も伝えられている。海上自衛隊のP3C哨戒機と潜水艦まで購入しようとの声もあると言われる。日本の潜水艦の性能が抜群であることが理由である。

ラオスの首都ビエンチャンで開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)外相会議は2月27日、中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題に対して全会一致で「深刻な懸念」を表明して閉幕した。従来よりも踏み込んだ表現で、中国をけん制したものだ。ASEANが中国への懸念で一致した背景には、南シナ海への海洋進出で先鋭化する中国の動きがある。

中国は、ASEANからも浮き上がった存在となっている。最も身近なアジア外交で、孤立が目立ってきた。中国は、中東やアフリカへ外交勢力の拡大をしている。アジアの足元では、ぐらついているのだ。その「主犯」が日本である。そう思いこみ逆恨みしているのだろう。元凶は、中国自身である。身から出たサビなのだ。
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