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パックスアメリカーナの崩壊 トランプ氏が勝利し中世世界が表れる

おゆみ野四季の道  新  2016年11月10日 (木)

 歴史の転換点に遭遇することはめったにあることではないが、これはまさしく歴史に転換点だ。パックス・アメリカーナが崩壊したからだ。
戦後の約70年間、世界はアメリカの下での平和を享受してきた。小さな戦争はいくらでもあったが、第二次世界大戦のような大戦争が起こらなかったのは、アメリカが世界の警察官としてにらみを利かせていたからだ。だがそのアメリカは世界の警察官であることに疲れ切り、自らその立場を放棄した。

「アメリカは世界のことなどかかわらない。アメリカはアメリカのためだけに生きる。お前らは勝手に生きろ」トランプ氏はそう宣言してアメリカの大統領に就任した。
この70年間、アメリカがしたことは世界市場を一つにすることで、その思想はグローバリズムと言われたが、その恩恵を得たのはアメリカでは一握りの強い人だけだった。
いわゆる富んだ1%が99%を支配する構造で、ウォール街を支配した金融資本とその周辺に群がった人々である。

 グローバリズムのおかげで金融業は隆盛を極めたが、一方貿易の自由化で製造業は壊滅的な被害をこうむった。自動車産業や鉄鋼産業は政府の支援でかろうじて生き残っている状況であり、かつてそこに勤めていた白人層は大方解雇されてしまった。
「アメリカは世界一裕福なのになぜおれたちは貧乏なのだ。なぜ投資会社や金融機関のディーラーだけが億万長者で、黙々と働いてきた俺たち白人が失業者なのだ」
アメリカのプア・ホワイトの怒りはすさまじく、事前の世論調査では常にヒラリー氏が優位に立っていたにもかかわらず、トランプ氏の圧勝に終わった。
ヒラリー氏の支持者の多くが棄権し、トランプ氏の支持者はほとんど命を懸ける思いでトランプ氏に投票したからだ。

「もう嫌だ。世界のことではなく俺たちのことを考えてくれ。ウォール街などくそくらえだ」
トランプ氏のあの騒がしい言説も言っていたことは明白だ。
「世界のことなど知らねい。貿易自由化などもってのほかだ。TPPはけとばせ。軍隊を世界中から引き揚げろ。いてほしかったら傭兵料を払え。くそったれのメキシコ人もイスラム教徒もアメリカから出ていけ。俺たちは俺たちだけで生きるから、お前らもお前たちだけで生きろ、バッキャロー」

 パックス・アメリカーナの時代はアメリカに頼っていれば生きられたが、それが終わってしまえば自力で生きるほかに手はない。日本は日米安保条約のおかげで中国や北朝鮮の核の脅しから守られていたが、安保条約が空洞化すれば独自で軍備を強化する以外生きる道はない。核の脅しには核で対抗する以外に手はないのだが、それが不可能なら中国や北朝鮮の属国になることになる。

 現在貿易量は世界的規模で激減しているが、今後アメリカが保護主義に走るから更なる貿易量の減少が続くだろう。貿易立国を誇ってきた韓国や中国は国内市場を開拓しない限り経済崩壊が始まるが、中国はともかく韓国が生き残るすべはなくなった。
日本もアメリカ相手の輸出貿易はほとんど期待できなくなり、輸出産業は東南アジアとインドに活路を求めるだろうが、それでも年年歳歳その規模が縮小していくことは免れない。

 こうして世界は徐々に縮小し、グローバリズムの時代からローカリズムの時代に移り、GDPは年々縮小するからこうした指標を見ても意味がなくなくかる
かつてローマ帝国が崩壊した後の地中海世界は、アフリカ北部からローマへの穀物輸出がなくなり、ワイン貿易もなくなり、ローマ街道は荒れるに任され、水道や下水道の公共施設を補修できなくなって過去の遺産となり、イタリア沿岸の都市はイスラムの海賊の棟梁跋扈に悩まされたが、その21世版が今始まろうとしている。

 かつてパックス・ロマーナの後、地中海世界は1000年の中世世界に入ったが、今我々はその中世に再び向かっている。
互いに国を閉ざし、外国人はすべて敵と思い、自給自足生活を基本として、顔見知りの人々とだけ暮らし、違反者は魔女として焼き殺したあの中世世界である。
思えばパックス・アメリカーナの世界はアメリカが世界を睥睨してくれていたおかげで安全で快適だったが、その世界が崩壊する。
私が生きているうちにパックス・アメリカーナの崩壊があるとは思いもしなかったが、時に歴史の流れは突然津波のように襲ってくるものだ。
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