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【紅い南シナ海 仲裁裁定1年】中国、最前線基地に愛国クルーズ 進む軍事拠点化、米国の逆襲始まる 

産経ニュース / 2017年7月16日 1時5分

 中国の南シナ海への“最前線基地”、海南島の三亜湾に「鳳凰島」は浮かんでいる。東京ドーム約8個分にあたる約36万平方メートルの人工島には、高級ホテルやコンドミニアムが立ち並ぶ。7月上旬の日曜日、島のふ頭でキャリーバッグを引いた中国人観光客が歓声を上げていた。

 「西沙(英語名・パラセル)へようこそ」と書かれた看板の前で記念撮影を済ませた観光客が、次々と3月に就航したばかりの豪華客船「長楽公主」号(排水量1万2000トン)に乗り込んでいった。南シナ海をめぐるクルーズに出発するのだ。

 中国は2013年、実効支配するパラセル諸島への定期クルーズ船を就航させた。旅行会社によると、ツアーには永楽群島への上陸体験や国旗掲揚や国家斉唱などの「愛国主義活動」が盛り込まれている。3月までに乗客はのべ数万人に上った。海南省当局は20年までに、約1000キロ離れたスプラトリー(中国名・南沙)諸島への定期船も就航させる計画だ。

 広東省から夫とツアーに参加した女性(40)は「行ったことがなかったから。すごく景色がきれいだって聞いたし」と浮かれていた。これから向かう海で、中国が何をしているのかなどまったく意に介していない様子だった。

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 「中国が南シナ海問題での平和的対話を唱える裏で、軍事拠点化はますます進んでいる」と米政府関係者が指摘する。

 米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)が6月29日に公表した衛星写真で、中国がスプラトリー諸島のファイアリークロス(同・永暑)礁に造成した人工島に、新たに4つのミサイル格納施設が建設されているのが確認された。同島では2月、8つのミサイル格納施設が確認されていた。

 中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国と進めている「南シナ海行動規範」をめぐる協議はやはり、南シナ海の「重武装化」に向けた時間稼ぎに過ぎなかった。

 米国にとって南シナ海の軍事拠点化が脅威なのは、中国がこれらの人工島に対艦・対空ミサイルを配備し、一帯に「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)の強固な防衛網を構築するのが必至なためだ。

 米国の有識者らの間では、中国が南シナ海の軍事拠点化をほぼ完成させつつあることを受け、「南シナ海が中国の手に落ちた」「ゲームオーバーだ」などとする悲観的な意見も一部で広がりつつある。

 しかし、米国の中国海洋戦略研究の第一人者、米政策研究機関「戦略予算評価センター」のトシ・ヨシハラ上級研究員は「むしろ、ゲームは始まったばかりだ」と述べ、巻き返しの必要性を強調する。

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 中国としても、決して楽観できる状況ではない。北朝鮮の核・ミサイル開発問題の解決に向けて、中国に配慮してきたトランプ米政権との関係に暗雲が垂れ込めている。

 中国による北朝鮮への制裁に目立った効果が表れないことに業を煮やしたトランプ大統領は、台湾への武器売却決定や北朝鮮の核開発を支援した中国の銀行への独自制裁、立て続けの「航行の自由作戦」など目に見える圧力を加え始めた。

 米中という「2強」が世界的な覇権争いを展開する中で、南シナ海での両国の角逐がいよいよ「発火点」に近づいている。
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