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米EU、対中露戦略という「共通利益」

Wedge 8/11(土) 12:12配信

 7月25日、米EU首脳会談を終えて共同記者会見に臨んだトランプ大統領は、上機嫌だった。ホワイトハウスのローズ・ガーデンで、出席していた上院議員、下院議員の名前を一人一人呼んだ後に、次のように述べた。
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 「とても良い日だ。とにかくいい日だ。米国とEUとの関係は、新しい段階に入った。親密な友情の、そしてWIN-WINの強い貿易関係、協力して世界の安全保障と繁栄に尽くし、共同でテロに対抗する、という段階である。

 米国とEUを合わせると、8億3千万人の人口を抱え、世界のGDPの50%以上を占める。別の言い方をすれば、米国とEUで貿易の50%以上を占める。私達がチームを組めば、この地球は、より良くより安全に、より繁栄した場所になる。

 既に今日、米国とEUは1兆ドルの貿易関係がある。世界で最大の経済関係である。我々はこの貿易関係を更に強化して米国及び欧州市民の利益になるようにしたい。

 本日、我々はまず協力し、関税も非関税障壁も、そして非自動車産業製品への補助金もゼロにして行くことで合意した。

 我々はまた、障壁を減らし、サービス、化学、薬品、医療品及び大豆の貿易を増やすことでも協力する。大豆は大きな取引だ。EUは早速、多くの大豆を買ってくれる。EUは大きな市場だ。まずは米国中西部の農家から多くの大豆を買ってくれる。この点、ジャン=クロード(ユンケル委員長)に感謝する。

 このことで、市場は農家や労働者に開放され、投資が増え、米国にもEUにも繁栄がもたらされる。貿易もより公正で相互的なものとなる。私の大好きな言葉、「相互的」である。
 二つ目に、我々は本日、エネルギーに関する戦略的協力を強化することで合意した。EUは、米国から液化天然ガス、LNGを輸入したいということである。EUはとても大きな買い手になる予定だ。」

 「三つ目の合意は、貿易をしやすく、行政手続きの障害を減らし、コストを大幅に下げるために、基準に関する緊密な対話を開始することである。

 四つ目の合意は、米国とEUが協力して欧米の企業を保護することである。」

 「我々は、密接に協力して、同様の考えの友好国とも共に、WTOを改革し、知的財産の盗取、技術移転の強制、産業補助金、国有企業による歪み及び過剰生産を含む、不公正な貿易慣行をただす。

 我々は、両方の有能な人達で構成するエグゼキュティヴ・ワーキング・グループをすぐに設立することを決定した。彼らは、我々の最も緊密な諮問機関として、共同の議題を取り扱う。更に、このグループは、貿易を促進するための短期的な方策を明らかにし、既存の関税措置を見直し、両者のために何ができるかを諮問する。」

 「我々は、また、鉄鋼アルミニウム関税問題を解決し、報復関税を解決する。」

 続いて、ユンケル欧州委員長が、次のように手短に述べた。

 「私がホワイトハウスに招かれた時、私は、米国と合意する目的があった。そして、本日、合意は成立した。

 私達は、協力すべき多くの分野を明らかにした。産業製品については関税ゼロを目指す。これは、私の主要な目的だった。」「私達は、エネルギーに関する協力を強化することを決めた。EUは、米国から液化天然ガスを輸入するためのターミナルを建設する。これは、他諸国へのメッセージにもなる。

 私達は、基準に関する対話の場を設けることで合意した。農業に関しては、EUは米国からより多くの大豆を輸入でき、そうなる。また、私達は、WTOの改革で協力することでも一致した。」

 トランプ大統領はローズ・ガーデンを後にする時に、再び言った。「今日は、自由で公正な貿易のために本当に大事な日になった。本当に、いい日だった。」 と。

参考:White House ‘Remarks by President Trump and President Juncker of the European Commission in Joint Press Statements’ July 25, 2018)

 トランプ政権誕生以来、米国と欧州諸国との関係(大西洋)には、亀裂が入ったとよく言われた。それは、トランプ大統領が、環境に関するパリ協定からの離脱、核開発に関するイラン合意からの離脱等、オバマ政権が欧州諸国とともに合意して来た多国間の取り決めを、次々と止めてきたからだ。G7首脳会議でもメルケル独首相との馬が合わず、二人が議論する写真(仲介役に安倍総理が映っている)が世界中に広まった。

 そんな中、7月11-12日のNATO首脳会議では、どうにか2024年までにGDP比2%の国防費という目標設定で合意ができ、大西洋の分裂危機は回避できたと言われた。

 そしてここに来て、7月25日、トランプ大統領とユンケル欧州委員長は「大事な合意」を達成した。世界もこの大西洋の握手に拍手を送り、株価は上昇に反応した。

 上記のトランプ大統領の発言を読むと、様々なことが分かる。まず、11月4日の中間選挙が近づくに従い、トランプ大統領の頭の中はその事で溢れ、ますますそれを露わにする。今回の発言の冒頭では、上下両院議員の名前を一人一人呼んだ。また発言の中でも、中西部の農民を意識したり、労働者という言葉が出てきたりした。

 もう一つ、上記を読んで理解できるのは、米国とEUの共通利益には、対中国及び対ロシア戦略があることだ。

 WTOの改革は、中国を念頭において行うとのトランプ大統領の意図は明らかである。それに合意したユンケル委員長であり、7月16日の北京でのEUと中国との首脳会議でのWTO改革の中身が同床異夢であることが明らかになった。トランプ大統領は、米国からの大豆に中国が報復関税を課すことに対して、代わりに輸出先として欧州を選択し、それに成功した。これで、大豆農家の批判も回避できる。

 対ロシアでは、ドイツがロシアからのエネルギー輸入に頼り、ロシアへの依存を深めている。それに対して、米国がロシアの肩代わりをすることでロシアへの依存度を減らし、EU諸国がより団結してロシアに対抗できるようにした。ユンケル欧州委員長が、米国からのLNGの輸入に関して、「これは他の諸国へのメッセージにもなる。」と語っているのは、まさに、この事を念頭に置いているのだろう。

 短いホワイトハウスでの共同発言の中にも、国家間の利益関係が読み取れる。トランプ政権が昨年暮れに打ち出した「国家安全保障戦略」の中で、中国とロシアを対立する国として挙げていたが、そのことは、今も変わっていないようだ。
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岡崎研究所
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