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INF条約破棄 中国の脅威に対抗で「足かせ」外す 対中軍事的選択肢を拡大

産経ニュース  2018.10.21 15:50

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領が20日、米露の中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を表明したのは、ロシアによる条約違反の新型ミサイル開発で現実味を増した欧州の同盟諸国に対する脅威の除去にとどまらず、中国が西太平洋での覇権確立を目指して一方的に配備を進める中距離ミサイル戦力に対抗するのが狙いだ

 ロシアによる中距離ミサイルの開発は欧州諸国に対する奇襲攻撃を容易にし、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)との軍事バランスに重大な影響を与える恐れが強まっている。

 一方、中国は西太平洋地域での有事に際し、米軍の進出を遅らせ、作戦領域での行動を妨害する「接近拒否・領域拒否(A2/AD)」戦略に基づき、米軍の作戦基地や空母を無力化させるため、爆撃機や潜水艦、対艦弾道ミサイル(ASBM)の戦力拡充を急速に進めている。

 特にASBMに関し米海軍は、2011年から配備された通称「空母キラー」と呼ばれるDF21D(射程1500キロ)の存在を強く警戒。DF21Dは複数の弾頭がそれぞれ迎撃を回避するなどして命中率を高める機動式多弾頭を装備しており、米空母にとって重大な脅威とみられている。

 しかし、INF条約は米国が射程500~5500キロの地上発射型弾道ミサイルや巡航ミサイルを保有するのを禁止。このため米軍は条約が「足かせ」となって中国のA2/AD戦略に対抗する兵器を配備できない状態が続いていた。

 INF条約の破棄は、インド太平洋地域での中国の封じ込めに向けた米軍の軍事的選択肢の拡大につながるのは確実だ。

 トランプ政権が2月に発表した「核戦力体制の見直し」では、ロシアにINF条約を再び順守させるため、米国も独自の地上発射型中距離ミサイルの研究開発を進めるべきだと提唱したものの、条約破棄にまでは言及していなかった。

 それが今回、トランプ氏が破棄の表明に踏み切ったのは、中露の脅威に直接対抗する姿勢を明確に打ち出すことで最終的に中露の軍拡の意思を挫折させ、米露に中国も加えた将来の軍備管理交渉につなげる狙いがあるとみられる。

 ただ、米国がミサイルの開発・配備を先行させているロシアと互角の態勢を確立するには一定の時間がかかるとみられ、条約破棄は短期的にはロシアに有利に働くとの見方もある。
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