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アメリカ経済の衰微と人権外交の終焉 トランプ氏のアメリカ一国主義

おゆみ野四季の道  新 2017年1月 7日 (土)

世界から人権思想が消えつつある。日本人は人権思想は不易の真理であって、未来に向かってあらゆる国にいきわたっていくと思っているがそれは誤解だ。
この人権思想が人類共通の資産だといい始めたのは戦後のアメリカで、それ以前は白人社会だけの特殊な考え方だった。
白人以外は人類とみなされていなかったから黄色いサルや黒いサルに人権があるはずがないのである。

 第二次世界大戦後この人権思想を世界に広めようと努力したアメリカは、資本主義経済の最高段階になればどこの国も人権国家になるとの信念を持っていた。
簡単に言えば豊かになれば人は人に対してやさしくなると確信していたといえる。
そしてその最後の人権外交の推進者がオバマ大統領で、オバマ大統領はシリアのアサド政権が毒ガスが使用したのを見て、空爆を決意しようとしていた。
「この人権に対する犯罪者に罰を与える」
その空爆をプーチン大統領によってとめられたが、あの時がアメリカの人権外交の分岐点だった。

 現在アメリカはトランプ新大統領の下でアメリカ一国主義に回帰しているが、これはアメリカの資本主義に限界が発生したため、人権を世界に広める余裕がなくなったからだ。
「アメリカの労働者が貧困化している。これを救うのが俺の役目で他国のことなど知ったことではない。強いアメリカを取り戻そう」
救うべき人類はアメリカ国内だけにとどめ、外国人には人権などないと主張しているのと同じだ。

 今特にメキシコ人がやり玉に挙がっており、1100万人いるメキシコからの不法滞在者は国外に追放しようとしているし、メキシコの工場はアメリカのものではないからメイド・イン・メキシコ製品にはすべて35%の高関税をかけようとしている。
ここにはメキシコとともに栄えるという思想はなく、メキシコの利益はアメリカの損失という思想しかない。

 トランプ氏の攻撃でフォードはメキシコに工場を建設するのをあきらめ次の攻撃はトヨタに移った。昨年11月に起工式を終えたトヨタのメキシコ工場は工事中だがその建設に待ったをかけ「あんたどうしてもメキシコでカローラを生産するなら35%の関税だ」とトランプ氏は叫びまわっている。
本来はNAFTAによってアメリカ、メキシコ、カナダの3国の間では自由貿易協定があり、関税は原則無税なのだが、トランプ氏にとってメキシコは外国でありしたがって保護する対象ではなく「メキシコ人のことなどどうなってもしったことではない」からだ。

 自由貿易は推進することで世界中が豊かになると考えられ、ある意味で人類みな平等という基本思想に支えられているが、トランプ氏にとって人類とはアメリカ人のことだから自由貿易などはくそくらえになる。
アメリカがこうして人権擁護から降りてしまえば、人権擁護の主体がなくなり後はジャングルのおきてしかない。
ロシアはクリミヤとウクライナを再び領有し、シリアの反政府勢力を容赦ない空爆で壊滅させた。
中東の報道機関アルジャジーラが毎日のように「アレッポで民間人の犠牲者が出ている」と報じてもプーチン大統領の耳には念仏としか聞こえない。プーチン氏のロシアは遅れた資本主義体制でありもともと人権思想もないから当然だ。

 ロシアより遅れている資本主義体制の中国は国内ではウイグル人とチベット人を理由なく捕まえては拷問にかけている。こちらもが人権などもともとないから当然の行為をしているに過ぎない。
人権思想とは高度に発展した資本主義国に特有のものであり、アメリカが人権外交から降りた現在残された人権政治家は移民に寛容なドイツのメルケル首相と、南スーダンの紛争を停止するためなお国連軍に協力しようとしている安倍首相ぐらいになってきた。

 繰り返すが人権とは特殊な歴史的現象でアメリカが第二次世界大戦で勝利し、世界のリーダに君臨していた間だけ擁護された思想だ。アメリカの経済成長が弱まり白人のブルーカラーの職場がなくなるほど貧困が広まれば、世界に人権を広げる余裕などなくなる。
「くそったれのメキシコ人の生活向上のためにアメリカの労働者が犠牲になるのは許せない。人類とはアメリカ人のことでメキシコ人はアメリカ人ではない」

 トヨタは当惑し、メキシコに進出した約1000社の日本企業は真っ青になっているが、NAFTAは終了しメイド・イン・メキシコの時代は終わったことを認識すべきだ。
一方でトランプ氏のアメリカ一国主義でアメリカに工場が回帰しアメリカ経済は上向くのでアメリカの株式市場ははしゃいでいる。
トランプ氏のアメリカ一国主義が成功すれば二期大統領を務めることは確実と思っていい。
さらにその後の大統領もアメリカ一国主義の成果を見てその政策を推し進めるからNAFTAをあてにするのは首を絞めることになる。

 21世紀に入りアメリカの白人ブルーカラーが貧困化し世界に資本主義とその実態である人権思想を広げることをアメリカは放棄した。
これによってアメリカは復活するが、アメリカ市場をあてに成長していたメキシコや中国や韓国といった貿易立国はその経済基盤が崩壊する。
日本もNAFTAを前提にしたメキシコ進出を見直さなければ明日はない。
資本主義文明が衰微しその中心をなした人権主義も衰微し、他国の人々に人権があると思わなくなりつつある。
かつて太平洋戦争のさなかにアメリカ太平洋艦隊司令長官は「サルを丸焦げにするのが俺の役目だ。かたっぱしからサルを殺せ」と叫んでいたが、その時代に回帰しつつある。
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