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<米国よ、日本を見習え」アリババ会長の提言>だって?

雨のち晴れの記   2017-02-08 22:10:00

勝又寿良氏のブログでWSJの「『米国よ、日本を見習え』アリババ会長の提言」を知りました。そして以下に紹介しますが、アリババグループのマー会長の認識にいささか驚いた。そしてこの記事が、日本とアメリカと中国のそれぞれの姿を表現しているものと思えた。ぜひご一読願いたい。

2017年01月28日ウォールストリートジャーナル
他方で中国政府上層部や馬 氏などの有力者は、寛容で穏やかな日本の資本主義を心から尊敬している

「米国よ、日本を見習え」アリババ会長の提言
中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)の創業者で会長の馬雲(ジャック・マー)氏は、ドナルド・トランプ米大統領に伝えたいことがあるようだ。米国を再び偉大にするためにもっと日本を見習った方が良いというコントラリアン(逆張り)的な提案だ。

①馬氏がはっきりそう言ったわけではない。だが、このほどスイスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で米国資本主義が直面している存亡の危機について見解を述べた際、彼の意味するところはこれだと思った。米政府はここ数十年で本来なら中間層のために使うべきだった14兆ドル(約1580兆円)もの資金を戦争で浪費したという彼の主張は、あちこちのメディアで取り上げられた。米国は資源の配分や重点項目の設定を間違えたために、インフラ、教育、医療保険、景気刺激策が後回しになってしまった、と馬氏は話した。

②この「本来なら国民のためにお金を使わなければならない」という発言は、再び貿易戦争を開始するとして中国を脅しているトランプ氏が耳を傾けてくれることを期待してのものであることは明らかだ。「他の国々が米国の雇用を盗んでいるわけではない。米国の戦略のせいだ。適切な形で資金を配分しなかった米国が悪いのだ」

③馬氏は中国政府の回し者だと切り捨てる人もいるだろう。馬氏が電子商取引市場での独占的地位を維持する上で中国政府との関係が重要だからだ。一方、中国政府は欧米型民主主義よりも共産党体制の方が優れているとアピールしており、共産党機関紙である人民日報は、欧米型民主主義は「拉致され」、「資本主義者が利益を追うための武器と化した」と指摘している。

④だが、ダボス会議での馬氏は中国についてはあまり語らず、日本について話すことの方がはるかに多かった。デフレ、高齢化、政治の停滞といった問題を抱える日本を手本と考える人は現在ほとんどいない。だが、他国に比べて平等主義に立脚していること、社会が安定していること、100%近い識字率、持続可能な環境、世界随一のインフラといった日本の「財産」は、韓国やベトナムなどの国だけに限らず、中国にとっても目標とするところだ。中国と日本は歴史認識や領有権の問題で対立しているが、中国政府上層部や馬氏などの有力者は、寛容で穏やかな日本の資本主義を心から尊敬している。

⑤米国は「うまく日本を見習う」ことができるのだろうか。日本は、高齢化が進む中で国民が巨額な政府債務を支えきれなくなるのは時間の問題となっている。短期金利がほぼゼロに張り付いたままで、デフレマインドが広がり、必要不可欠な改革に政治家は及び腰だ。海外のエコノミストからすれば、「うまく日本を見習う」ことが必要だとはとても思えないだろう。

⑥しかし、「失われた20年」がすでに「25年」を過ぎ、「失われた30年」まであと少しとなる中で、日本はまだ崩壊していないというのが現実だ。犯罪は急増しておらず、ホームレスが都市に溢れかえることもない。世界一の平均寿命は伸び続けている。景気減速も穏やかだ。家計は変化に適応し、企業は大量のレイオフを回避するためにコストを抑え、銀行は全力で日本経済を支援している。

⑦純粋な自由市場主義者は間違いなく抗議の声を上げるだろうが、日本の社会主義的資本主義モデルでは、米国の資本主義よりもはるかに大きな規模で所得や富の配分が行われている。日本ではこの10年余り、国内総生産(GDP)の数字そのものは縮小したととはいえ、国民1人当たりの所得は欧米諸国に比べてかなり良好な水準を維持している。バブル崩壊以降、米国が戦争に投じた金額として馬氏が挙げた14兆ドル近い富が消滅した国としては悪くない。
⑧日本型資本主義の特徴の一つは、過剰消費など「行き過ぎ」が少ないことだ。例えば、08年の日本には、約14兆ドル相当(これも馬氏が挙げた米国が戦争に浪費した額に近い)の家計貯蓄があったおかげで消費者は何とかやってこれた。一方、米国の場合、家計の大半は給与無しでは2カ月も生活できなかった。これこそが、世界中の政治体制を一変させつつあるポピュリスト(大衆迎合主義)の流れに日本が巻き込まれることなく耐えている本当の理由だ。億万長者や銀行出身者、石油業界出身者が集うトランプ政権が政策を形作っていくにあたり、この点は考慮に値する。

⑨トランプ政権から聞こえてくるのは、規制撤廃、法人税減税、より有利な貿易協定の締結といった話ばかりだ。だが馬氏が指摘するように、IBM、シスコシステムズ、マイクロソフトなど米国の多国籍企業はこの30年間、グローバル化を通して利益を大幅に増やしてきた。馬氏は「(米国のグローバル)企業がこれまでに得た利益は、中国の大手銀行4行を合わせた利益をはるかに上回る。だが、この利益はどこへ行ってしまったのか」と問いかけた。
⑩馬氏によると、そのほとんどはウォール街とシリコンバレーに流れている。そして、このお金で新たな百万長者や億万長者が生まれる一方で、国全体では所得格差が拡大している。企業は利益を共有することも将来の成長や技術革新のための賢い投資を行うこともしていないため、平均的な労働者は不安を抱き、正当に評価されていないと感じている。トランプ政権が一昔前のような戦争に躍起になれば、労働者の意見が十分くみ取られなくなる可能性も高い。中国から製造業の雇用を奪回すべく闘いを挑むというのは時代錯誤も甚だしい。07年に逆戻りするようなもので、17年にやるべきことではない。中国を去る企業の工場の移転先はテキサスやペンシルベニアではなく、インドやベトナムだろう。米国が17年に直面する脅威は国内発の技術変革だ。例えば、デトロイトの自動運転車は脅威だが、深セン市のブラック企業は米国を脅かす存在ではない。

⑪日本の何もかもが素晴らしいと言っているわけではない。日本のモデルにはほころびが見えている。12年12月に誕生した安倍晋三内閣の政策のせいで、超富裕層とその他の国民との格差が拡大し、高齢化が進む一方で出生率は低下し、債務は増加している。安倍首相やトランプ大統領など指導者らが挑むべき課題は、時計の針を戻そうとすることではなく、グローバル化がもっとうまく機能するようにすることだ。安倍首相は日本の緩やかな成長が確実に世界全体に広がるようこれまで以上に努力する必要がある。しかもより迅速な行動が求められている。

⑫ポピュリズムが広がるいま、資本主義のざらついた部分をそぎ落として滑らかな資本主義社会を築くことに成功した日本のことを研究する価値は十分ある。
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アリババのマー会長の提言に名を借りたWSJのトランプ批判である。かなりレベルの高い記事だ。
複雑な構造の記事だし、記者が思って書いたことと違うことを読み手は感じることができる。
①日本型資本主義のとらえ方

マー会長もWSJの記者も日本g沙汰資本主義についての認識が④⑥⑦⑧のフレーズで語られていて、<中国政府上層部や馬氏などの有力者は、寛容で穏やかな日本の資本主義を心から尊敬している> とまで言う。

<日本の社会主義的資本主義モデルでは、米国の資本主義よりもはるかに大きな規模で所得や富の配分が行われている>という認識だ。

そして、WSJの記者の意見として最後の⑫のフレーズ、<ポピュリズムが広がるいま、資本主義のざらついた部分をそぎ落として滑らかな資本主義社会を築くことに成功した日本のことを研究する価値は十分ある>という結語につながる。

②トランプのポピュリズム批判

この記事はまず記者の立場はトランプの動きをポピュリズムと捉えている。そして彼の政策にはフレーズ⑨⑩のフレーズにあるように批判的である。

③核心の問題

「本来なら国民のためにお金を使わなければならない」

<米政府はここ数十年で本来なら中間層のために使うべきだった14兆ドル(約1580兆円)もの資金を戦争で浪費した>というフレーズは、経済の本質をついている。

<日本はまだ崩壊していないというのが現実だ>と言う⑥のフレーズでの日本の状態、そしてフレーズ⑦で言う所得や富の分配が行われてきた、という点に帰結する。

日本がバブルの崩壊に耐えられた国に出来上がっていたのも、「アメリカが戦争で浪費した14兆ドル相当のお金を日本は国民のために使っていた」ということだと馬さんは解釈するのです。

私はこの記事から3つのことを考えます

第一に日本のこと。WSJの記者もマーさんはじめ中国政府の上層部が日本の「社会主義的資本主義」ととらえる日本型資本主義を高く評価していて、それを手本にしたいと思っていることだ。言い方を変えるならば、バブル崩壊後の日本型資本主義は「国民のためにお金を使ってきた」ことで、今もって「寛容で穏やかな日本の資本主義」「滑らかな資本主義社会」を維持しているのだと言える。

WSJが「日本をもっと研究しようよ」と言い出したことが大きな」ポイントだということです。

第二に、日本がポピュリズムに流されないのは核心的問題、「国民のためにお金を使ってきた」ことの意味で、アメリカの戦争を批判すると同時に、マーさんはアメリカに名を借りて中国の共産党を批判しているのです

つまり富の集中が格差を広げ、<資本主義のざらついた部分>が際立つ姿になれば、日本のような寛容な資本主義社会は生まれないということを言っている。

第三に、トランピの政策の誤りを指摘する点だ。特に⑩のフレーズでマーさん言おうがWSJが言おうが同じことで、これがこの記事の核心だ。

つまりトランプの政策への批判です。私はこれには同意するところがある

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院]のダイヤモンドオンライン2017年2月3日の記事

「トランプの下で米国製造業が復活できない理由」
岸先生の指摘にはとても納得がいくものがあります。

・・・トランプの経済政策の何が根本的に間違っているのかを、主に政治的な観点から考えることも必要ではないでしょうか。
そうした観点からなるほどと思える主張は、「トランプの経済政策の根本的な誤りは、本当は労働者を守らないといけないのにもかかわらず、ヒトではなく仕事の量を守ろうとしている」というものです。
そもそも、一国の経済の中で雇用吸収力の大きい産業というのは、時代の推移に伴って移り変わっていきます。いつまでも同じ特定の産業で雇用の量を維持しようとすること自体に無理があるのです。
かつ、産業の競争力と雇用吸収力は異なります。たとえば、米国の製造業での雇用を、恫喝以外の真っ当な政策で維持しようとしても、それは難しいでしょう。というのは、人件費の高い米国では、ロボットやAIによる自動化などを通じて製造業の競争力を強化することはできても、それは製造業の雇用の減少につながる可能性の方が高いからです。
したがって、特に今のようにグローバル化とデジタル化で産業の比較優位、そして産業の競争力の源泉が以前よりも早く変化する可能性が高い中では、製造業という特定の産業での雇用の量を守ろうとするよりも、労働者が産業を問わずよい報酬の仕事を見つけられるようにする方が、経済学的に正しいのみならず、政治的な主張としても長続きする可能性が高いのではないでしょうか。・・・

最後に、トランプの根本的な間違いを、改めて整理しておきましょう。

・強い産業は移り変わる
・政策で守るべきは労働者であり、雇用ではない
・しかし、トランプは雇用を守ろうとしている。

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WSJの記者は、それでも本質的にはグローバリズムを肯定する立場にあって保護主義を否定するように思えます。

本当はここからが本来書きたいとこなのですが、今夜はここkまでかな。

日本型資本主義って労働者を守る経営思想なんですよね。江戸時代から続いていた思想ですよ。1995年に書かれた岩田規久男「日本型平等社会はほろぶのか」(東洋経済新報社)から、滅ぶかもしれない日本の「平等社会」の諸制度が指摘されている。(p7-8)

完全雇用型平等社会を維持してきた諸制度
ここで右に述べてきたことを、日本の完全雇用型平等社会の変貌という観点から整理してみよう。
戦後の日本は、失業率が低く、かつ所得と資産格差が小さいという意味で、先進国の中でも最も平等で、かつ完全雇用が保障された社会を築いてきた。この完全雇用が保障された平等な社会をもたらすことに貢献した制度は次の四つである。
まず第一は、生産性の低い産業を保護することによって、そこで働く人々の雇用と所得とを保障するという制度である。規制きれていない製造業などは、規制されている産業に高い価格・料金を支払って、輸出などで稼いだ余剰分を吐き出すという形で、規制されている産業に所得を分配してきた。
また規制されていない産業で働く人々は買い物に行けば、諸外国に比べて高い買い物を強いられてきた。これも規制されていない産業から規制されている産業への所得分配の一形態である。
ある産業が規制によって競争から保護されれば、そこでの雇用は安定する。さらに価格・料金が規制されていると、企業は価格競争ができないためサービスで競争しょうとする。サービスは人によって提供されるものであるから、そこでの雇用量は規制されていない場合よりも多くなる。ガソリンスタンドで給油してもらうと、二、三人の若者がやってきていたれりつくせりのサービスをしてくれるのはその一例である。ガソリンスタンドは石油の輸入が規制されてきたため、競争から保護されてきた産業の一つである。
第二は、終身雇用・年功序列賃金制といわれる日本的雇用慣行である。この制度のもとでは、若いときには低い給与水準で働き、年齢が高くなってから給与を取り戻すという「賃金の後払い制度」が採用されてきた。若い世代が中高年層に所得分配し、それを次々に繰り返すという仕組みである。また年功序列賃金制度のもとでは、個々人の給与はその能力差よりも小さく設計され、企業内での平等が保たれてきた。
終身雇用制 (定年制がしかれているから、文字どおりの終身雇用制でないことはいうまでもない)のもとでは、従業月は企業の収益が長期にわたって低下しないかぎり、彼自身によほどの問題がなければ解雇されない。九〇年代に入ってゼロ成長が続いても大量解雇が余り発生しないのはこの制度のおかげである。
右のように、規制と終身雇用制とは戟後日本の失業率を主要先進国に比べて大きく引き下げた主たる要因の一つである。
第三は、高い累進所得税と相続税とに代表される税制と年金制度である。累進度の高い所得税は税引き後の所得格差を縮小し、累進度の高い相続税は世代間にわたる資産格差の拡大を防ぎ、年金制度は高齢者間の所得の平準化に役立ってきた。
第四は、税と財政支出による地域間格差の是正である。東京を初めとする大都市圏とその他の地方圏との生産性格差を、自治体財源としての地方交付税や補助金によって埋めてきた。
この財政制度も地方圏での雇用の維持に貢献してきたという意味で、完全雇用の維持に貢献してきた.。

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これらの諸制度を破壊してきたのは、1985年のプラザ合意後のアメリカによるグローバリズムによる日本は界ではなかったのか。小泉政権下での規制緩和、勝ち組負け組などなど、無批判的に古いシステムをアメリカの言いなりになって壊してきた時代があった。その結果が20年以上のデフレ経済から抜け出せないでいる。

民主党への政権交代の出発点は、アメリカと戦わずに、言いなりになってグローバリズムのお先棒を担いだ小泉政権が進めた政策にあるのだろう。

明治維新の江戸時代の全否定、戦後民主化の戦前の全否定、そして小泉時代の日本型資本主義の土台の全否定が、日本の復興を遅らせている原因だといっていい。

国民経済を忘れた「グローバリズム」と言うのは単なる経済の覇権競争に過ぎず、WSJの記事に言う

<馬氏が指摘するように、IBM、シスコシステムズ、マイクロソフトなど米国の多国籍企業はこの30年間、グローバル化を通して利益を大幅に増やしてきた。馬氏は「(米国のグローバル)企業がこれまでに得た利益は、中国の大手銀行4行を合わせた利益をはるかに上回る。だが、この利益はどこへ行ってしまったのか」と問いかけた。
馬氏によると、そのほとんどはウォール街とシリコンバレーに流れている。そして、このお金で新たな百万長者や億万長者が生まれる一方で、国全体では所得格差が拡大している>ということになる。

日本型資本主義をもう一度再考すべきでしょう。自覚的に日本の資本主義を考えましょう。「人にやさしい資本主義」でなければ国はもたない。
そもそも国の経済とは何ぞや、と問えば、「国民をくわせるため」のものでしょう。民のかまどが賑いがなければ、経済は「悪い」経済なのだ。

この問題は、まだ描き切れていません。国民経済が成立して初めてグローバリズムも意味を持つけれど、自立した経済がなければ、添えは単に収奪されるだけ、または収奪すrだけの経済行為となり、不平等をもたらす原因になるだけなのだ。

トランプの誤りと言える部分は、アングロサクソンの資本主義の持つ要因であり、限界化もしれない。彼をわかりやすい人だと思う。アメリカの国民経済を立て直す努力をこれからもするだろう。ただやり方はヤンキーなんだろうなと思う。でも彼の提起した問題を真面目にとらえれば、世界は再び変わると思う。どう変わるか、それは改めて書きます。

<安倍首相やトランプ大統領など指導者らが挑むべき課題は、時計の針を戻そうとすることではなく、グローバル化がもっとうまく機能するようにすることだ>と言うWSJの記者の見方には、「本来の国民経済を確立した国々でのグローバリズム」と言う注意書きをつける。WSJの記者も「グローバリズム=善」の前提に立っていると思う。グローバリズムは強者だけが主張すれば<毒>なのだ。
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