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資本主義文明の黄昏 トランプ氏がアダム・スミスを死に追いやった。

おゆみ野四季の道  新 2017年1月22日 (日)

 アダム・スミスが富国論を書いて自由な市場が富を増大させると説いたのはイギリス資本主義が産声を上げていた1776年だが、それから250年の時が経ってその資本主義が黄昏を迎えようとしている。
資本主義文明の命はモノとカネが自由に取引されることだが、トランプ政権の誕生でモノの自由取引が終ろうとしているからだ。
トランプ氏は就任早々TPPからは離脱、NAFTAは見直しをすると表明したが、どちらもアメリカが戦後70年かけてようやくたどり着いた自由貿易の成果だった。

 トランプ氏にとってカネの自由化はウォール街という世界屈指の金融市場を持っているのでアメリカの利益になるが、一方モノの自由化は当初は日本、韓国、そして現在は中国に蹴散らされもはや見る影もなくなった。
アメリカ製造業の代表は自動車産業だが、GMもクライスラーも一旦は倒産し政府の資金援助でかろうじて維持しているし、かつては世界最大の鉄鋼会社だったUSスチールは中国の鉄鋼製品のダンピングで青息吐息になっている。

 アメリカからは工場が消えメキシコや中国に工場が移転して、中産階級だった白人層は一様にプア・ホワイトになり、家を捨てトレーラーハウスでハンバーガーを食べて生きている。
これ以上モノの自由化を推進すればアメリカからは中産階級が消え去る直前になり、アメリカ国民はトランプ氏を大統領に選択し、国境を関税障壁で守ることにした。
「世界は豊かになったがアメリカの中産階級は貧困だ。誰がこんな世界にした」

 それでもアメリカが世界最高の経済力を持っているのは金融産業が世界を睥睨しているからで、現在のアメリカはウォール街が支えているといっていい。
然しここで働くのはアメリカの有名大学の大学院を出た一部エリートだけで、富はこうしたエリートだけに集中し、工場労働者だった中産階級は年を追って貧困化している。

 アメリカの資本主義が金融業だけの片肺飛行になり、そして今トランプ氏は製造業の復活の宣言をしたがこれは保護主義による国内産業保護以外に守るべき方策はない。
「国境を強化し外国製品には35%の高関税をかける。アメリカに商品を売りたければすべてアメリカで生産しろ」
アダム・スミスが目指した自由市場は消え去り、国内市場保護の雷鳴がツイッターで轟いている。

 18世紀、イギリスで産声を上げた資本主義文明は当初はイギリスが主導し、そして20世紀はアメリカが主導してきたが、今アメリカが資本主義のリーダであることをやめると宣言し、そして自由貿易から降りてしまった。
世界の貿易量は減少し始め、中国や韓国といった輸出立国は毎月のように輸出も輸入も縮小している。

 オバマ政権までは「自由貿易こそ世界の人々を幸福にする」としてTPPを推進してきたが、今やTPPは海の藻屑だ。
21世紀に入り製造業については自由貿易の時代は終わったといっていい。
まだ金融業についてはウォール街を中心に自由な市場を求めているが、モノとカネが一体となって市場を形成している以上この金融業における自由市場の波もいづれ止まる。

 世界中で国境が高くなりモノもカネもそして人の往来も少なくなり、アダム・スミスがあれほど高らかに歌った資本主義文明に黄昏が訪れた。
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