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中国が迫られる4つの方向転換

東洋経済オンライン / 2016年5月24日 17時0分

中国の南シナ海進出が招いた豪州の政策転換 「国際的なルール」は全関係国を拘束すべきだ

南シナ海で中国が人工島を造成し、軍事拠点化を進めていることで、豪州は政策変更を余儀なくされた。同国の新防衛白書で、「ルールに基づく国際秩序」の維持が優先事項の中核に据えられたのだ。

一国の防衛関係の綱領にこうした文言が記載されるのは異例だ。しかも、これまで米国の政策を後追いしてきた豪保守政権の手によって書かれたのだから、驚きに値する。

豪州は米国という戦略的パートナー、中国という経済的パートナーとの間でゼロサムに陥る選択だけは避けたいと考えている。そのため防衛白書の文言の選び方には、かなり工夫が凝らされている。

特徴は、すべての関係国・地域に対して拘束力を発揮するというものだ。米国の政策立案者は他の多くの国とは異なり、こうした点に本質的な魅力を感じない。口ではこうした概念を褒めそやすが、国際的なルールに縛られようという発想は、米国当局のDNAには含まれていないのだ。その最たる例は2003年のイラク侵攻だ。さらに米国は、南シナ海で非常に重要な意味を持つ、海洋法に関する国際連合条約 (UNCLOS)にも加盟していない。

中国は4つの方向転換を迫られる

とはいえ、豪州の防衛白書が直接的に牽制しているのは中国だ。南シナ海で起きていることが何であれ、ルールに基づく国際秩序が尊重されているとは断じて言えない。この方針により、中国は以下の4点で方向転換を迫られそうだ。

1点目は、南シナ海の西沙(パラセル)諸島や南沙(スプラトリー)諸島などで領有権を主張している島々について、中国は個別に切り分けて対処する必要が生じそうなことだ。さらに領有権の主張が他国と重なった際、国際的な仲裁機関を通じた解決が望まれることになる。

2点目は、中国が独自の基準線として、その内側の領有権を主張している「九段線」の放棄を迫られることだ。また放棄のみならず、「歴史的水域」「伝統的な漁場」といった確たる根拠のない主張も撤回する必要が出るだろう。

3点目は、中国が岩礁や砂州で実施している埋め立てについて、自制を求められることだ。中国はこれらの場所に、滑走路など軍事利用が可能な施設を建設し、隣接する水域や空域から他国を閉め出そうとしている。今後その推進にも、一定の制約がかかる可能性がある。国際法でそうした建造物が認められることはあったが、小規模の施設ばかりだった。しかもこれまで軍事利用が認められたことはない。

4点目は、外国の航空機や船舶による情報収集活動を認める姿勢が中国に求められることだ。中国は今それを禁止しているが、その根拠は希薄といわざるをえない。

中国が一般に受け入れられている国際ルールに従って行動することを拒み続けるかぎり、他国には中国を押し返す大義名分があることになる。米国が実施している航空機の通過や、「航行の自由作戦」のような船舶による演習はこれに当たる。

豪州など他国も個別にこうした行動に出ることが考えられる。中国は商船の航路や民間航空会社の航路を妨げる意図はないと主張しているが、これは信じるべきだろう。というのは、その約束を違えると、自らの顔に自らの手で泥を塗ることになるからだ。しかし中国の態度は、地域や世界の国々に我慢の限界を強いていると言える。

豪州自身も態度を変えねば

「ルールに基づく国際秩序」を政策の中心に据えれば、豪州自体もその方針を実行する責任を負う。これまで豪州は、国際司法裁判所や国際的な紛争解決機関の場に出ることを極力避けてきたが、そうした姿勢を見直す必要が生じるだろう。

この不完全な世界では、いい加減な行動を取ったとしてもかなりの部分が許容されてしまう。だが、偽善というものは必ず自身に跳ね返ってくる。他国に「ルールに基づく国際秩序」を説教しておきながら、そうしたルールの一部を自国が守らないようでは、みっともないと言わざるを得ない。

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