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韓国の大誤算! 国益は中国より日米、それにようやく気がついた 朴槿恵はまもなく習近平と決別する

現代ビジネス 5月2日(月)11時1分配信

 総選挙で大惨敗を喫した朴槿恵(パククネ)政権は、任期2年を残してレイムダックとなるのか。「モノを言う大使」武藤正敏氏(前駐韓大使)が、「韓国の大誤算」について緊急直言。中国と決別し日米韓の連携強化こそが正しい道だと説く。
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朴槿恵の反日は本心ではない

 4月13日に実施された韓国の総選挙(全300議席)は、朴槿恵大統領率いる与党セヌリ党が、146議席から122議席と大きく減らし、目標としていた過半数に届かないどころか、第1党からも滑り落ちました。強引な政治手法への反発から、首都圏で逆風が吹いたのです。

 朴槿恵大統領の5年の任期のうち、すでに3年2ヵ月が過ぎようとしていますが、実は選挙前からレイムダック化が進んでいました。

 政権の支持率は、歴代大統領の同時期よりもよいのですが、与党が議席を減らしたこれからは、政権運営が大変です。韓国には、'12年5月に成立した「国会先進化法」という法律があり、与野党間で意見が食い違う法案は、本議会で在籍議員の5分の3以上の賛成がないと成立しないからです。

 今回の選挙では、親日派の落選が目立ちます。せっかく昨年末に日韓で合意した慰安婦問題の進展が滞ってしまわないか、懸念されます。私が駐韓大使時代に日本大使館前に設置された「少女像」の撤去も遅れるでしょうが、日本はこの件で騒がず、冷静に対処を求めていくべきです。

 韓国人と話すと分かりますが、いまや韓国で反日的な言動をする人はごく一部であり、多くの韓国人は日本のことを嫌っていません。ところが政治家とマスコミが「反日無罪」という精神文化に支配され、束縛されていて、それがまるで国民全体の意見であるかのような印象を与えるのです。

 日本では、歴史問題にこだわる朴槿恵大統領が、そうした反日派の頭目のように思っている人もいますが、私はそうは思いません。慰安婦問題では、確かに頑なな姿勢が目立ちましたが、それは1965年に日韓国交正常化を成し遂げた父・朴正煕(パクチョンヒ)大統領が、「日本との歴史問題をないがしろにして国交正常化をした」と、批判されているからです。

 私が駐韓大使をしていた時、まだ大統領になる前の朴槿恵さんを大使公邸に招待し、晩餐をともにしました。彼女は終始にこやかに、和食を召し上がっていました。

 朴槿恵大統領は聞き上手で、自分から積極的に話すタイプではありません。そして、決して反日派ではありません。

 私がソウルを離任する際にも、日本茶を贈ったのですが、「帰任前のご多忙な時に、私のことを気にかけていただきありがとうございます」と、丁寧にお礼を言われました。

日韓対立は中国の思うツボ

 朴槿恵政権になって、韓国外交が迷走し始めたのは事実です。それは、「安保は米国、経済は中国」という韓国の戦略的な立場を崩し、ひたすら中国の機嫌を損ねないように振る舞ったからです。

 その一方で、日本に対しては、執拗に歴史問題にこだわるばかりで、日本の能力を韓国の外交や経済活動に活用しようという視点が欠落していきました。

 本来、「価値観を共有する重要な隣国」として、日本との協力関係を推進していくことが、韓国の国益につながるはずです。それを、相互協力そのものを否定してしまったのです。

 しかし、昨年12月28日になってようやく、岸田文雄外相が訪韓して日韓外相会談を行い、慰安婦問題の解決を巡って二国間の合意がなされました。ここでは、日韓交渉のお家芸とも言える「白黒をはっきりつけずに決着へ持っていく」という外交手法が、巧妙に使われました。

 この会談に先立ち、日韓局長級協議を12回も行いました。最大のポイントは日本政府の法的責任をどう取り扱うかでした。

 その部分の表現は、「日本政府は責任を痛感する」となっていて、日本政府が難色を示していた「法的責任」は回避されています。一方、韓国側からすれば、元慰安婦の名誉回復につながるとして、納得できます。これで日韓は仲直りができたのです。

 この合意は米国を始めとする国際社会も認めており、韓国は後戻りできません。

 韓国経済が中国を抜きにして成り立たないことは明らかです。輸出全体の25%も占めているからです。

 しかし、歴史認識に関わる問題についてまでも、中国に依存して日本を責め立てようとする韓国の姿勢には、大いに違和感がありました。

 '14年1月、朴槿恵大統領が習近平主席に依頼していた「安重根記念館」が、開設されました。伊藤博文初代韓国統監を暗殺した犯人を記念する施設が、中国人の手で建てられたのです。韓国は「反日」という共通認識を持ち出して中国に擦り寄り、中国もその価値を認めて応じたわけです。

 もともと中国は、ときの権力者が自分にとって都合よく歴史を作り替えてきた国です。最近では、天安門事件という歴史的事実を抹消しようとしています。そういう国と歴史問題で共闘するなどということ自体が、「原理原則」を貫く朴槿恵大統領の信念にそぐわない行動です。

 そもそも歴史問題を持ち出すのなら、朝鮮戦争(1950年~'53年)で、100万人を超える韓国の市民が中国軍に殺されているにもかかわらず、中国には嫌味の一つも言えないのです。

 一事が万事で、経済面を見ても、昨今の韓国の景気後退の原因が中国経済の減速にあるのは明らかなのに、アベノミクスの犠牲になっているという論理で片付けようとしてきました。

 ともあれ、日本と韓国が仲違いすることは、中国の思うツボでした。中国は、日韓対立を利用して、アジア太平洋地域のパワーバランスを変動させてきたのです。

韓国経済はもう待ったなし

 現在、韓国経済は深刻な景気停滞に陥っています。輸出は落ち込み、財閥から中小企業まで大変なことになっています。

 韓国では「七放世代」という言葉が流行語になっています。これはいまの若者たちが、「恋愛、結婚、出産、マイホーム、友人との交際、夢、就職」を放棄した世代という意味です。それほど若者たちの将来ビジョンが見えなくなっているのです。韓国の'14年の自殺率は、人口10万人あたり27・3人にも上り、OECD加盟国中、最悪です。

 韓国は、経済が悪化すると政府が「歴史」を持ち出して、日本を非難する傾向があります。

 しかし歴代の政権で、韓国経済を発展させた政権は、いずれも日本と親密な関係を築いていました。それは、朴正煕、全斗煥(チョンドウホアン)、金大中(キムデジュン)の各時代、及び李明博(イミョンバク)時代の前期です。逆に反日を振りかざす政権ほど、韓国経済を悪化させているのです。

 現在の日韓関係における最大の課題は、両国間に戦略的な対話がないことです。特に、安倍晋三首相と朴槿恵大統領が胸襟を開いて話し合う機会が少ないので、日韓双方の国益となるビジョンの構想ができなくなっています。

 その際、最も重要なポイントは、中国に対する戦略です。まずは日韓で、中国に対する認識を共有し、中国が東アジアで開かれたパートナーとなるよう力を合わせて後押ししていくしかないのです。

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むとう・まさとし/1948年生まれ、東京都出身。2010年~'12年、韓国語を話す初の駐韓大使として活躍。昨年『日韓対立の真相』(悟空出版)がベストセラー。第2作『韓国の大誤算』(同)を上梓
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