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過剰生産の輸出を企む「一帯一路」 いまだに日本にAIIB参加促す理由

zakzak 2017.05.22 三橋貴明

 中国経済は、現在も過剰投資問題に苦しめられ続けている。特にひどいのが粗鋼と石炭だ。

 2016年の中国の粗鋼生産量は、およそ8億トン。それに対し、素行の生産能力は12億トンもあり、設備稼働率は7割を下回る。石炭の場合、16年の生産量がおよそ33億6000万トン。対する生産能力の方は、57億トンで、稼働率は6割未満である。

 先月21日に閉幕したG20(財務相・中央銀行総裁会議)では、麻生太郎副総理兼財務相が中国経済について、「過剰生産や過剰投資が世界経済に混乱をもたらしている」と懸念を表明した。

 実際、中国は過剰になった粗鋼製品を世界中にダンピング輸出しており、日本の鉄鋼メーカーも被害を受けている。しかも、中国は政府が輸出補助金を付与してまで、世界市場で不当廉売を続けているわけだから、悪質だ。

 17年3月4日、米国の国際貿易委員会が中国産鉄鋼製品に関するダンピングを認定した。炭素鋼板の反ダンピング関税として68・27%、輸出補助金に対する相殺関税が251%。ステンレス鋼板・鋼帯の相殺関税は最大で190・71%という制裁関税が課せられることが決定された。

 5月14日、中国が主導する「シルクロード経済圏構想」(一帯一路)の第1回フォーラムが開催された。一帯一路構想は、ユーラシア大陸を横断する巨大な経済圏を作るという中国の基本戦略だ。第1回フォーラムで講演した習近平国家主席は、一帯一路の沿線となる国々のインフラ建設に資金を提供するシルクロード基金に、新たに約9000億ドル(約101兆1510億円)を拠出すると表明した。

 英紙フィナンシャル・タイムズは、中国の一帯一路構想について「中国経済のアンバランスを輸出することになる」と批判している。過剰生産に苦しむ中国は、一帯一路を通じて沿線諸国にインフラを輸出し、需要を確保しようとしているのだ。

 すなわち、中国は一帯一路構想によって、シルクロード経済圏を構築し、巨大なランドパワーと化すと同時に、国内の過剰生産能力問題の解決を図るという、一石二鳥を狙っている。AIIB(アジア・インフラ投資銀行)にしても、もちろん中国の一帯一路のための資金調達手段に過ぎない。

 中国は、いまだに日本に対してAIIB参加を促している。日本がAIIBに参加すると、中国を巨大なランドパワー化する一帯一路構想を、資金面でサポートすることになってしまうのだ。

 日本では、中国の基本戦略を理解せず、AIIB参加を促す(=バスに乗り遅れる!など)幼稚な論調が実に多い。日本国が今後も主権国家であり続けるためにも、AIIBには決して参加してはならない。

 ■三橋貴明(みつはし・たかあき) 1969年、熊本県生まれ。経済評論家、中小企業診断士。大学卒業後、外資系IT業界数社に勤務。現在は「経世論研究所」所長。著書・共著に『2017年 アメリカ大転換で分裂する世界 立ち上がる日本』(徳間書店)、『中国不要論』(小学館新書)、『世界同時 非常事態宣言』(ビジネス社)など多数。
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