FC2ブログ

Entries

中国、「腹背に敵」インドがアジアで基盤固め「反中勢力集め」

勝又壽良の経済時評 2018-06-12 05:00:00

インドがアジア安保の最前線 日米豪印が中国に対抗姿勢へ

中国は、これまでの放縦な対外政策のツケが回ってきた。不動産バブル景気を「バブル現象」と認識せず、中国の潜在的な成長力と誤認した結果であろう。その化けの皮が現れており、GDP300%もの過剰債務の重圧に苦闘している。本来ならば、一刻も早くデレバレッジ(債務削減)に取り組まなければならいが急遽、1年半も先送りせざるを得ないところまで追込まれている。

習近平氏は、中国の対外政策で拡大路線を指揮してきた。その裏には、バブル景気で表面的だけ好調を装うGDPの伸びに幻惑されてきた。この勢いが、半永久的に続くと錯覚した結果、編み出されたものが「一帯一路」計画である。これによって、外交・軍事の両面で中国の権益を不動のものにする目論見を立てたのだ。

「一帯一路」構想で、隣国インドの封じ込めを狙っていたことは疑いない。「真珠の首飾り」(米国防総省の内部報告書が命名)によって、中国はインドの囲い込み戦術を立てていた。インド半島を取り囲む形で、バングラデシュ・スリランカ・モリディブ・パキスタンに中国艦船が寄港できる港の確保に動いたのだ。これは、中国が百万言の弁解で言いつくろっても無駄である。海上でのインド封鎖作戦を明確に示している。

ここまで露骨にインドの囲い込み戦術を立てられれば、いかに温厚なインドといえども黙っているはずがない。今や、単年度の経済成長率では、インドが中国を抜く段階になっている。インドの総人口に占める生産年齢人口比率は右肩上がりである。経済成長率は一貫して上昇カーブを描く夢の時代が続く。すなわち、1970~2035年までの65年間だ。中国は2010年が生産年齢人口比率のピークであったから、GDP規模でインドに抜かれる公算もある。中国は、こういう「未完の大国」インド包囲網を意図した。無謀と言わざるを得ない。

インドは象に喩えられる。普段はおとなしい象でも、ひとたび怒ると大変な腕力を発揮する。インドもこれと同じ行動パターンを示し始めた。

インドがアジア安保の最前線

『ロイター』(6月3日付)は、「東南アジアで地歩固めるインド、中国をけん制」と題する記事を掲載した。

この記事では、これまで象のように静かに振舞ってきたインドが、アジアの「反中国」勢力の旗頭として動き始めている。中国からあからさまに「真珠の首飾り」によって包囲されていることへの反発であろう。中国は、インドの実力を見くびって行動したのだろうが、大きな誤算をした。いまや逆にインドから逆襲を受ける立場に立たされている。

インドのモディ首相が、積極的にアジア安全保障の前面に出ている裏には、安倍首相の影響力を見る。安倍首相とモディ首相は、肝胆相照らす仲である。安倍首相は、かねてから「アジア太平洋主議」を提唱してきた。最近では、米国トランプ首相が共鳴しており、「アジア太平洋同盟」を口にしている。米海軍の「太平洋軍」は「インド太平洋軍」に名称を改めて、インド洋と太平洋を防衛守備範囲に広げている。狙いは、中国の拡大する海洋戦略への対応で、「真珠の首飾り」という無謀な戦略阻止である。

それにしても中国海軍は、太平洋・南シナ海・インド洋という広大な海域を単独で守り切れると、本気で考えているのだろうか。戦前の日本軍が、アジア全域で戦闘を展開した無謀な戦略を上回る発想法である。米国が、同盟国を糾合して中国と戦う戦略を組み始めている現状を理解すれば、早く南シナ海から撤収する方が損害もなく賢明な策だ。習氏には、この「負け戦」が想像できないとすれば、相当の視野狭窄症に陥っていると言うほかない。

(1)「インドが東南アジア一帯で外交・安全保障の関係強化に動いている。中国をけん制する狙いがあることは明白だ。 首相は、インドネシアとの間で、同国北西部サバンの港湾開発の合意文書に署名した。世界でもっとも交通量の多い水路の1つであるマラッカ海峡の西側の入り口を監視できる位置に港が造られることになる。またシンガポールとの間で、寄航した海軍の艦船や潜水艦、軍用機などへの供給支援協定に合意した。モディ首相はまた、マレーシアの首都クアラルンプールに飛び、先月の総選挙で勝利したマハティール首相と会談。東南アジア諸国の中でもっとも有力な3カ国との関係を着実に固めた」

モディ首相は、①インドネシアのマラッカ海峡の西側の入り口を監視できるサバンで港湾開発の合意書に署名した。②シンガポールとは、インド海軍が寄港できかつ物資の供給支援協定で合意に達した。③マレーシアでは政権に復帰した「反中」を明らかにするマハティール首相と会談した。こういう矢継ぎ早な動きの裏に、日本が動けないゆえにその「代役」を果たしてくれていると想像させるものがある。日本にとっては、極めてありがたい「中国けん制」である。

(2)「モディ氏は6月1日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で、インドは東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力し、インド太平洋地域でルールにのっとった秩序を後押しすると表明した。『われわれは、安定した平和な地域構築のため、個別にまたは3カ国かそれ以上の形で協力する』と、モディ氏は同会議の基調講演で強調した。マティス米国防長官を含めた数カ国の代表が、支持を表明した。同会議が閉幕した3日、シンガポールのウン・エンヘン国防相はこう話した。『インドがこの地域への強いコミットメントを表明し、多くの国が喜んでいるに違いない』と」

6月初めのアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で、インドはインド太平洋地域でルールにのっとった秩序を後押しすると表明した。これは、中国を除く諸国から賛同を得たもので、南シナ海問題でも解決に向けて貢献すると表明した。中国には「手強い」相手が現れたことになろう。

これまでインドは、米国が標榜する「アジア太平洋同盟」には積極的に関わる意思を示さなかった。それが、このように明確な立場を表明したことで、中国と「一戦」交えることも厭わない固い決意を示した。中国の目に余る海洋戦略への危機感がそうさせたと見られる。中国の強引な領土拡張主議への警告である。

日米豪印が中国に対抗姿勢へ

(3)「米国やオーストラリア、インドや日本の外交・安全保障関係者の間では近年、『インド太平洋』という表現が頻繁に使われるようになっている。これは、民主主義国を中心としたより広範な地域を指す表現で、一部で『中国中心』過ぎるという指摘が出ている『アジア太平洋』に代わって使われている。地域でより重みを増すインドの重要性を追認する形で、米軍は5月30日に開かれた式典で、ハワイを拠点とする太平洋軍の名称を正式に「インド太平洋軍」に変更した。対外的な中印友好関係のデモンストレーションや、強固な両国関係についてのモディ氏の発言とは裏腹に、中国政府は同氏の戦略に明らかに冷淡な反応を示している」

中国は、インドの「離反」を極力食い止めるべく、中印首脳会談を頻繁に開いている。①昨年9月に、新興5カ国(BRICS)首脳会議で、福建省のアモイで会談。②今年4月27~28日に湖北省武漢で、非公式の中印首脳会談を開いた。③6月には、山東省青島で開く上海協力機構(SCO)に出席するモディ首相と会談。このように、1年足らずの間に3回も会談するという裏に、中国の焦りが見て取れる。

習氏は、みずから「一帯一路」を指揮して、インド封じ込め戦略を立てたが、今やこの逆襲におののき始めている。アジア戦略を完全に読み違えた証拠だ。この1月末まで、日本を敵対視する発言を続けてきたのが中国である。米中経済摩擦の激化を背景に急転して、日本への接近を始めた。国営メディアは、一斉に日本批判を中止している。何とも現金な国である。自分の立場が危うくなると臆面もなく「ニーハオ」と言い出す国である。外交的危機が目前に来るまで、その前兆に気づかない「能天気」さだ。

インドは、日本より早い段階で「ニーハオ」と声を掛けている。モディ首相は、表面的に応じているが腹の中は別である。着々と「反中国戦線」の先頭に立つ動きを見せている。中国は一層、追込まれてきたという認識であろう。

(4)「シャングリラ対話に出席した中国人民解放軍軍事科学研究院の研究員は、記者団に対し、モディ氏が『自らがインド太平洋と考えるコンセプトについて、いくつか熱心な発言をした』と述べた。同研究員は詳細に言及しなかったが、環球時報は、『インド太平洋戦略と、米国と日本、インドとオーストラリアの同盟もどきは、長くは続かない』とする同研究員の発言を引用した」

中国の官営メディアの『環球時報』は、インドを批判的に報じている。インド太平洋戦略は、米日豪印の4ヶ国が基軸になるもの。中国は、「同盟もどき」とけなしている。「同盟もどき」でない証拠は、中国の侵略から自由と民主主義を守るという共通理念が存在しているからだ。この理念を甘く見てはいけない。第一次、第二次の世界大戦で全体主義が敗れたのは、民主主義防衛という理念の勝利である。中国共産主義は紛れもなく全体主義である。国民を監視して弾圧し、一党支配で選挙制度もない国は、民主主義から見れば恐るべき「潜在的な敵」である。

(5)「インドが考える自国の行動範囲は、より広い。5月末には、南シナ海でインド艦船3隻がベトナム海軍と初の軍事演習を行った。中国は、南シナ海のほぼ全域で自国の領有権を主張している。ベトナムの潜水艦は、インドで訓練を行っている。また両国は、情報共有の範囲を大きく拡大させたほか、高度な兵器の売却についても検討している。西を向けば、インドは、モディ首相が今年オマーンを訪問した際、同国南部ドゥクムの港へのアクセスについての合意文書を取り交わした。この合意では、インド海軍は補給などのために同港を使用することができるようになり、これによりインド洋西部での長期運用が可能になる」

インドは、ベトナムと防衛面で共同歩調を取っている。ベトナムの潜水艦は、インドで訓練を行っているほどだ。オマーンとは、同国南部にあるドゥクム港へのアクセスについての合意文書を取り交わした。ベトナムもオマーンも中国の軍事脅威を感じている。だからインドと協力姿勢を取り始めた。ベトナムは、日本と密接な関係にある。TPP(環太平洋経済連携協定)では、日本に協力して「TPP11」の復活にこぎ着けた影の功労者である。ベトナムは、少しでも「中国の影」を薄めるべく国を挙げて日本へ接近しているのだ。

(6)「インドは1月、フランスとの間で補給交換協定をまとめた。インド側は、インド洋の仏軍施設を利用することができるようになる。インドのより自己主張の強い振る舞いは、中国の影響力が地域で拡大し、米国が距離を置き始めていると懸念する東南アジア各国の懸念に応えるものだと、アナリストは指摘する。米国が、中国との間に貿易摩擦を引き起こし、北朝鮮との和平に向けて外交政策を180度転換させたとみられることは、地域におけるさまざまな前提を大きく揺さぶったと、彼らは言う。『(ASEAN諸国には)安全保障関係を多極化させ、保険をかける圧力が生じている』と、シンガポール国立大学南アジア研究所のC・ラジャ・モハン所長は言う。『活動的なインドは、こうした状況に自然にフィットする』。モハン所長は一方で、モディ首相の強気の姿勢が、どこまで続くか明らかでないとも指摘する」

インドは、フランスとも協力関係を結んだ。インド洋の仏軍施設を利用することができるようになる。このように、インドは「八面六臂」(はちめんろっぴ)の活躍をしている。これは、トランプ・アメリカが「米国第一」でアジアから身を引くのでないか。そういう懸念を持つ諸国の不安を鎮める役割を果たしているとも見える。

アジアの安保事情は大きく変わり始めた。米朝首脳会談が成功すれば、ASEANと北朝鮮の関係は、よりオープンなものになる。ASEANは、北と外交関係を結んでいる国が多いいからだ。一方、米中の貿易摩擦に端を発して、外交的な対立が軍事紛争に発展しかねなくなっている。南シナ海がきな臭くなるのだ。アジア各国は、中国の劣勢を読み取り始めている。「単騎出陣」の中国よりも、「アジア太平洋同盟」の米日豪印が持つ圧倒的な力量に魅力を感じるはずだ。「孫子の兵法」によれば、中国は戦わずに矛を納める局面である。さて、どうするのか。習氏は、あくまでも玉砕覚悟で初志を貫くのか。重大な選択段階に来た。
スポンサーサイト
  • コメント : -
  • トラックバック : -

Appendix

最近の記事