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領土問題解決に向け、露世論を動かせるか? 「食い逃げ」の恐れも

産経  【対露経済協力】  2016.11.3 23:38

 対露経済協力はエネルギー分野で「象徴的なプロジェクト」(政府筋)を作る方向で詰めの協議が始まった。ロシア側が強く求める同分野での協力に応え、平和条約締結交渉が進展するよう世論に働きかける狙いがある。ただ、領土交渉で打開策が見いだせなければ「食い逃げ」との批判を受けかねず、安倍晋三政権にとって両刃の剣となる。

 「安易な約束をすれば経済協力だけ取り込まれる」。国際情勢に詳しい自民党議員は懸念を漏らす。
 ロシア国内では、日本の経済協力に対し期待が増す一方、来日したマトビエンコ上院議長が北方四島の主権を日本側に引き渡す考えはないことを表明するなど、領土問題ではかたくなな姿勢を崩していない。

 政府は経済協力は「ウィンウィンの関係」(経済産業省)として、日本側にも多くの利益があると強調するが、領土交渉が進展しなければ協力案件を先行させた政権に批判となって跳ね返るのは避けられない。 一方、世耕弘成経産相は3日、記者団に対し「経済協力プランがしっかり動き出すことで良い雰囲気で領土問題の交渉ができる環境が整う」と述べ、対露協力が領土問題解決の呼び水になると強い期待を示した。

 ロシア国内では、北方領土は第二次世界大戦で多くの犠牲を出した代償との思いが強く、返還要求はナショナリズムを刺激する。このため、政府は経済協力の協議をあえて先行させ、ロシア国民に日露融和を訴えることで、プーチン大統領が領土問題で決断しやすい環境を作る戦略を立てた。

 特にロシア経済は長期に及ぶ資源価格の低迷や、欧米の制裁で疲弊し、天然ガスや鉱物などの開発資金が不足している。豊富な資源を抱えるものの、埋蔵地は北極圏やツンドラ地帯など氷に閉ざされた場所が多く、開発が難航する案件も少なくない。

 健康寿命を延ばす日本式医療の導入など、ロシア国民の生活水準の向上に結びつく協力案件を多く盛り込む見通しとなったのも、ロシアの国民感情に配慮したためだ。ただ、日本側の思惑通り経済協力がロシアへの“貸し”となる保証はなく、領土交渉は具体的成果を求められる正念場を迎える。(田辺裕晶)
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