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中国、「台湾侵攻」米研究所が2020年までの実行説を発表

勝又壽良の経済時評 2017-10-15 05:00:00

台湾側も神経ピリピリ 米同盟国も台湾防衛?

習近平氏は、自らの権力基盤を固めるため、巧妙な対外発展策を展開している。南シナ海での島嶼埋め立てによる軍事基地化。「一帯一路」プロジェクトの推進。大掛かりな軍事パレードの開催など、国民の目に映る「習近平像」はいやが上にも押し上げられている。これが、習氏の「皇帝化」に向けた一連の準備作業といえそうだ。

習氏が、皇帝の座を目指していることは疑いない。それにはどうして欠かせないのが、「台湾解放」の実現である。これを成し遂げれば、毛沢東もできなかった難事業が完成する。毛沢東を上回る「実力者」の称号を得られるはずだ。そこで、台湾解放への軍事作戦が始まるのでないか、という憶測が生まれる。

台湾側も神経ピリピリ

台湾『中央社』(10月4日付)は、「米学者、中国大陸の台湾侵攻計画を指摘」と題して、つぎのように報じた。

中国にとって台湾は、目の上のタンコブである。中国政府は台湾について、中国領土の一部であると宣言している。だが、台湾には民主主義的な政治手続きによる「合法的政府」が存在する。中国には選挙制度すら存在しない。その専制政治の政府が、民主主義手続きによる合法的政府を戦争で追放する訳にもいかない。台湾の後ろには、米国が控えている。「台湾基本法」によって、台湾を防衛する姿勢だ。

こうなると、中国が軍事力による「台湾解放」は困難になるはずだが、それは常識論の世界である。これまで、数々の「掟破り」をしてきた中国政府である。何をきっかけに軍事力行使に踏み切るか分からないのも事実だ。まさか、と思われることが現実となって現れる。それが、中国のやり口である。

(1)「米国の学者が今週発表した出版物の中で、中国大陸が2020年までに台湾を侵攻する計画を秘密裏に策定したと指摘していることが4日までに明らかになった。総統府の林鶴明報道官は4日、学術研究の出版物に対してはコメントしないと述べた。中国大陸の計画を指摘したのは、米シンクタンク『プロジェクト2049研究所』のイアン・イーストン研究員。イーストン氏は『中国侵攻の脅威』と題した新刊書の中で、人民解放軍の台湾侵攻計画を紹介。計40 万人の大軍を投入し、海上空中封鎖、ミサイルの大量発射、水陸両用部隊の上陸などを行い、2020年までに台湾を奪う計画だと説明した。同氏は、中国共産党の内部資料を基にしたとしているという」

米シンクタンク『プロジェクト2049研究所』のイアン・イーストン研究員が、最近『中国の侵攻の脅威』と題した新刊書を著した。それによると、中国政府が2020年までに台湾を侵攻する計画を秘密裏に策定したと指摘している。人民解放軍の台湾侵攻計画によると、合計40 万人の大軍を投入して海上空中の封鎖を行い、ミサイルの大量発射、水陸両用部隊の上陸などを行って台湾占領を実現する、というもの。

(2)「台湾総統府の林鶴明報道官は、中国大陸の軍事の動きに対して国防部(国防省)は厳密に監視をしており、情勢も全て把握していると説明。『国の安全に問題はない』と語り、安心するよう呼び掛けた。野党・国民党の馬文君立法委員(国会議員)は中央社に対し、これまで米学者の言論の重要性は高くなかったものの、今回は以前とは違うと指摘。2020年という具体的な時期が本当に存在するのかという点は、台湾にとってある程度のプレッシャーになるだろうと述べた」

台湾側にとってプレッシャーであるのは、侵攻計画が2020年までと期日が明確にされている点である。中国側が、解放軍内部の引締め政策の一環として行なったとも考えられる。ただ、必ずしも「引締めの一環」と見て軽視する訳にはいかない。そういう事情が、中国にあるのだ。

第一は、中国経済の悪化である。バブル崩壊後の不良債権の増加が、自動的に銀行側の「貸し渋り」という信用収縮(信用崩壊)を招く点である。すでにこの過程に入っており、日本で言われた「失われた20年」が始まる。これに伴う国内の経済停滞感を打破するには、「台湾解放」が恰好のテーマだ。国民の関心を外に向けるという常套手段の採用である。

第二は、習氏の皇帝化への準備である。「強い中国」を演出するには、台湾解放は不可欠であろう。台湾に戦争を仕掛けて国内意識を一本化させ「難局に立ち向かう」ムードをつくり出す必要性だ。米国との対立を覚悟して、「習皇帝」実現へ向けた舵を切る可能性がある。習氏にとって最も重要なことは、「自らの出世と身の安全確保」にある。それには、皇帝就任しか道が残されていないであろう。

米同盟国も台湾防衛?

中国の「台湾侵攻」については、別の記事も参照したい。

『大紀元』(10月6日付)は、「中共2020年、台湾侵攻を計画か」と題して次のように伝えた。

この記事では、注目の『中国侵攻の脅威』著者をインタビューしたもの。著者は、中国の台湾侵攻に対して米国とその同盟国が、台湾防衛で協力するだろうと見ている。こうして出来上がる中国vs民主主義国という構図の軍事対決は、中国の「自殺行為」に終わると見ている。21世紀の現在、国連常任理事国の中国が、なんら中国へ脅威を与えない台湾に対して、自らの「メンツ」と国内理由だけで軍事という「暴力」に訴える野蛮性が糾弾されよう。

(3)「米国の中国問題専門家は、中国人民軍は2020年までに台湾侵攻の綿密な計画を立てていると、最近発表した著書で明かした。一方で、もし侵攻すれば台湾の周辺国からの応酬が想定され、中国共産党にとって政権崩壊につながりかねない『自殺行為』となりうるため、実際に侵攻する可能性は低いと見ている。ワシントン拠点のシンクタンク『プロジェクト2049研究所(Project 2049 Institute)」のイアン・イーストン(Ian Easton)氏は最近、『中国侵略の脅威(The Chinese Invasion Threat)』を発表。大紀元は同氏を3日、取材した」

『中国侵略の脅威』の著者、イアン・イーストン氏を直接取材した記事である。中国が台湾侵攻する場合、その理由が明確でなければならない。台湾が独立宣言するという差し迫った理由でもない限り、武力侵攻は絶対に許されない。米国は、台湾に対して中国の武力侵攻の口実を与えないように、絶えず神経を払っている。台湾側も自ら招くリスクに注意を払っている。となると、中国が「習皇帝」を実現する上での踏み台にすべく台湾侵攻を意図することが、いかに不条理であるか言うまでもあるまい。

(4)「台湾の国防白書や、中国共産党の軍事情報を分析したイーストン氏によると、好戦的に『将来の台湾侵攻に備える』との姿勢がみられるという。中国当局は1980年代以降、台湾を射程圏内に約1000発の弾道ミサイルと誘導ミサイルを配備している。また、イーストン氏の軍事資料の分析では、中国軍が台湾に侵攻する場合、大量のミサイルを発射し、水陸両用部隊を上陸させ、約40万人規模の兵力を投入するという」

中国は常時、台湾に対して軍事的な威嚇をしている。これこそ、中国の本質を著している。「親中派」は、中国を平和国家と見ているがそれは間違いだ。敵対したときに見せる、あのドスの利いた声と表情は、ただ者ならぬ姿を連想させる。一言で言えば、暴力団そのものである。

台湾軍は、この中国による怒濤の侵攻に対してどのように防衛するのか。

台湾『中央社』(10月6日付)は、次のように報じた。

「国民党の頼士葆立法委員(国会議員)は、李天羽元国防部長(2007~08年在任)がかつて、両岸(台湾と中国大陸)が戦争になった場合、国軍はどれくらい長く耐えきれるかとの問いに『2週間』と答えたことに触れ、馮国防部長に現在の対抗可能期間を尋ねた。馮部長は、李氏の在任時から現在までは時間が経っているとした上で、この期間に国防部は軍を成長させ、より大きな力を得たと説明。当時よりも長い期間耐えられると話した。一方で、両岸戦争は戦略の問題にあたるため、国会で発言するべきではないとし、具体的な期間の明言は避けた」

中国の侵攻に対して、約10年前の国防部長(国防大臣)は、「2週間」と答えたが、現在は、「それ以上」と曖昧な答弁をしている。この一ヶ月未満の防衛力では、中国軍への対抗は不可能だ。そこで、後述の米国による「台湾基本法」が発動されて、台湾防衛に参戦する仕組みになっている。

(5)「イーストン氏は、実際に台湾を侵攻する可能性は低いと見ている。もし、台湾との間で開戦となれば、中国は米軍や米同盟国から攻撃を受けるとみられる。現在、一部の専門家は、もし中台米の間での軍事衝突が起きれば、核戦争に発展する可能性があるとみている。イーストン氏は『可能性は低い。中国当局が政権崩壊リスクを冒してまで核戦争を仕掛けたいなら、話は別だ』と述べた」

中国が、現実感覚を持つならば、台湾侵攻の可能性は低いと見られるという。台湾軍の防衛能力は低いが、背後には米国が控えている。さらには、米同盟国が台湾防衛に加わる可能性が大きい。民主主義国が専制国家によって蹂躙される姿は、歴史への挑戦へと映るに違いない。台湾の喪失が、日米同盟に軍事的に深刻な影響を与える。中国海軍が直接、太平洋へ進出可能になるからだ。

(6)「イーストン氏は、『台湾海峡での有事を避ける唯一の方法は、中国当局が台湾への武力行使を放棄すると同時に、台湾は一つの民主国家であるという事実を受け入れることしかない』としている。また、『中国当局が一方的に台湾海峡で台湾を攻撃すれば、台湾だけではなく米国、その同盟国であるカナダ、英国、フランス、日本やオーストラリアなど、すべての民主主義国家との開戦を意味する』。イーストン氏は新書を通じて、台湾侵攻は中国当局にとって政権崩壊につながる自殺行為であるとの見方を示した」。

中国が台湾侵攻を始めれば即刻、米国の経済封鎖を受けるはずだ。とりわけ、金融封鎖を受けると、中国は貿易による決済や送金が不可能になる。決済ができなければ、中国と取引する国はなくなるから、完全に世界で孤立する。現在の、北朝鮮と瓜二つの状況に陥るはずだ。米ドルは、世界の基軸通貨である。中国は、そういう意味を改めて味合わせられるはずだ。

(7)「万が一、中国当局が台湾侵攻を実施した場合、米国政府はどう動くのか。イーストン氏は『台湾側へ防衛に入るだろう』と述べた『中台開戦の1カ月から2カ月前に、米諜報機関は中国の動きをとらえるだろう。米政府は台湾政府に武器、軍設備、物資などを提供し、情報機関のエージェントを派遣する』。米国は、台湾が侵攻される前に、中国当局をけん制することができる」。

(8)「それでも、中国当局が台湾に武力侵攻を続けようとするなら「100%とは言えないが、90%の確信で米国が必ず台湾を防衛する」とした。米国の『台湾関係法』は、事実上の米国と台湾との軍事同盟条約だ。ただ、米国が台湾に対して後方支援に留まるのか、あるいは米軍が戦闘に参加するのかについては「米大統領が決めることだ」と述べた」。

米中国交回復は、1979年1月1日からだ。これによって、中国を代表する政権は中華人民共和国のみとなった。この結果、台湾政権(中華民国政府)はその座を降りた。だが、米国は国内法の「台湾関係法」を同年4月に成立させ、1月1日に遡って発効させた。

米国はこの台湾基本法について、「アメリカ合衆国が中国と外交関係を樹立するのは、台湾の未来が平和的に解決することを期待することを基礎としている」としている。つまり、中国の台湾侵攻を想定していないという前提である。これは、間接的に中国の武力侵攻をけん制したものだ。だから、米軍は通常の軍事同盟のように中華民国(台湾)に駐留こそしてないものの、武器売却や日本各地にある在日米軍基地やフィリピンの米軍基地(米比相互防衛条約)などにより、台湾の安全保障に関わることを示している。

(9)「中国の台湾侵攻を阻止するために、米政府は今後、台湾と政治・経済・軍事の3つの面で協力を強化していく必要がある、とイーストン氏は提案する。
① 政治面では、トランプ大統領が昨年12月就任前、台湾の蔡英文総統と電話会談した。中国当局へのけん制としては、非常にインパクトがあった。米台政治面での協力強化の始めの一歩だ
② 経済面では、台湾経済が中国市場への依存から脱却させるために、米国と台湾は自由貿易協定の締結することを挙げた。
③ 軍事協力においては、米国が台湾に最先端武器を供給するだけではなく、台湾軍の潜水艦や軍用無人機開発などで技術協力ができるとした」

政治面で、米台の緊密化であるという。中国が台湾へ「手出し」をしにくい雰囲気をつくることだ。
経済面では、台湾の中国依存を解消させる。具体的には、米国がTPP(環太平洋経済連携協定)に復帰し、これに台湾を加入させることだ。TPPの中で、台湾が経済的に生きていける手立てを施すことが肝心である。

軍事面では、中国の侵攻に対して「2週間」の抵抗では心許ない。最低、1ヶ月以上の抵抗力をつけ、その間に、民主主義国が共同防衛できる体制をとるべきだ。ただ、台湾が中国を刺激して、侵攻させる口実を与えてはならない。これが、台湾防衛の大前提になろう。あくまでも「侵略者」は中国という構図をつくり、世界の支援体制を築ける気配りが不可欠だ。
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