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中国、「米軍巻き返し」南シナ海での強硬策が「墓穴掘る」

勝又壽良の経済時評 2016-03-27 04:01:10

エコノミック・ショート・ショート

端から見ていておかしいほど、中国政府は慌てふためいている。海洋進出で周辺国を軍事威嚇してきたが、米軍の巻き返しに遭遇しているのだ。この程度のことが想定できずに、身勝手な軍事行動を取っていたとしたならば、軍事戦略としては落第である。「四面楚歌」のなかで、ひたすら周辺国を威嚇し続ける。成算はあるのか。

中国が、「孫子の兵法」を100%信奉していることは間違いない。南シナ海での島嶼を勝手に埋め立てて軍事基地化する。既成事実を積み重ねて、周辺国を黙らせる戦法に違いない。こんな不条理なことが現代において許されるのか。「友邦国」ロシアが、クリミア半島を手に入れた前例に倣って、中国も強攻策を採っている。そうとすれば、大間違いであろう。アジアは、そんな無法が通じない。米国という警察官が控えているのだ。

アジアは、経済発展できる余地を残している。米国は20世紀初めから、アジアの安全保障に重大関心を寄せてきた。この地域は、米国という警察官がいれば十分だ。中国は、勝手にここへ割って入ってきたが、米国や周辺国を敵に回してやっていけるのか。大変な誤算であることに気付いていないのだ。アジア各国は、中国を尊敬するどころか、疫病神と見ている。中国が権勢を振るっても、これに従う国はわずか。自ら、経済的な基礎体力のなさを悟るべきである。瓦解寸前の経済状況である。

『ロイター』(3月20日付)は、次のように伝えた。

①「日中両政府による2月末の外務次官級協議で、中国側が、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で南シナ海問題を取り上げれば『中日関係改善に重大な影響が出る』として、議題から取り下げるよう日本に要求していたことが19日、分かった。日本は、中国による人工島造成や軍事拠点化を国際社会は容認しないと拒否。平行線に終わった。複数の日中外交筋が明らかにした。安倍晋三首相は、4月に広島市で開催する先進7カ国(G7)外相会合で南シナ海問題での結束を確認し、5月の伊勢志摩サミットの首脳宣言で『法の支配』の重要性を明確に打ち出したい考えだ」。

中国政府が、日本政府を「恫喝」したのだ。G7の主要7ヶ国首脳会議で、南シナ海問題を取り上げれば「中日関係改善に重大な影響が出る」として、議題から取り下げるよう日本へ要求した。中日関係改善に重大な影響が出るとは何か。困るのは中国だろう。日本企業が中国へさらなる資本進出しなければ、技術も経営ノウハウも得られない。中国政府が、第13次5カ年(2016~20年)計画で6.5%以上の経済成長目標を立てている。これを受けて地方政府は、日本企業に「お百度参り」して中国進出を懇願している。こういう実情からすれば、中国政府の「大言壮語」(ほら吹き)も、ほどほどにすべきである。日本に向けた大言壮語は、反発を買うだけで無益なのだ。中国の恫喝に驚く日本であるまい。科学的にも後進国の中国が、吠えたところで空虚なものである。

『JBpress』(3月19日付)は、古森義久氏の「中国のアジア戦略が失速、日本への態度も軟化?」を掲載した。

②「中国の習近平政権は、米国への挑戦的な戦略を進めるとともにアジアでの勢力拡大にも努めてきた。しかし、ここに来てアジア戦略は壁にぶつかり、修正を試みるようになった。日本に対しても、この1年半ほど続けてきた安倍晋三首相『悪魔化』キャンペーンを減速させ、態度を軟化させる戦術を見せ始めた。米国のベテラン中国研究者であるジョージ・ワシントン大学のロバート・サター教授は、中国の対アジア戦略の現状をこのように明らかにした」。

サター教授は米国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議などの中国専門官として30年以上を過ごし、中国の対外戦略研究では米国で有数の権威とされている。このサター教授の分析は、以下に要約されている。

③「中国にとってアジアでの活動はどれほど重要なのか。サター教授は次の諸点を挙げる。
(1)中国の対外政策は、これまで一貫してアジア地域に主要な注意を向け、アジアでの影響力の行使を最大限に試みてきた。
(2)中国はアジアで安全保障と主権に関する様々な問題を抱えてきた。なかでも台湾問題を最も重視してきた。
(3)アジアでの経済活動は、中国の経済全体のなかで最大の比重を占めてきた。
(4)中国自身は、アジアで確固たる力の基盤を築いていないと他の地域でリーダーの役割を果たせないと判断している」。

中国は地域覇権を狙っていることは明白である。それ故、ことあるごとに日本批判を重ね、アジアにおける日本の地位低下を狙っている。秦の始皇帝が行った「合従連衡」策を用いて、長期的な日本没落を希(こいねが)う腹黒さを見せている。中国外交の基本は「排日」である。その隙を衝いて、周辺国を自国の「臣下」に組み入れる。2000年前の発想を抱いている。

中国が、アジア外交で実力を付けるには経済力の発展が前提である。だが、成長を急ぎすぎた反動でバブル経済に突入。目下、その後遺症に苦しんでいる。歴史的に見て、中国のバブル経済の規模は、「空前絶後」であろう。「社会主義市場経済」のもたらした無軌道経済が、今後の回復に長期間を要することを予測させている

④「サター教授は、以上のような中国のアジア戦略の特徴を挙げた上で、戦略の大きな目標は、米国に対抗し、アジアでの米国の力を後退させる『パワーシフト』だと説明する。その戦略が、この2年ほどの間にどのような結果をもたらしたのかについて、以下の諸点を挙げていた。

(1)中国の強引な領有権主張、国内のナショナリズム、軍事力増強、一党独裁体制、一方通行の投資規制などが、アジア諸国のネガティブな反応を強めた。
(2)習近平主席の『新シルクロード構想』(注:一帯一路構想)は計画どおりに進まず、パキスタンやインドネシアでの鉱山事業が失敗した。中東と北アフリカへの投資も莫大な損失を生じた。
(3)東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との貿易と投資が伸び悩んでいる。
(4)韓国、オーストラリア、ミャンマー、台湾との貿易や投資は高い水準にあるが、中国の影響力の増大にはつながっていない。
(5)アジア諸国の多くが、中国との有事を想定した軍事面での『ヘッジ(防御)』作戦を開始し、中国の影響力拡大にとってさらなる障害となってきた。
(6)オバマ政権の対アジア政策は欠陥もある。だが、米国の開かれた国際経済システムやアジア諸国との軍事協力の強化は、中国の立場を不利にしつつある」。

中国といえども、新興国である。新興国共通の現象は、先進国に向かって無謀な軍事的競争を挑む点にある。第二次世界大戦時の日本やドイツが、まさに新興国としての軍拡であり侵略戦争であった。中国は、米国に対して軍事的に挑戦するポーズをはっきり見せている。その一環が先ず、日本を叩き周辺国から孤立させる戦略である。皮肉にも、中国は孤立する羽目に陥っている。アジア諸国が、日米側に立つ姿勢を鮮明にしてきたからだ。中国は、慌て始めているのだ。

アジア諸国が、中国の軍拡に危険性を感じ始めていることは事実だ。各国が対中国に備えた「ヘッジ(防衛)」をし始めている。ヘッジの先は日本であり米国である。これにも中国は予想外のこととして慌てている。次に、その具体的な動きを紹介したい。

『毎日新聞』(3月19日付)は、次のように伝えた。

⑤「米国とフィリピンの外交、国防担当高官は3月17、18日にワシントンで戦略協議を行い、フィリピン国内の5基地を米軍が共同使用することで合意した。米側はフィリピンの海洋安全保障能力向上のための資金拠出を米議会に求める。南シナ海の軍事化反対や紛争の平和的解決でも一致した。海洋進出を続ける中国をけん制する意図がある。米国務省によると、米軍が使用可能になるのは、中国が領有権を主張する南沙(英語名スプラトリー)諸島に近いアントニオ・バウティスタ空軍基地(フィリピン西部パラワン島)やマニラ郊外の空軍基地など。米軍によるフィリピン国内基地の使用は、2014年に両国が結んだ軍事協定に盛り込まれ、1992年までに一度は撤退した米軍が回帰する方向が決まっていた」。

米軍が1992までに、フィリピンから撤退した空白をついて、中国は南シナ海へ進出してきた。油断も隙もならない相手が中国である。今度こそ、アジアに軍事空白をつくらず、中国進出を食い止めなければならない段階になった。米比両軍が共同利用する5基地のうち、中国が占拠する南沙(英語名スプラトリー)諸島に近いアントニオ・バウティスタ空軍基地は、中国軍の動向を探る絶好の位置にある。ここへ、「THAAD」(高高度ミサイル)を設置すれば、中国軍の動きは丸裸になる。中国が邪悪な戦術を使うと、こういう結果を招くという好例であろう。

ベトナムでは、米海軍の首脳が訪問した。

在ベトナム米国大使館は3月18日、米太平洋艦隊司令官のスコット・H・スウィフト海軍大将と米海兵隊のジョン・A・トーラン中将がベトナムを訪問したと発表した。米海軍と海兵隊の司令官が同時にベトナムを訪問するのは異例で、ベトナム海軍の将校と情報交換した(『日本経済新聞』3月19日付)。

中国軍の南シナ海への進出は、明らかにリアクションを生んでいる。周辺国は一斉に防備を固め始めた。中国は、逆に包囲される形になる。軍拡によって、周辺国の反発と憎しみを買うだけである。無駄な軍事費にカネを使う中国は、内政面で解決不能な難題を背負っている。習近平氏は、中国を最終的にどこへ引っ張って行くのか。目的地が見えないのだ。
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